第20話 と、ある勇者の誕生

「じゃな、彰人あきと!」


「うん。また明日ね。」


友達と別れて、家の玄関から中に入って、自分の部屋に向かう。


制服を脱いで、パーカーを着て、ジーパンを履いた。


帰宅部で、いつも通りに帰宅して、PCの電源を入れて、今夢中に為って居るMMORPGのULTIMATEアルティメットSKILLスキルONLINEオンラインをプレイする為に気合を入れる。


今日はULTIMATEアルティメットSKILLスキルONLINEオンラインのメンテナンスも兼ねた、アップデートの日。


新大陸が、どんな所かワクワクしながらアップロードされるのを待っていると。


一瞬、グラと揺れた。


そして、急に座っている椅子ごと足元が光りだしたと思ったら、アニメやゲームで良く見る魔法陣のような物が現れていた。


「え?」


そして、次の瞬間には、真黒な空間に、椅子に座ったままの格好で僕は宙に浮いていた。


ただし。座ってたはずの椅子は無い。


「意外に、落ち着ておるのう。」


目の前に、白い霧が現れて、人型の姿になる。


目鼻口や、髪などは分からない。


聞こえた声は、年老いた男性の声に似ている。


「いえ、十分に驚いています。 驚き過ぎて、僕の驚愕メーターは3周くらい回っているかもです。」


「そうか。で、遠山とおやま彰人あきと・・・・。」


「お断りします。」


「・・・まだ何も言ってないのじゃが?」


「何も言ってないと言うのは間違いですね。 僕の名前を言ってましたので。」


「でじゃ。 おぬし・・・」


「お断ります。」


「・・・・。」


「どうせ、異世界転生か異世界転移でもして、勇者か、勇者の仲間。 もしくは、それに近い物になって。


魔王を倒せとか、世界を救えとか言うのでしょう?


丁重に、お断りさせていただきます。 と、言う訳なので。 僕を地球に返してください。」


あの魔方陣的な物を見て、ラノベやアニメを見ていれば、おのずと答えは出てくる。


あいにく、僕は異世界で、ヒャッハァー! などしたくは無い! ゲームの中で、ヒャッハァー!をしたい派なんです!


「話を聞いてもくれんのか?」


「はい。聞く気は無いです。 


これが、先に何かしらのアクションでもあって、僕に知らせてくれていたなら別ですが。


何のアクションも無しに、こんな場所に連れてこられて、勇者とか、それに類似するものに為れと言われても納得できませんので。


だから、即刻! 僕を地球の自分の部屋に戻してください。


僕は、ULTIMATEアルティメットSKILLスキルONLINEオンラインをプレイしたいのです!


今日から、アップデートで、新大陸が追加されるので楽しみにしていたんです。


訳の分からない事に巻き込こまないでくれますか?」


「・・・辞めて置いた方が良いぞ。」


「は?」


「だから、お主を地球に戻す事は出来ん事は無いのだが、戻らない方が良いぞ?」


「なんで?」


「それはの・・・・。」


この神様カルドラの話では。


なんでも、僕をこの空間に転移させた時に、僕の居た場所。


つまり、地球の僕の住んでいた地方に地震が起こって。


それに慌てた僕が椅子の脚に、足の小指をぶつけて痛がっていた所に、本棚が倒れてきて僕は死亡する予定だったとの事。


そこを、地球側の神様と相談して、僕が死ぬタイミングで、僕をカルドラ様が転移させる許可をもらったとの事。


で、話の内容は。やっぱりと言うか。 魔王を倒してくれって事だった。


「話は理解できました。」


「理解してくれたか。」


「ええ。 仮にですが、僕が地球に戻った場合はどうなりますか?」


「まぁ、普通に棚に押しつぶされ死亡している状態になるな。」


「つまり、僕に選択肢は無いと言う訳ですね。」


「死ぬのが嫌なら、無いと言う事に成るの。」


「一つ聞いても?」


「なんじゃ?」


「今の僕は、まだ生きている状態なんですよね?」


話では理解しているが、一応確認の為。


「そうじゃ。 死ぬ前に転移させたからの。」


「選択肢が在る様で無いのは、選択ではなく脅迫と言いますよ。カルドラ様。」


「で。二社一択なのだが、どうするのかの?」


実際に戻って確認すると、死亡扱いとかは嫌なので、もはや選択肢は決まっている。


「判りました。行きます。それしか、選択肢は無いので。」


「ほほっ。すまんのう。 代わりと言っては何だが。 お主には、向こうの星での全ての種族の言語理解能力と読み書きの能力。


基本的身体能力の上昇。 それと、全魔法属性への適応能力を付けておこう。」


「ちなみに、その星の名前は?」


「フォーリア。 惑星フォーリアと、儂は呼んでいる。」


「呼んでいる?」


「向こう側の星の住人たちは、星の名前も知らんよ。」


「なぜ?」


「そこまで、科学的な文明が発達していないからじゃ。」


「あぁ~、先ほど言ってた、全魔法属性ってのに関係してたりしてます?」


「うむ。 フォーリアでは、科学文化ではなく、魔法文化が発達している。」


「フォーリアと言う星での文明レベルを地球で言えば?」


「そうじゃぁのぅ。 中世ヨーロッパや、日本で言う所の江戸時代の中頃~末期手前と言った所かの?」


「あぁ~、何となくわかります。 魔法で何でもできちゃうから。科学が発展しないってことですね。」


「そういう事じゃ。」


まぁ、どこのラノベやアニメでも、不思議能力でできてしまうと、科学なんて発展してないし。


下手すると、天動説が普通だったり、星が丸いと言う事も知らない可能性も。


大体にして、地球が地球と呼ばれるようになったも、1500年から1600年くらいからだと、歴史好きの歴史の先生が話していたなぁ~。


「それと、お主には、勇者専用の武器と防具を用意しよう。」


そう言うと、僕の方に向かって、白い霧の人型のカルドラ様が右手をかざす。


一瞬、光ったかと思うと直ぐに収まった。


自分の身体を見たり、周囲を見渡すが、武器や防具らしきものは何もない。


「装着。と言ってみよ。」


「装着。」


僕が言うと共に、僕の身体を光がまとい。一瞬で収まった後には、右手に剣を持ち。


タイツみたいな、ピッチリした感じの薄い布地全身タイツ?みたいな物に直接金属が張り付いたような鎧に身を包まれていた。


頭には、サークレット。所謂いわゆるオープンクラウンと呼ばれる王冠みたいなものが。


胸部、腕部、脚部も、関節部分は動きやすいように、表側だけ金属のような物で覆われていて。


けれど、人の身体の急所的な部分はシッカリと金属で守られている。


見た目金属のそれなのに、触ってみると柔らかくも感じつつ金属感もある。


これ、なんて不思議金属?って感じだよ!


なんで、自分の姿が解かるのかって?


目の前に姿見が立っているからだよっ!


ってか! 何この?何とか戦隊や、宇宙刑事的な変身の仕方はっ!


もっとファンタジー感をだしてよっ!


サークレットの代わりに、鉄のヘルメット被ったら、まんまソッチだからねっ!


「あの・・・盾は無いんですか?」


心の中で突っ込み疲れても、言いたいことは言っておく。


「その鎧自体が、盾の役目も果たしておるから心配はいらんよ。」


カルドラ様の話では、腕、脚の部分で、普通に相手の攻撃を受けて弾けるらしいし、魔法攻撃とかで面の攻撃も防いでくれるので、丸出しの顔の部分もガードできるとか。


「だったら、何で顔は丸出しなのでしょうか?」


「それは、その鎧を造った神。 ウィンディアの趣味じゃろ?」


趣味で勇者の鎧とか作るのね・・・。


「それでは、遠山とおやま彰人あきと。 フォーリアに向かってくれ。」


そう言うと、僕の目の前に、白いドアが現れていた。


ドアノブに手を伸ばして中を伺うも、中は真っ白空間が広がっていた。


カルドラ様が、右手を上げて振っている。


「はぁ・・・。」


溜め息をついて、歩を進める。


と、同時に。 僕は落下していた。


最後の最後で! くっそ下らない悪戯をしやがって!


今度会ったら、絶対に1発! いや10発は殴ってやる!


「うわあああぁぁぁぁぁぁああああぁあぁ。」


そして、僕は川に背中を打ち付けて、川の中に沈んでいくのだった。

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