第8話 異世界って言い方にっ!

その日は、イライザの家に泊めて貰った。


寝る時に「襲ってきたら、遠慮なく叩きのめすからね。」っと、笑顔で釘を刺されたが。


安心してくれ。 間違っても襲ったりしないから。


勝てる気がしないし。 何より若すぎて性的対象にはならない。 自分の息子嫁よりも年下だし。


何より、俺の好みは、もっとこう。 スレンダーな体系で、そこにメガネでも掛けていれば最高です!


イライザは、実に見事なモデル体型で、ボン・キュッ・ボンだ。


普通の男性には、さぞモテる体系だと思うよ?


そうそう、獣人さん達の女性の方にも、普通に胸はあったからね。 服を着てるので、中身迄は分からないけど。


トイレも共有で、桶みたいなのに排泄物を溜め込んで、近くの穴に埋めているらしい。


イライザに教えてもらったのだが。 この集落は狩猟民族で、土地に定着しないで、大陸を移動しながら暮らしているらしい。


狩りで得た獲物を、近くの町や村に持って行き、入用な物と交換して生活しているのだとか。


どうりで、家が簡素だと思ってたよ。


集落の人数も、60人前前後らしいし。 


移動しやすいように、家の分解と組み立てが簡単に出来るようにしてるのだとか。


中には、集落から外れて、気に入った土地に定着する人も居るのだとか。


獣人の大陸は、基本的に天候は穏やかで、天災とかは殆どないらしい。


数年に1~2度の大雨と、たまの地震がある程度だとか。


残念ながら、風呂の習慣は、人族でも無いらしくて。


普通は、沐浴か水浴び。 良くて桶に居れた穴から出る、水か湯でのシャワーらしい。


まぁ、やたらと、「らしい」「とか」を連発してるのは勘弁してくれ。 俺も聞いた話だし。


って、誰に言ってんだ俺? まだテンパってるらしいな。



 * * * * * *



明けて翌日。


「おはよう。 よく眠れた?」


既に、イライザが起きて朝食の用意をしてるらしい。


良い匂いが漂っている。



「おはよう。 お陰様で、よく眠れたよ。」


これは、社交辞令ではない。 一昨日おとといは木の上で眠った訳だし。


薄いとは言え、布団と毛布の上で眠れたのは感謝の限りだ。


布団の下に、わらを敷いてくれていたので、身体もガチガチに凝らずに済んでいるのも助かる。


「そう。それは良かった。 お昼過ぎには、ここを発つからね。」


「ん? ここを発つ?」


「そうよ。貴方を連れてホーデンの王都に向かうから。」


そう言いながら、机の上に食事を並べるイライザ。


「あぁ、昨日言ってた、ソニアって姫さんの所かな?」


「そうよ。 貴方の事を見て貰わないといけないからね。 勇者じゃないにしろ、何かしらの特殊能力チカラを持ってるかも知れないし。」


「多分、ないと思うよ。」


そう、昨日の夜に。寝るまでの時間、イライザと一緒に色々試したのだ。


結果、わかった事。


俺の身体能力は、この星の人族の平均(一般的な、成人男性と比べて)。


魔力無し。


特殊スキル無し。


金無し。


ついでに職無し。


とまぁ、見事なまでに無い無い尽くしだ。


だがまぁ、悲観して自暴自棄に為ってもいない。


なんせ、元から有るとは思っていなかったし。 あればラッキーかなって思ってたくらいだ。


50のオッサンが、異世界に転移しただけでも、ありえない状況だろうに。


これ以上、俺に何を望まれても、出しようが無いからね?


朝食を食って、集落の獣人の子供たちと戯れて居たら、あっという間に昼前に為った。


イライザの家で昼食を取り寛いでいたら、獣人さんがイライザの家に来訪してきた。


「イクル。紹介するわ。仲間のアレスよ。」


「アレスだ。」


そう言って、アレスが右手を差し出してきた。


日本語で話していることには驚かないよ。


何となく、予想はしてたしね!


「イクルです。」


同じく右手を差し出して握手を交わす。


アレスさんは、ゴリラの獣人さんだった。


見た目通りに、かなり良い体格をしている。


身長も2メートルは超えているね。俺も、182センチと、そこそこ高い方だけど。


完全に見上げる形になってる。


イライザの家の中に入るのに、かなり腰を折って入ってたもんな。


アレスさんと握手する時に、手を握り潰されないかと、ちょっとだけビビって居たのは秘密だ。


「ソニアから話は聞いていたけど。本当に、地球からの転移者なんだな。」


俺の恰好を見て、アレスが言う。


「それも日本のね。」


イライザが言葉を付け足す。


「ええ。 電車の中で、うたた寝をしていて。気が付いたら、この星に転移して居ました。」


と、俺が話すと。アレスさんがクスリと笑う。


「失礼。 この世界じゃなくて、この星と言う辺りが、ご年配の方なんだなって思ってしまって。」


「いえ。構いませんよ。 実際に若いどころか、50歳になるんですから。」


とは言え。この世界じゃなくて、この星と言う言い方は変えるつもりはない。


世界と言う表現でも間違ってはいないと思うけど。 俺たちが居るのは1つの星の上なんだから。


例えば地球。


太陽系第三惑星の地球と言う星。


それを、地球と言う世界だとは、誰も言わないはずだ。


そもそも、世界と言う意味は。 社会性の意味合いの方が強く。


日本人社会とか、アメリカ社会とか。 自分の知っている範囲での事柄を示し。 その示した全体像を世界と言っているのだから。


良くラノベとかで。この世界は狂っているとか、この世界は歪んでいるって表現があるけど。


それは、個人での知っている、或いは見えている範囲や国家での事柄や習慣であって。


決して、その星全体を示すのじゃないのだから。


大体にして、異世界転移と言う呼び方や、異世界転生と言う呼び方も、俺的に言わせて貰うと間違っているオカシイしいのだ!


異世界ではなくて、正確には異次元と表現した方が正しいと思う!


何故なら! 地球とは異なる次元軸の星に行くのだから。


異次元転生とか、異次元転移と表現する方が正しいのだっ!


そもそも、転生てんせいではなくっ!転生てんしょうと呼ぶのが正しい言い方なのだっ!


と、俺の意見を2人に力説してしまった。


何か、変な物でも見る目で軽く引いてる、イライザとアレス。


あ・・・、やっちまったよ・・・。俺・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る