休日

今日は休日。学校がない日だ。学校がないと言うことは家に居ないといけないということ。


僕が家にいるときっと花梨さんもゆっくり出来ないよね!志那さんは相変わらず朝から仕事に行ってしまった。会社のお偉いさんって忙しいんだね。


さてと、どこで時間を潰そうかな…


特に行きたい場所やしたいことがある訳じゃない。どうしたものか…本でも買いに見に行くか。


そう決めた僕はここから近くにある本屋に向かった。


本屋に着き店の中に入る。そしてミステリー小説のある棚に向かう。僕は小説の中なら一番ミステリーが好きだ。あの謎が徐々に明かされていく感じが好きなんだよなー。


そんなことを思いながら本棚を見つめていると


「か、叶人君?」


僕の名前を呼ぶ声が聞こえた?はて?誰だろう?そう思いながら振り返るとそこには丸眼鏡をかけた少女が立っていた。


「…夕暮さん。こんなところで会うなんて奇遇だね」


そこにはクラスメイトの夕暮さんがいた。


「そ、そうだね。叶人君はここで何を…って本を見に来たんだよね」


本屋に来る用事なんてそれしかないよね。


「あ…叶人君、本当にミステリーが好きだよね」


夕暮さんにそう言われて言葉を返す。


「そうだね。小説の中ではミステリーが一番好きだよ」


僕がそう言うと夕暮さんは少し俯きながら言葉を発した。


「…知ってるよ。叶人君が教えてくれたもんね」


あぁ、確かそうだった。夕暮さんと仲がいいと勘違いしていた時に僕がそう言ったんだった。あの時の僕は本当に馬鹿だったなぁ。僕と仲良くしたい人なんているわけなかったのに、夕暮さんと仲良くなれたと思っていたんだから。


「そうだったね。夕暮さんも本を見るきたの?」


「あ…えっと…そうなんだ。私も本を見に来たの」


ふむ。なら僕は邪魔だろう。さっさと夕暮さんの目の前から消えないと。


「なら僕は邪魔だろうから違うところに行くね」


「え」


そう言って本屋から出ようとしたら夕暮さんに呼び止められた。


「ちょ、ちょっと待って!」


うん?何かあるのだろうか?


「どうかしたの?」


「あ…その…どこかで話さない?」


どういう訳か夕暮さんが僕と話したいと言ったので近くの喫茶店に来ていた。


僕と話したい?そんなわけないよなぁ。…ないよね。


「それで?何か話したいことでもあったの?」


「…あの時は本当にごめんなさい」


そう言って夕暮さんは僕に頭を下げた。あの時と言うのはきっとあのことを言っているんだろう。


「またその話?あれは君が謝るようなことじゃないよ。悪かったのは僕だ」


「違う!悪いのは私なの…助けて貰ったのに私は…」


うーん。何故か夕暮さんはあの出来事は自分が悪いと思い込んでいるみたいだ。どうすればその認識を変えることが出来るだろう…


「…僕は助けてなんかいないよ。だってあれはただ君を怖がらせただけだったしね」


今でも鮮明に思い出せる。あの怯える顔を。


「そ、それは…た、確かにあの時は怖いと思ってしまった。でもそれは叶人君を怖がった訳じゃないの!怖かったのは男の人で…」


「僕も男だよ。僕は君を傷つけてしまった。それは許されないことだし許してもらおうとも思っていない。もう君には近づかないし話しかけたりもしない。どうかそれで学校にいることを許してくれないかな?」


どうにかして学校には居たいよなぁ。退学になっちゃったらさすがに生きて行けなくなっちゃうよ。


僕がそう言うと夕暮さん眼鏡の奥の目を見開きながら口を開いた。


「ち、違…私はそんなつもりで言ったんじゃ…」


「それじゃあ僕はもう行くよ」


僕と一緒にいたらまたあの時の恐怖を思い出してしまうかもしれないからね。



あとがき

次回から夕暮さんサイドのお話になります!

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