夏の思い出日記 〜カッパさんとの夏休み〜

下東 良雄

8月20日(火)


 恵美おばさんといっしょに、お父さんのいなかに来た。


 大きなじしんがあったり、台風が来たりして、お盆の時期はすぎてしまったけど、恵美おばさんが仕事のお休みをズラしてくれて、来ることができた。


 いなかは、とてもカラフル。


 周りを見わたせば山の緑、空の青、雲の白、そして川はとうめいでキラキラ光っている。


 東京とちがうきれいな絵のような景色の中にぼくがいると思うと、とても楽しい気持ちになった。


 ぼくは家の近くを散歩。


 きれいな川の近くに行きたくて、土手をおりてみた。


 かわらを歩いていると、声をかけられた。


「こんにちは」


 ふり向くと笑顔の女の子がいた。


 黒かみのショートヘアで、ライムグリーンのTシャツ、カーキ色のスポーティーなショートパンツ、ブルーのビーチサンダル。


 活発そうな女の子。


「なにしてるの?」


「川がきれいだから近くで見たいなって」


「ふーん。名前は?」


「レン。君は?」


「カッパ」


「カッパ?」


「うん」


「カッパさん?」


「そうだよ」


 伝説の生き物は、女の子でした。


「東京から来たの!?」


 カッパさんは東京にきょうみがあるみたい。


 いろいろ聞かれたので、東京の話をした。


 いつか行ってみたいって言ってる。


 カッパが東京へ行く。


 騒ぎにならないかな。


 ならないか。見た目はふつうの女の子だもんね。


「レン、明日もいっしょに遊ぼうよ」


「うん」


「やったね! じゃあ、また明日ね!」


 カッパさんは、ぼくの鼻を指でちょんとさわって、そのままどこかへ走っていった。


 カッパさんと遊ぶ約束をした。


 いなかでできた友だちはカッパ。


 何だかスゴいって思った。


 明日が楽しみだなぁ。






 でも、ぼくの心の歯車は止まったまま。


 楽しい気持ちなのに笑ったりできない。


 あの日からずっとそうだ。


 でも、どうしようもない。


 どうしたらいいのかもわからない。



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