リアリティな人の迷いと葛藤、懇願、ありふれていたはずの幸せへの渇望など、とても丁寧な心理描写が読み手の心を打つ作品です。
あらすじにもあるように、故郷に残した認知症の母と、そんな母の面倒をみる弟の元を訪れた兄、天。
彼は家族と疎遠になっていた。なぜ、疎遠になっていたのか。それが明かされる前半は彼の家族との過去、故郷で体験した世の不条理を描いています。彼の人生観を形成するきっかけを経て、「合理的」という言葉で自分を律し、周囲へもその言葉を吐き、離れてしまった。しかし、後半。弟から明かされた事実に、自分が吐いてきた言葉が天を襲います。
家族という人間関係、人の感情というものは「合理的」になり得るのか。是非、こちらの作品を一読下さい。きっと、心に残るものがあるはずです。