第15話 真の回想
真の部屋は一階の各自の部屋の端にあった。ラウンジとは同じ階だが、先程もいったように少人数なので、廊下にも人がいない。
部屋の中は、ベッドと小さな机、ポットなどホテルの一室のようだ。伊知郎の部屋と特に変わりはなかった。
彼の部屋は場所的には正反対にある。彼は二階の階段近く。彼の下の部屋は一階には葉子である。彼女も持病により部屋にこもっている。どうやら洋館で色々参加者に教えるに当たって、今は眠りについているかもしれない。
真は幼い頃に船に乗った記憶があるだけで、今回船に乗ることで、酔ってしまうのではないのかと心配していたのだが、伊知郎とは違って何の変化もない。
その事を考えると胸を撫でおろしながら、小さな机にノートパソコンを広げて立ち上げていた。
この離島で勉強会というのだけでも大きな記事になりそうだが、更に離島での過去、各々の占い師の過去にもいろんな文面が書けれるかもしれない。
天橋出版社を出しているオカルト雑誌は、一年前に発刊した時は小冊子で売っていたのだが、今や天橋出版社がもう一つ世に出している芸能雑誌の一部分でしかオカルト記事はない。
しかし、この三カ月にあかねとの数々の事件を解決したことで、真が書いた記事は読者に注目視されている。今やその芸能雑誌で、一番人気があるのは真が書いたコラムである。
その人気を維持するためにも、この離島での旅行はありがたいものであった。毎月ネタに困ってしまうものだ。
今朝六時に起床した後、朝食を取っていると、突如自分のスマートフォンからライン電話があった。相手はあかねからだった。
『つむぎの付き添いになってくれない?』
その言葉に全く理解が出来なかった。内容を聞くと何となくあかねが占いを嫌っているのを知った。いや、以前から彼女が占い嫌いなのは真も知っていた。
『あたし、未解決事件を解決するのは好きだけど、どうしてもオカルト的なものに興味が無いんだよね』
そんなことを以前口にしていた事を思い出す。
どうやら彼女は占いだけでなく、幽霊やUFOなんかも好きではない。それに驚いている人を見るのは好きらしいが。
なので、今回は真がつむぎの同伴として付き添うことになった。
早速、今回の件を記事にしていくのだが、タイピングを打っていた真は途中で手が止まった。
……そういえば、葉子の弟子、または弟子だった人は、伊知郎、くるみ、玉葉、響花の四人だったな。ということは残されたのは能美琢磨と、神門の二人。
能美はあのセクシーな神門に対して興味があるのだろうか。くるみやつむぎに対しては興味がありそうだが……。
すると、能美がつむぎに対して今夜のことでニヤついているのを想像しただけで吐き気がした。
あのピエロみたいに、三日月の形をした目の奥には何を考えているのだろうか。
そういえば、玉葉も能美も自分が未解決事件を追っているジャーナリストと言うと、一気に顔つきが変わったよな。
何か隠しごとがあるのだろうか。
未解決事件……。真はある程度の事件は知っているが、まだまだ謎に伸されている事件は多数ある。
あかねと仲の良い、菅栄一という五十代の細身の男性刑事は、この前、真を警視庁に招き入れた。
そして、いくつものポケットファイルを持って来ては、数々の未解決事件の概要を見せてくれた。真にとっては宝物のようなものだった。
もちろん、それを持って帰るわけにも出来ず、あくまでその個室では一時間だけでしか滞在は出来なかったが、世の中には数えきれないほどの事件があるのだと感心した。
その中に、能美たちが未解決事件に関与していたものがあったとしたら……。
まさかな……。
真は鼻で笑った。考えすぎだ。まず玉葉と能美とつながりがあるのかさえも分からないし、葉子も占い界ではトップクラスに成り上がったのも、単純なことではない。
事件とは言えないが、そこを探るだけでも十分、一つのコラムは完成できる。
その時、真はそんなことを考えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます