第19話 迷いの森

ハイキング中に道に迷ったSさんは、同じ場所をぐるぐる歩いている気がしてきた。

スマートフォンのGPSも機能せず、どこにいるのか全く分からない。

木々の間から「こっちだよ」と声が聞こえ、Sさんは半ば諦めてその方向に向かった。

声のする方に行くと、突然視界が開け、目の前に深い崖が広がっていた。

恐る恐る振り返ると、そこには大勢の人が立っており、皆、透き通っていて悲しそうな顔をしている。

「君も仲間になるんだ」と口々に言う彼らに、Sさんは背筋が凍る思いがした。

咄嗟にスマートフォンのフラッシュライトを点け、幽霊たちに向けて照らすと、彼らは光を避けるように後退し始めた。

その隙に、Sさんは来た道を全力で駆け下りた。

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