8月25日(日)


 今日もどこにも行かなかった。


 またおなかがいたいってウソをつく。


 昨日、どきょうもつけた。


 後は、ぼくの気持ちや思いを恵美おばさんに伝えるだけ。


 でも、どうしても勇気が出ない。


 どうしても言葉が出ない。


『レンが笑ってくれない』


 ちがう。


『わたしではダメなのかもしれない』


 ちがう。


 ぼくは恵美おばさんを泣かせてしまった。


 ちがうのに。


 そうじゃないのに。


 でも、言ってしまったらきっときらわれる。


 きっとおこられる。


 家だって追い出されるかも。


 恵美おばさんにすてられてしまうかも。


 それだけはいやだ。


 恵美おばさん、大好きだもん。


 ぼくをちゃんとほめてくれる。


 ぼくをちゃんとしかってくれる。


 本当の子どもじゃないぼくを。


 また心の歯車がきしみはじめた。


 どうしたらいいのか分からない。


 勇気が出ない。


「レンにお手紙だ」


 おじいちゃんが手紙を持ってきてくれた。


 かわいく折りたたまれた小さな手紙。


『レンへ』


 きっとカッパさんだ。


 ゆうびん受けに直せつ入れてくれたんだ。


 ぼくは手紙を開いた。


『だいじょうぶだよ! がんばれ!』


 女の子らしいかわいいまるっこい字。


 カッパの女神様かな?


 カッパからはげまされたの、日本でぼくが初めてかも。


 うん、ちゃんと伝えよう。


 きらわれてもいい。


 すてられてもいい。


 今のままじゃ恵美おばさんをだましているのと同じかもしれない。


 心の歯車がもう一度ゆっくりと動き始めた。


 明日、恵美おばさんに伝えよう。


 ぼくの気持ちを。


 ぼくの思いを。



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