勘違い side真由奈

あんなことがあった次の日、私は叶人との待ち合わせ場所で彼が来るのを待っていた。


気分は憂鬱。私は地面を見ていた。


私が早まった行動をしなければ…昨日からそんな後悔が頭の中を駆け回る。


『ずっと両思いだと思っていた。ずっと君と気持ちが繋がっていると思っていた。でもそれは僕の勝手な勘違いだった。初めから君は僕のことなんて好きじゃなかったのに』


っ…何度も叶人の言葉がフラッシュバックする。私はただ叶人に私のことを意識して焦ってもらいたかっただけなのに…それなのに結果は最悪。私は自分のことを好きだと思ってくれていた幼馴染の男の子の心を踏みにじってしまった。


それに私に告白してくれた先輩の好意まで踏みにじって…何やってんだろ、私。


…二人にちゃんと謝らないと。


軽く息を吐く。すると少し先に見慣れた後ろ姿があった。私はそれを見た瞬間、小走りでその背中に駆け寄る。


そして軽く肩を叩く。


「え?」


叶人が少し驚いたように振り返った。


「えっと、どうしたの?」


叶人は不思議そうにそう聞いてくる。


分かってる。こんな私に話しかけたくないなんてことは。自分勝手だと思う。でも私はそれに納得出来ない。


「か、叶人!どうして声掛けてくれなかったの?!」


何を言っているのだろう。声をかけてくれない原因を作ったのは他でもない私だと言うのに。


「何言ってるんだ?そんなことしたら先輩に悪いじゃないか」


そうだった。私はまだ叶人の誤解を解いていないんだった。


「ち、違うの!私、先輩と付き合ってなんかないの!」


私は必死に否定した。私が好きなのは叶人だけ。


「大丈夫!分かってるよ。みんなには言わないから」


叶人は私が恥ずかしがって付き合っていないと言っていると思っている。ダメだ。それは勘違いなんだと分かってもらわないと。


「本当に違うの!た、確かに先輩に告白はされたけど…まだ返事を返してないの!」


先輩には悪いが返事はもう決まっている。


「そうだったのか。それは早とちり。でも前向きに考えてるでしょ?なら先んじておめでとうと言っておこう。おめでとう」


「話を聞いて!わ、私、別に先輩が好きな訳じゃないから!」


私は声を荒らげながら必死でそう伝える。


「そうなのか?でも昨日は先輩の告白を受けようと思ってるって言ってなかったか?」


私はそう言われて次の言葉に詰まってしまった。


「そ、それは…」


ここで本当のことを言ってしまってもいいの?あんなこと言ったら嫌われるんじゃ…


その時、突然叶人が私の足元に手を伸ばした。


「か、叶人?あ、ハンカチ…」


そこには私のハンカチが落ちていた。


「まゆ…」


どうしよう。叶人になんて伝えよう。


「綾崎さん、これ、落としてたよ」


「ありが……え?あ、綾崎さん?」


あまりに自然で聞き流しそうになってしまった。でも私はしっかりと聞いていた。叶人が私のことを苗字で呼んだ。


「な、なんで苗字なの?な、名前で呼んでよ…」


私は思ったことをそのまま口に出した。


「いやいや、普通にダメでしょ。彼女が幼馴染の男に名前呼びされてたらいい気はしないでしょ」


どうやら叶人の中で私と先輩は想いあっているということになっているらしい。


「そ、それは…そうかもしれないけど…」


でも私は先輩と付き合ってないから…


「それじゃあ僕は学校に行くから、綾崎さんも遅れないようにね」


叶人はそう言うと私に背を向けて歩き出してしまった。


「ま、待ってよ!」


私はどうにか叶人と離れてたくなくて彼のすぐ後ろを歩いた。でも何を話したらいいか分からなくて学校に着くまで無言だった。


「真由奈…大丈夫だった?何もされてない?」


「何かあったら私たちにすぐ言うんだよ」


教室に入ると私よ友達がそう言い、叶人を睨んでいた。私はそんな二人の対応に苛立ちを覚えた。どうにかその苛立ちを抑え無言で頷く。


叶人は私の方を振り向くことなく自分の席に着いてしまった。そんな叶人を見つめていると


「か、叶人君…」


叶人に話しかける一人の女の子が見えた。


誰だろう?



あとがき

真由奈はこれからどういう行動をとっていくのでしょうか?

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