第4話 魅せる者


 ●


 1チームから5チームまで、私はじっくりと見させてもらった。倒すのに時間がかかったところもあったが、基本的には瞬殺。一番弱く設定してあるから当然か。いやそれとも、素晴らしい特殊能力の遺伝子による賜物か。


 1チーム。河野凛童、牛越件乃は攻撃系の力は無かった。能力資料届けでは、特定の条件が揃わなければ発動しないと記載されていた。まさにその通り2人は早々に戦闘を放棄し、水速流衣に委ねて破壊させた。その水速も身体強化系の一種かそれとも、”時の能力の遺伝子”か。瞬殺とも言える速さでぶっ壊してしまった。



 2チームは協力プレイでクリア。3チームは蛸背条たこせじょう1人のめんどくさがりで崩壊しかけ、そこを最上鏡もがみきょうのファインプレーで乗り切った。



 4チームは一番癖があった。それも白星しらほしカミルと言う完全に能力としては当たりの生徒が、お手をわずらわせることはできませんと、紳士的な言動とは正反対に躊躇ちゅうちょなくロボットを破壊したからだ。青い髪を輪っかを作って頭の上にまとめている見た目に、一挙手一投足全てが執事の業務かの如く、姿勢よく体勢よくご丁寧に、天体模型を生み出し投球のポーズで放り投げで破壊した。


『多白お嬢様、お怪我は?』

『大丈夫ですわ。それにしても、おひとりでやってしまったのですね』

『活躍無かった…』


 ご家庭の事情は一般受験者故、一切の詳細は不明だ。が、あんな手慣れたやり方は実際に執事でもやっている格好だな。多白は有名企業社長の娘だから知っているけども。傘木は可哀想。



 5チーム目は、拘束と衝撃による2人の協力プレイで終了。1人は能力が特殊だったため攻撃ができなかったが、状況把握能力に終わった後の励ましの言葉、サポートとケアが上手いみたいだ。



 さて次で最後の6チーム目か。炎に雷とは代表的な能力だが、この悟川心冶という生徒。零細能力のさとり系統とは珍しい。心を読む、テレパシー、感覚共有、そして”無意識”とどれか一つだけでも戦力にはなる。それに、この生徒はどこかで見たことがある気が…。まあいいや。今を見るのが絶対だ。


 これがこの学園の教訓だ。よく覚えるんだな、さあ、少年少女よ勇者と成れ。

 Be brave, Go.



 ●



 ついに僕たちの出番が来て、3人一緒にカーテンの向こう側に行く。大きなサーカスの部屋みたいな小綺麗さに、暖色の明かりが強く灯っている。それ以外は何も無い殺風景だ。一体どうやって能力のお披露目をさせるのだろうか。


『最後の6チーム目、小神・悟川・釣瓶。どうだ、できるか』

「うわ、えっと、はい…!」


 何処からかAIモニターが出現し、そこに水島先生が映る。僕は驚いたが、先生の気遣いの言葉にできる意志をみせる。小神さんも燈爾君も同じの様だ。すると、何かの魔法か何かで僕たちの制服姿は一変し、百鬼学園の体操着に変わった。


『素晴らしい技術だろう。これからやるのは対戦だ。対戦用ロボットをそちらに送る』

「対戦ロボ!?すっごい、そんなのあるんだ…!」

『対戦向きじゃないなら無理にやらなくていい。どうせ、体育祭や期末試験で必須だからな』

「(親切だ…)」


 無理にやらなくていい。なんて優しい言葉だ。それでも、体育祭や期末試験では絶対使わないといけないのは仕方がない。その先ではしっかり頑張らないと。


『是非とも魅せてくれよ。禍福課カフカを目指す少年少女たち』


 ドゴンと大きな音を立てて、空から巨大なロボットが降って来る。戦闘用と名が付いている通り、その武装は鋼鉄に武器を揃えている。迫力殺意満天の殺戮兵器にしか見えない。僕と燈爾君は一緒になってビビってしまう。


「心冶。無理しなくて良いからな」

「ワタシたち攻撃部隊に任せてね!」


 わざわざ気を遣わせて申し訳ない気持ちでいっぱいだ。でも、心の声は聞こえない。嬉しさや楽しさの気持ちでいっぱいなんだろうなあ。僕もずっと沈んだままでいちゃだめだ。しっかりと、前を向かなきゃ。


 対戦用ロボは僕たちに銃口を向ける。攻撃が始まり、僕たちは銃弾を避けるように動き回る。向こうは当てる気が無さそうだ。もしかしたらロボットの設定を弱めにしているのかもしれない。これも親切心なのかな。銃攻撃で僕と小神さん、燈爾君と二手に分かれてしまった。そして蒼と紫のグラデーションの髪を炎のようになびかせ、燈爾君はロボットに向けて火を放つ。


「【焔火ほむらび】!」


 群青色の炎が燃え上がり、ロボットにまとわりついて焼き尽くす。しかし、炎があがるとロボットは傷一つも無い状態だった。燈爾君は拍子抜けした顔をしている。僕も小神さんも唖然の顔をしちゃってる。


『悪いね。代表的な能力に関しては対策されてるんだよ。炎・水・雷・地・氷とかな』

「早く言ってくださいよソレ!!!?」


「ワタシも…やる!【バチバチサンダー】!」


 小神さんは髪の毛を金色に輝かせ雷を放出する。まさかの髪の毛に帯電からの放電という、雷の能力としてはかなり強い部類だった。雷の能力は先生が言っていた代表的な能力の中でも、重要かつ癖があって扱いずらいと聞いたことがある。


 でも、小神さんの才能がある雷もロボットの前では無力だった。というか当たってなかった。ロボットの目の前の地面に落ちるだけだった。小神さん、目を瞑りながら撃ったから命中しなかったのかな。


「ごめん!雨じゃないと命中率低くて…!」

「(ポケ○ンかな…?)」

「それってどんくらい低いのー!?」


 燈爾君が小神さんに大きな声で話しかける。確かに積乱雲とかに雷が溜まっているし、深いくらいに灰色の曇り空とか豪雨の時に落ちるからなあ。それにポケ○ンでも雨が降ってないと確率30%でほぼ当たらないし。


「5%!!雨だったら100%なのに!」

「ひっっっっく」

「てへ」


「ってうわあああ!!」


 てへで済む話なのかなあ???こっちの攻撃が終わったと認識したロボットはさっきよりも攻撃性を増して追いかけてくる。僕たちは悲鳴を上げながら部屋いっぱいに逃げた。巨体のロボットに追いかけられるのは怖い。普通こんなの映画でしか見ないものに僕らは悲鳴を上げることしか出来なかった。


「ごめんねー!ワタシがポンコツじゃったばっかりにこんなんになって!」

「小神さん方言出てる…」

「え、あ、ごめん…せっかく東京に来たから標準語が良いかなって…」

「いや、全然大丈夫ですよ。似合ってます」


「えへへ。ありがとの…!」


 小神さんまさかの方言が出てた。東京出身じゃ無いんだ。似合ってるし、可愛い。


「いちゃついてる場合かーーーー!!!」


 燈爾君の言葉にハッと意識を戻す。そうだ、方言とか考えてる場合じゃなかった。僕の頭にはまだルナがいる。でも、前にみたいに戦えるかは分からない。どうにかして2人も魅せれるように考えなきゃ。僕たちはただただ逃げ続ける。この部屋は壁がないのか果てしない程広い。一応迷子にならないように、皆を視界に映せる状態を保ちつつ走り続ける。


「どうやって倒す?」

「えっと、僕が最悪殴りに行くよ」

「殴るの?行けるの?」


 僕が前みたいに殴る。あの時はルナが僕の拳と一体化して、さらに燈爾君の炎の追加効果で倒すことができたんだ。ロボットは機械、小神さんは電気を使うから、貰って殴ってショートさせる…!!まずはロボットの急所を見つけないと。


「燈爾君、ロボットの弱点を探そう!」

「弱点?オッケー。俺がコイツ惹きつけておく!」


 燈爾君は僕が弱点を見つけるのを把握し、炎でロボットを惹きつける。僕は巨体ロボットを何度も見渡し、弱点を探り続ける。小神さんも協力して一緒に確認する。すると、小神さんは何かに気づく。


「あの首元、あれ!精密そうだし電気当てたら何とかいけるかも」

「いよっし!ルナ!」

『んむう!!』


「(え、キモ可愛い…好き)」

「(え、ルナがキモ可愛い??)」


 キモいは同意するけど、可愛いはちょっと謎かも。僕の言葉に頭で寝ていたルナは飛び起きて反応する。言葉は通じないけど、でもお互い思っていることは言わなくても通じる。僕の左の拳にまたのめり込み、グローブのような形になる。拳を強く握って力を籠める。


「小神さん、雷を僕の拳に頂戴!」

「え、うん。でもワタシの雷は帯電できても、放出しないと雷としては機能しないけど」

「じゃあ僕にまるごと雷送って」


「わかった…」


 雷なんて危ないものだ。ギャグ漫画とかじゃない限り、電圧42Vで死だし電流は50Aでも死。受け取って生きていられるかの保証はないかもしれない。別に生きていたいなんて思ったことないし、母さんとの約束も果たせた後は正直どうでもいい。


「行くよ…【バチバチサンダー】!!」


「アッチャー!!!」


「燈爾君!?」


 小神さんはまた目を瞑って雷を放出する。しかし、僕に当てたのではなく、少し離れた燈爾君にクリティカルヒットした。ちょっと黒焦げになっていたが、息はしてるし元気そうだ。小神さんの雷は喰らっても大丈夫そうかも…。


「冷静に分析してんじゃねー!」

「いやー…あはは」


「…っ!ごめんね!!」


「小神さん?」


 小神さんは僕たちを置いて何処かへと走ってしまった。燈爾君に雷が当たったことへの謝罪だろうけど、何か思いつめて涙をこらえている表情が走り去る横顔からしっかりと僕は見えていた。


「待って!小神さん!」

「何だ、どうした?」


 僕は小神さんを追いかけて走った。ロボットを倒さないといけないのに、今僕の頭にはクラスメイトの彼女が何か隠しているのかに好奇心が突き動かされていた。燈爾君も僕の後ろから状況は掴めていないけど追いかけて来た。


『…オーリー、障害物を用意しろ。それと、ロボットの設定を上げろ』


『かしこまりましタ


 僕たちは逃げた小神さんを追いかけていると、突如として地面から岩のような四角の障害物が這い上がってきた。色んな長さと高さが伸びてきて驚いているうちに小神さんを見失ってしまった。


「見失っちゃった」


「おいおい、あのロボットやべーよ!」


 燈爾君が後ろから爆速で追い上げて肩を揺らされる。指を指された方向を見れば、ロボットが変形していて何か攻撃特攻モードのような姿になっていた。恐怖が爆上げブーストしてしまう。燈爾君と一緒に悲鳴を上げてしまい気づかれる。ロボットの目から小型のミサイルやレーザーが飛び出し、僕たちはさらに足のブーストを上げて爆速で逃げ回る。


「何かパワーアップしてるんですけど!!?」

「やばいってコレ!!死ぬ死ぬ!」

「し、死なないよ!大丈夫!」

「何処に大丈夫の保証があるんだよーー泣」


 僕らは逃げ惑うことしか出来ない。小神さんを見つけないといけないのに、障害物の多さやロボットのパワーアップなどの急な展開に戸惑ってばかりで冷静な判断もできない。運動なんてあんまりしてなかったのに、燈爾君に会ってからは一緒にランニングやら遊びに受験以外で毎日付き合わされてたし、多少は動けてもまだまだだ。


 小神さん何処に行ったのかな。はやく見つけなきゃ。そう思っていたら僕は自分の能力を思い出した。いつも聞いているじゃないか。心の声を、勿菟君みたいに助けを呼ぶ哀しみの声を。


『ごめんなさい…ごめんなさい』


「あっちからだ!」

「え?何が?」

「小神さんの声がする…!」

「お前耳良すぎるだろ」


 燈爾君にまだ能力は伝えていないけど、そう解釈してくれるのはありがたいかな。僕はロボットの猛攻を避けつつ小神さんの心の声がする方に向かって走る。燈爾君の炎のサポートで何とかロボットから撒いて、一つ正方形の大きな障害物に辿り着く。後ろに回ってみれば、座り込んですすり泣いている小神さんがいた。



 ●



 小神さんは座り込んですすり泣いている。何か思いつめているのかな。僕は初めて心の声をもっと聴きたくなった。今まで向き合いも何もしなかったのに、今さらになって僕は人を助けたい気持ちで、誰かの為に能力を使ったのだ。


『酷いことしちゃった。ワタシやっぱり酷い人だ』

「小神さん」

「え、あ、ごめんね。ワタシ逃げちゃって…」


「小神さん何かあったの?って、目を瞑って撃ったこと?それとも燈爾君に当てちゃったこと?」


「うっ…えっと」


 小神さんは観念したように渋々僕にその酷いことを教えてくれた。心の声を見透かされたから観念したんだろうな。泣きながら図星の顔してたし。本当は積極的に読んじゃいけないんだけど。母さんにもあんまりしちゃダメだよって言われてたし。


 小神さんは小さい頃から犬のワトを飼っているらしい。7歳の時にワトと一緒に散歩をしてた際、急にワトは小神さんから離れて駆けだしてしまった。リードも離れて何処かへ行ってしまうと、心で焦ってしまい咄嗟とっさに雷を放ってしまったのだ。そしてその雷はワトに命中してしまい、動物病院に連れていったら幸い命は助かったが、片足が不自由になってしまった。


「あの時、雷を出すのも当たるのも見ちゃったから。怖くて怖くて、前が見えなくなって…」


 彼女は自分の能力のせいで、自分の大切な家族を傷つけてしまった。それがずっとトラウマで自分の能力と向き合えていないみたいだ。僕と同じで向き合えていないんだ。そう、一緒なんだ。


 僕は自分の能力でいじめられた。化け物だってののしられて、家族の仲を取り持つことさえできなかった恐怖心。彼女は他者を傷つける恐怖心。経験は違っても結果は一緒だ。


 僕はなんて声をかければいいんだろうか。向き合おうなんて説教臭いことを言えない。言えるような立場ではない。教師だったり大人だったり、少なくとも向き合えて克服ができていたら。だから、


「前向いてないと、危ないよ」

「うん…わかってるけど」

「僕と同じだよ。怖くて向き合えてないんでしょ」

「…」


 小神さんは押し黙ってしまった。でも、彼女を元気づけないとロボットを倒せない。それに、ずっとくすぶったままじゃ、次もその次も乗り越えられない。彼女を救いたい。漠然的なキレイごとに過ぎないけど、小神さん許してね。


「眼を瞑ってたって、体を縮こまらせたって、過去は変わらないんだよ。僕がいつもそうだった」


「…!」


「残酷だよね。小神さんの家族も確かに残酷な結果が残っちゃったけど、次はそうならないようにしよう」


 そうだ。今生きている以上に、次が存在する。僕たちの人生の道はまだ続いている。子供の時の恐怖心も、一生悩む後悔も、見なければ足を引っ張るだけの茨だ。でも茨の道だって歩ける方法を人間は知ってる。


「”辛いことは分け合おう”でしょ?怖かったことでも良いよ。1人で無理しなくて良いから、これから一緒に乗り越えよう」


 これは入学式にくれた彼女の言葉だ。優しさと辛さは分け合うものって、僕に教えてくれた。小神さんあ僕の言葉に縮こまらせていた体をゆっくりと上げる。重い腰を上げて僕の方を見ている。


「そうだね。前向いてけば、辛いこともやっぱりあるけど。今は止まってる場合じゃないね」

「ワタシまだ過去を飲み込められないけど、”次”にはちゃんと気を付けるよ」


 彼女はニカッと笑う。まだ乗り越えはできないけど、足を止めることを止めた意思表示をしている。彼女に励ましで送った言葉は、確かに僕にも突き刺さる。誰かに言っているように、僕にもしっかりと言っている。


「暗い話は終わりかー?」

「あ、ごめんね。小神さん、一緒にあのロボット倒そう」

「うん!」


 僕たちは持ち直し、もう一度あのロボットに向き合う。向こうは敵を見失って障害物を片っ端から排除してるけど、裏をかくには充分な状態でもある。障害物に僕らは身を潜めつつもう一度作戦を練りなおす。


「んで、さっきと同じ戦法とるのか?」

「…作戦変更で。燈爾君はさ、炎の火力ってどれくらい?」

「俺?ちょっと鉄を溶かすくらいだけど、アイツは対策されてるだろ?行けるかどうか…」

「無理かもしれないけど、足止めにはなると思うよ。そして、小神さんはあのロボットの首に向かって雷を撃って」

「で、できるかな…」

「無理ならロボット全部に撃っていいよ。僕が頭を叩きのめすから!」


「(ば、バイオレンスな考え方…)」


「いよっし、それじゃあその通りに行くか。無理だったら代替案いくらでも出してやるよ」


 僕らは意志を固くする。最初に燈爾君が動き、ロボットの注意を惹く。その間に、僕と小神さんは裏の方に回り、特に小神さんは絶対に首元の精密部分を狙える位置につく。僕は燈爾君にヘイトがいきすぎないように、代わる代わる相手をする。ミサイルの処理を炎で何度もやっていく。そして、このヘイトを僕たちに向けているのが一番の絶好のチャンスだ。



 行ってくれ!小神さん!



「【トドロキサンダー】!!!!」



 小神さん今度は目を開けて、髪に溜めた一瞬の電気を大量にロボットに向ける。天候は雨じゃないけど、目を開けて前を見る彼女には勝つための電気が通る道が見えていたんだ。雷はロボット全体に当たり、さらに重点的に精密部分を攻撃している。数秒経てばロボットは機能停止し黒焦げになっていた。


「やったよ!勝ったんじゃー!」

「かっこよかったぜ小神~!」

「良かった…」


 作戦は見事に成功した。これほど嬉しいことはない。小神さんもちゃんと目を開けて雷を当ててたし、上手くいって本当に良かった。


『おめでとう。一番時間がかかっていたが、その分しっかりと見ごたえがあったな』

「先生」

『すでに他の生徒は教室に戻ってる。お前らも戻りな』



「「「ありがとうございました!」」」



 僕たちは先生にお礼を言って、どこからともなく出現した出入口から退場する。外に出れば服装は元の制服に元通り。拳と一体化していたルナも、使わなかったけど何事もなかったようにケロリと戻って帽子の中に入っていった。僕たちは教室に戻るまで会話は途切れることはなかった。


『(眼を瞑ってたって、体を縮こまらせたって、過去は変わらないんだよ)か…。子供のくせに大人びたこと言ってんな…』


 暗い暗い顔の影が、ただでさえ帽子で見えない顔の上部分をさらに深く闇に落とし込んでいた。



 ●



 教室に戻って早々、僕たちの方に人だかりができた。なんと僕たちが遅かったことが理由に、あのオーリーが勝手に僕たちの戦いを中継していたらしい。声付きだから僕と小神さんのあの会話も聞かれたようで、今現在数人の女子と男子にちやほや言われている。傍から見たら、やれ甘いだの、何だのと。特に河野さんだっけ…その人は興味津々で聞いている。


 僕はそういう在ること無いこと言われ慣れてるので、そこまで気にしてはいないけど、小神さんはそうではなかった。顔を真っ赤にして今にも髪に溜まっている雷が落ちそうである。


「それで、どうだったんね!」

「ち、ち、ちち、違うからああああああ!!!!!!!!!!」


「あ」


 そして先生が教室に戻ってきた時には、生徒全員が黒焦げになっている状態だった。先生は全く気にせずその後の話をしていた。す、ストイック…。けほっ…。



あと、小神さんはちゃんと皆に謝ってた。皆も謝ってた。これは波乱万丈な高校生活になりそうだ。


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