第2話

土井と中山 会話 土井視点


駅で電車を待つ間、土井は、ベンチに座ってiPadでbl小説を読んでいた。すると、


「土井くん」


という声が聞こえた。驚いて振り返ると、中山さんがいた。


「ああ、こんにちは、中山さん」


土井は自然な感じで彼にあいさつしたが、内心ではひやひやしていた。自分がbl小説を読んでいることが中山さんにばれていないだろうか。いや、iPadは自分の体で隠れているはずだし、万一文字が彼に見えていたとしても、よく注意して文字を読まない限りそれがbl小説だとばれるはずがない。


「中山さんも帰りですか?」


「そうだね、今日は仕事が早く済んだんだよ。」


「それはよかったですね。」


ちょうどそのとき電車が来たので、二人は会話を中断して電車に乗った。


ドアが閉まって電車が動き始めたあたりで、二人は会話を再開した。


「そういえば土井君はbookserviceという電子書籍のアプリをiPadにインストールしたと聞いたけど、あれ便利なの?」


「それはもう。電子書籍だからかさばらないし、文章中に六色もの色のマーカーを入れられるんですよ。小説内で重要だと思った箇所に、そのとき使いたいなと思った色のマーカーを引いています。」


「機能を有効活用しているんだね。土井君はどんな小説が好きなの?」


「えっと……」


土井は好きな小説を聞かれて言葉に詰まった。まさかbl小説と答えるわけにはいかない。しかし、自分が今読んでいるジャンルとは全く違うジャンル、例えば推理小説と答えたら、それについて突っ込んだ質問をされたときに答えられない。


「なんといいますか、一言では表現しづらいというか……」


いや、一言では表現しづらいってどんな小説だよ。そう思いながらも、何と答えるべきか考える。結局、


「恋愛小説が好きです。」


と答えた。bl小説は男同士の恋愛を扱っているわけだから、嘘は言っていない。それに、恋愛小説について詳しく聞かれたら、bl小説の受けを女に置き換えて話せばよい。


















異性愛が迫害される世界 SF




登場人物




主人公 受け 望月 康太 高3 一人称 僕


サッカー部


容姿


身長は175cmで、目鼻立ちの整った端正な容姿を持つ。肌は透き通るように白い。指は細長く、きれいな形をしている。腕は一見細く見えるが、筋肉がしっかりついている。そして腹筋はうすく割れている。




学力


学力においても彼は他を圧倒している。彼は日本一の進学校であるS高校で、常にトップの成績である。厚生労働省人口管理局を目指している。




ピアノを弾く




性格 基本的にはいい、ただし異性愛者を迫害する




攻め 河合 卓すぐる 一人称 俺


柔道部


容姿


精悍な顔つき


いたずら気な目


ブレザーの上からでも分かる胸板




性格 基本的にはいい、ただし異性愛者を迫害する




男女カップル


男 宮本 利男 一人称 僕




女 永田 百合子 一人称 私








Science liberates human beings from reproduction.




科学は人類を生殖から解放する。論文”Artificial Uteruses”の一節






プロローグ




健康で若い男は男を好きになる。例にもれず望月康太もそうだ。彼は17年前にこの世に生を受け、そこからすくすくと普通の男子に、いや普通以上の、様々な面において恵まれた男子に育った。




作品世界の社会のテスト




人類が存続するためには、女性が子供を出産する必要があった。しかし、妊娠は母体に多大な負担をもたらすし、さらに誕生した新生児が質が高いものとは限らなかった。


この問題を解決する糸口となったのが、(①2064)年に(②ウィリアム・テイラー)が発表した、Artificial Uterusesという論文である。彼は、この論文で、女性の子宮を模した胎児を育てられる人工子宮の技術を確立した。そして、(③2065)年、国連は(④世界人口管理宣言)を採択し、女性が出産する代わりに、各国が人工子宮で胎児を育てて、その国の人口を一元的に管理する制度を設けるように要請した。その流れを受けて、(⑤2068)年、日本の厚生労働省に(⑥人口管理局)が設立された。また、(⑤2068)年に、(⑦人口法)が制定された。(⑦人口法)は、男女間の避妊具を用いない性行為を禁止する条項を含んでいた。(⑧2084)年に(⑦人口法)は改正され、男女間の性行為は避妊具を用いた場合でも禁止されるようになった。






望月康太と宮本利男の問答




宮本利男 なぜ、男女でつきあってはいけないんだ。僕は百合子が好きなのに。この気持ちを否定したくない。




望月康太 宮本君は過去の歴史を知らないの?男女間の交際は妊娠につながるでしょう?妊娠が女性に苦痛を強いてきたこと、妊娠によって生まれてくる子供の質が高くなかったことを学んだでしょう。




宮本利男 男女間の交際は妊娠につながるという発想はおかしくないか?昔の男女だって、子供をなすだけのために愛し合ったわけではないだろう?




望月康太 でも妊娠する可能性は否定できないよね?それに根本的な疑問なのだけれど、なぜ男である君が女性を好きになるかが分からないんだ。確かに永田さんは美人だよ。でも、僕は彼女に欲情しないよ?そもそも健康な若い男子は男に欲情するものではないの?




宮本利男 俺の恋を単なる性欲と捉えないでほしい。それとも、君が河合を好きなのは単なる性欲だから、僕の恋もそうだと思うのか?




望月康太 僕の恋を馬鹿にするな。

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