第4話 初めての人

村に入った感想。


なんとも、古風と言うか。 何と言うか。 率直に言うと【ボロい】。


家と言えば聞こえは良いけど。 木の板を並べて紐で縛って、屋根の部分は日本で言う所の茅葺かやぶき屋根に近い。


村と言うよりも、集落と言った方がシックリくる。


そんな中の、少し大きめの家の中に、俺は連れられて入っていく。


中には、虎獣人さんが椅子に座っていた。


テーブルを挟んで、椅子に座らされる俺。


俺の左右には、イーサンさんと、オルガさんが並ぶ。


あ、オルガが黒豹獣人さんの名前で。 イーサンが犬獣人さんの名前ね。


集落に来るまでに、何度か同じ単語が出ていたので、名前を呼んでいたので間違いないと思う。


多分、英語と同じで。 単語と単語の組み合わせで、片言なら会話が成立しそうなんだけど。


その単語の意味が理解できていないから難儀である。



『その人族が、知らせに在った者かの?』


『そうだ。 言葉が全く通じないから難儀している。』


『言葉が通じないとな?』


『あぁ、共通語すら話せない様だ。一応、用心の為に拘束はしているが。敵意とかは感じられない。


それに、自分の名前らしき言葉と。 俺とイーサンの名前を呼ぶ事はできるので。


言葉は話せるが、その意味が理解できていなと言う方が正しいかもしれない。』


『武器も持たずに、平原を1人で旅してきたと?』


『一応、護身用らしきナイフみたいな物は所持していた。


だけど、こんな武器じゃ、平原猪ブランボアや、平原狼ブランウルフに襲われたら対抗できない。


現に、川の側で、平原猪ブランボアに襲われて、必死になって逃げていた様子だしな。』


オルガさんが、机の上にカッターナイフを置きながら、俺の方に視線を向ける。


『ほう。珍しい武器じゃの。 それに服装も変わっている。』


虎獣人さんが、カッターナイフを手に取りながら何か言ってる。


そうそう。 獣人さん達の手。 普通に俺たちと同じでした。


肉球とかじゃなくて、普通に人の手をしていましたよ。


女性の方の服は、貫頭衣?って言うのに、腰の辺りで紐止めしてるのが多かった。


男性は、セパレードでの半袖シャツとズボンだな。


靴を履いているのだから。多分、足も同じだと思う。


などとアホな事を考えながら、虎獣人さんが、カッターナイフの刃を出し入れしていると。


おもむろに、カッターナイフの刃を摘み、刃の部分を持って曲げだした。


当然、カッターナイフの刃なので、キンッ と音を立てながら折れた。


カッターナイフの刃が折れたと同時に。


『『『あっ!』』』


虎獣人、オルガさん、イーサンさんの、声が奇麗に揃って聞こえた。


『長よ。さすがに人の武器を壊すのはどうかと思うぞ?』


『すまん。まさか、これほど脆いとは思わなんだ。』


何か、虎獣人さんが、申し訳なさそうな表情で俺を見る。


俺は、良いよって意味で、笑顔を虎獣人さんに向ける。


その時だった。


『長ぁ~。私に用事って何ぃ~?』


1人の金髪の女性が入ってきた。


そう、獣人ではなくて、普通の人の女性が。


言い方が変だって? だって、俺。この星に来てから、獣人さんしか見てないからねっ!


この集落の人たちも、見た感じ獣人さんの集落っぽかったから。


そして、俺と女性の人との視線が合わさる。


俺も驚いているが。 俺を見た女性の方も、物凄く驚いた表情で固まっている。


そりゃもう、口を半開きにして、目を大きく見開いて、せっかくの美人さんが台無しであるってくらいに。


見た感じ、20に為るかどうだと思うけど。 基本的に欧米人の方って、年齢が年上に見えがちで分かりにくいからね。


『おぉ、イライザ。ちょうど良い所に来てくれた。 どうにも、共通語が通じんで、この人族の方との会話ができんでな。


名前を呼べたりするから、言葉が話せないのではなくて、言葉の意味が理解できておらんと思うのじゃが。


同じ人族のイライザなら、何か判るかも知れんと思うてな。』



『え、ええ。 判ったわ。 話しかけてみる。』


虎獣人さんと話していた女性は、俺の方に向くと、こう言った。 


「Am I making sense?(私の言ってる事は分かる?)」


この瞬間の俺は、物凄く間抜けな顔をしてたと思う。


だって、彼女の言った言葉は。 多分、英語?


え?異世界で英語?えっ?


「Am I making sense?(私の言ってる事は分かる?)」


彼女が再度聞いてきた。


「YES!」


大きな声を出し、頭を上下に激しくブンブン振りながら答える俺。



「Are you Japanese?(あなた、日本人?)」


「YES! YES!」


YESしか言ってないけど、こうなるよね! 仕方ないよね! だって、少しだけど自分に理解できる言語で話しかけてられているのだから。


今更だけど、もうちょっと英語勉強しておけばと思うけどねっ!


「そう、なら日本語で話せるわね。」


突然、日本語で話し出す金髪美女に、俺は間抜けな表情に為って居たと思う。


そりゃそうでしょう! なんせ何処からどう見ても、異国人さんが流暢に日本語を話しているんだよ!? それも異世界と言うオマケ付きで。


驚くなって方が無理でしょう!

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