私がしたこと side真由奈

結局、それからはその日は叶人と話すことは無かった。


…どうにかして叶人に勘違いだって分かってもらわないと。そう思っていた私は今日も待ち合わせ場所で叶人を待っていた。


来たらなんて声をかけよう。そう思っていてたのに。何分経っても叶人が来ることは無かった。これ以上待っていれば学校に遅れてしまう。体調でも悪いのかな?


そう思った私は学校に向かった。そして教室に入る。


そこには既に登校してきている叶人がいた。私はその背中を見た瞬間、彼向かって歩き出していた。


「叶人、どうして先に行ったの?」


私は悲しみの感情を少し孕みながらそう聞いた。


「え?なんで一緒に行くの?」


叶人は本当に不思議そうにそう聞いてきた。


「な、なんでって、今まで一緒に行ってたじゃん」


そんな叶人に少したじろぎながらもそう返す。


「今までだったらそうだね。でも今は状況が違うでしょ?」


やっぱり叶人の勘違いは解けていなかった。


「だからそれは違うの!」


私は色んな感情がぐちゃぐちゃになり感情的にそう叫んでしまう。


「お、落ち着いて綾崎さん」


叶人が私の名前を苗字で呼んだ。その事にも感情の渦が巻く。


「それになんなの!その綾崎さんって!」


私は周囲の目を気にすることなく大きな声で叫んでしまう。こんなことすれば叶人が悪者のように見えてしまうかもしれない。それなのに私は叫ぶことをやめられなかった。


頭では分かっているのに身体が言うことを聞かない。


「わ、分かった!今日一緒に帰ろう!それでその時話そう!ね?」


すると叶人がそう言ってくれた。


「ほ、ほんと?一緒に帰ってくれるの?」


私は叶人にそう聞き返す。


「か、帰るから、だからそんなに大きな声で騒がないで。ね?」


一緒に帰る。ただそれだけの事を約束してくれただけでこんなにも嬉しいなんて…


私は…何をしていたんだろう。


学校が終わった。私は直ぐに叶人に近寄り声を掛ける。


「か、叶人。じゃあ帰ろっか…?」


私は叶人を真っ直ぐ見つめながらそう言った。


「…」


「はぁ…わかったよ。帰ろうか」


私は叶人の了承の返事を聞いて胸が熱くなるのを感じた。


「う、うん!」


あぁ、やっぱり私、叶人のこと大好きだよ。


叶人は何かを考えているようだった。


「?」


でも結局何を考えているのかは分からなかった。


私たちは隣合いながら歩いていた。


「ひ、久しぶりだね…一緒に帰るのなんて」


どうしてだろう。いままのでのように楽に話せない。いや、理由は分かっている。私があんな馬鹿な行動を取ってしまったからだ。あれから叶人との間にはどこか気まずい空気が流れている。


「確かにそうだね」


やっぱり会話がぎこちない。


「…」


「…」


会話が途切れてしまう。分かってる。私から話しかけないといけないことは。


「…」


「…」


でも言葉が出てこない。


「…」


「…」


こんなんじゃ叶人に嫌われちゃうよ…もう手遅れかな…


「あー、それで何が話したかったの?」


そんな私を見かねたのか叶人から話しかけてくれた。情けない。それでようやく話せるなんて。


「…うん。あのね。私、先輩と付き合ってないよ」


私は短くそう伝えた。


「大丈夫だ綾崎さん。君なら絶対に先輩と付き合える。そして上手くやれるだろう。だから迷わず先輩と付き合うといい」


え?


「な、なんでそうなるの?わ、私は…」


「君の気持ちも分かる。付き合うことに不安を覚えているんだろう?でも君たちなら上手くやれる。頑張れ」


ち、違う。全然違う!


「大丈夫。僕が好きだった女の子は女の子はきっと上手くいく」


私は叶人のその一言で現実を思い知った。好きだった。叶人はそう言った。つまり彼はもう私のことが好きではないということだ。


嫌。そんなの嫌。


「か、叶人…」


私は縋るように名前を呼ぶ。


「善は急げだ。今から先輩に返事をしてくるといい。それじゃあ邪魔者は帰るとするよ。いい結果になるといいね!」


私…私は取り返しのつかないことをしてしまったのではないか?この気まずさだけじゃない。叶人の目には私が写っていなかった。見えるのはただ深く広く広がっている漆黒だけ。


私は…一体何をしてしまったの?



あとがき

幼馴染達の間に広がる溝は埋まることはあるのでしょうか?

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