8月21日(水)


 朝、庭で恵美おばさんとラジオ体そう。


 体を動かして、目を覚ます。


 おばさんはとてもねむたそうだった。


 ねていてもいいんだけど


「レンといっしょに体そうしたい!」


 って言って、がんばって起きたみたい。


 恵美おばさんと体そうができて、楽しかった。


 ぼくは、そのまま昨日のかわらへ行ってみることに。


 カッパさん、いるかな?


「おはよっ!」


 カッパさんは今日も元気だ。


 今日は麦わらぼうしをかぶって、ピンク色のスニーカーをはいている。


 令和のカッパは頭にお皿がなくて、麦わらぼうしをかぶるんだなぁ。


「ぼうし、かわいいね」


 ぼくがそう言ったら、うれしそうに笑ってくれた。


「今日は山に行こうよ!」


 カッパさんの後をついて行って、山の中へ。


 東京にも大きな公園がたくさんあるけど、山の中はぜんぜんちがう。


 小川が流れていて、木が生えていて、虫が生きている。


 命がたくさんあった。


 自然って、そういう意味なのかな。


 よく分からないけど、そんな風に思った。


「カブトムシ、いたよ!」


 カッパさんが教えてくれた木を見ると、大きなカブトムシがいた。


 カブトムシを手に取るカッパさん。


 女の子なのにスゴいなぁ。さすがカッパ。


「ほら、持ってみて!」


 ビビるぼく。


 笑われちゃうかと思ったけど、そんなことなかった。


「虫、苦手だったんだね。山につれて来てゴメンね」


 あやまるカッパさんに、ぼくも勇気を出してみた。


「手に乗せるだけでもいいかな」


 にっこり笑うカッパさん。


「うん! 足がちくちくするし、もぞもぞ動くから気をつけてね」


 右手を広げて、カッパさんに差し出す。


 そっとカブトムシを置いてくれた。


 生きてる。


 ちょっとこわいけど、手のひらの上で動くカブトムシに感じた命。


 一生懸命生きてる。


 ぼくも生きてる。


「どうする、持って帰る?」


「ううん、かわいそうだから木にもどしてあげたい」


「レンはやさしいな」


 そういってカッパさんは、ぼくの手からカブトムシを取って木にもどした。


 その後もカッパさんのひみつきち(木で作っていてスゴくカッコよかった!)に行ったりして、たくさん遊んだ。楽しかった!


「明日もいっしょに遊ぼう!」


 カッパさんは、今日もぼくの鼻を指でちょんとさわって、どこかに走っていった。


 カッパのすみかは、川の中かな?






 ちゃんと笑えてるかな。


 楽しいことがカッパさんに伝わってるかな。


 心の中の歯車はカラカラいっている。


 まわっていない。


 歯車はもう外れているのかもしれない。


 どうしようもない。



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