第19話 勇者

みなでリビングに集まって情報をおさらいしていた。


一応、この星の唯一神カルドラの話では、勇者が転移してから数年以内に、魔王の世代交代が行われると言ってはいたが。


魔人族の大陸で情報収集してたスタンの話では、現魔王様はすこぶる元気で、とてもじゃないが数年以内に代替わりするような様子ではないと。


なら、暗殺やクーデターなどによって代替わりの可能性もあるし。


この星には、魔獣や魔物などが居るので、そっちの線も有るとは言えないが。


基本的に、国を治める人物が、危険区域に居る魔獣や魔物に襲われるとも思いにくい。


「やっぱり、一番線が濃いのは、暗殺か反乱だろうなぁ~。」


とアレス。


「はい。私も、その可能性が一番高いかと思います。」


これはスタン。


「でも、暗殺はともかく。 クーデターなんて、そうそう起こせないでしょ? 民達に余程の不満とかがが無ければ?」


「いや、そんな事は無いぞ。」


イライザの言葉に俺が否定する。


ソニアに至っては、頷いて俺に同意しているし。


「国を纏める頂点に問題が無くてもだな。 その周囲の人物。


宰相や大臣に将軍なんかもそうだが。 地方領主なども厄介だぞぉ~。」



極端な例の1つだが。自作自演で民たちの不満を募らせて。


さも、それを自分ではなく上の者から指示の様に見せかけて。


そこに、甘い言葉で誘導すればクーデターが起きる。


何せ、現代地球の様に、インターネットも、それに類似するものも無いので。 地方の一般市民への情報操作などは、領主などが掌握している状態だ。


そんな奴らが数人集まって、反乱を起こせば・・・。あとは、想像に容易い。


「例え善政を敷いて粗が無くても。 知らず知らずに恨みを買ったり、ねたむ奴は出てくるだなぁ~これが。」


「ほんと、くだらない事で言いがかりを付けてくる奴が多いくて嫌になるわ。」


顔を顰めながら言うソニア。


あぁ~、なんか判るわ。 国王の娘だなものな。 苦労してそうだわ。


などと思っていると。


「転移者様を、お連れいたしました。」


ルカさんが、転移者を連れてリビングに現れた。


ルカさんの隣には、この星の服装に着替えた転移者の青年が。



「えっと。 助けて戴き有難うございました。」


そう言って頭を下げる青年。


キチンと礼を言える、マトモそうなやつで良かったよ。


現代日本人の中では、礼も言わないで、「異世界最高!」とか「すぐに魔王を倒しに行きましょう!」とか言い出しかねない奴も居るからねぇ~。


辺りをキョロキョロみながら、落ち着きのない転移者の青年。


まぁ、獣人のゴリラが座って、お茶飲んでるわ。


羽を生やした美男子は居るわ。


耳の尖ったエルフの美人が居るわ。


可愛い美少女にメイドさんは居るわ。


そりゃ、混乱もするだろうね。 うん。



「まずは、自己紹介と行こうか。 僕の名前は、小鳥遊たかなし生来いくる


君と同じ転移者だ。 歳は今年で52歳。 この中では最年長に為る。 悲しいけどね。」


そう言いながら、腰かける様に青年を促す。


俺の言葉に、少しだが表情が緩む青年。


「僕の名前は、遠山とおやま彰人あきとです。 愛知県の名古屋市に在る城南高校の2年生です。」


目上の人への礼儀もシッカリとしている。


「とりあえず、座ってくれ。 回復したばかりで疲れているだろう。」


そう言って、再度座るように促す。


「あ、はい。」


遠山君が席に座ったの確認して。


「俺は、獣人族のアレスだ。」


そう言って、ウィンクをするアレスだが。


怖いからな。 普通に顔面が怖いからな。 遠山君、軽く引き攣ってるからな。


「魔人族のスタンと言います。」


イケメンスマイルのスタンさん。


「亜人族のセリアよ。 判ってるとは思うけどエルフよ。」


「私は。イライザ。人族よ。 地球で言う所の人間ね。」


「ソニアです。人族で、この国を治めている王家の娘です。


それで、彰人あきとさんは。 カルドラ様が使わせた、転移者様で間違いないでしょうか?」


「えっ、あ! はい。 カルドラと言う神様が、僕をこの世界に送ったので間違いないと思います。」


「その際に、カルドラ様に何かを言われましたか?」


「はい。 僕が、この世界に転移して数年以内に凶悪な魔王が出現するので、それを倒してほしいと。」


「他には何か?」


「ええと、確か・・・。 この世界に適した身体に、基礎能力の上昇と、この世界で使える全部の魔法属性を扱える能力。


それと、神の加護の付いた武器と防具を貰いました。」


「へえ。それは。いま装備できるのかな?」


彰人に聞いたのはイライザ。


「はい。」


そう言って立ち上がり、少しスペースの在る場所に。


「装着。」


彰人あきとの言葉と共に、彰人あきとの身体を光が包み込む。


発光する光は眩し過ぎず、目視できる程度の光量だった。


時間にして、コンマ何秒かだろう。


洸が収まると、金属鎧に身を包んだ彰人あきとの姿が。


ただ、全身金属鎧フルプレートエイルと言った類の鎧ではなく。


某アニメのプラグスーツ宜しくな、身体の線がハッキリと解かる服の上から。


頭部は兜ではなくサークレット的な感じで、胸部・背部・脚部・腕部のパーツ毎に、金属的な物が張り付いていると表現した方が良いのだろうか。


人体の急所は守りつつも、動きやすさを優先したと言ったような鎧だ。





 * * * * * *



遠山とおやま 彰人あきと


年齢:17歳


筋力  36


知力  28


素早さ 34


器用さ 32


運   78


特殊能力ギフト:勇者・神の加護(効果;神剣と神衣を装備できる)


因みに、数字化ステータスは、飽く迄もその人の基本能力であって。


人生経験(人生知識)、戦闘経験(戦闘知識)は反映されていないので、数字=強さ と言うのには直結しない。


この彰人あきとの数字は、少し鍛えた兵士程度。


一般の人族のカンスト値はALL100。


限界突破した隊長級で120~150。


勇者だけは特別で、天元突破すれば200まげ上げれるらしい。

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