第20話 動く彫刻

美術館の夜間警備員Tさんは、閉館後の展示室を巡回していた。

古代彫刻の展示室で、中央に置かれた巨大な石像が動いたような気がした。

気のせいだと思い、巡回を続ける。

しかし、30分後に再び古代彫刻の展示室に戻ると、石像が明らかに向きを変えていた。

動揺したTさんは警備室に戻り、古代彫刻展示室の監視カメラ映像を確認した。

画面には、石像が床を引きずりながら歩く姿が映っていた。

信じられない光景に、Tさんは自分の目で確かめようと再び古代彫刻の展示室へ向かった。

展示室のドアを開けたTさんが中を覗き込むと、そこにあるはずの石像の姿はなく、背後から物音がした。

恐る恐る振り返ったTさんの目に、廊下の両側に並んだ全ての彫刻が、一斉にこちらを向いている光景が飛び込んできた。

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