第14話 女性たちの会話

「何かさっきの人、飯野さんだけ見てましたよね?」

 つむぎはあっけにとられながら、真を見た。

「ま、まあ、僕が知ってたからじゃない?」

「でも、飯野さんもそんな深夜番組なんて観るんですね」

 つむぎはどこか嫉妬している様子に見える。それが真にとっては嬉しいことでもあるのだが……。

 小春は自分のスマートフォンをいじっていた。「まだ三時だよ。あと、三時間もある。それに何だかネットがつながりにくくなってきた」

「それは向こうの離島に着けば、通信回線はないから、圏外になるわ」

 そう言ったのは先程葉子の近くにいたくるみだ。

 彼女はポニーテールの髪形で、茶色の髪を染めていた。目は少し垂れ目でおっとりとしたイメージがある。どこかおっちょこちょいな性格なのかもしれない。

「え? それじゃあ、向こうではテレビも何も観れないんですか?」

「ええ、そうよ」くるみは小春の隣に座った。「あたしももう三年経つけど、今のご時世、どこに行ってもインターネットは見れるもんね」

「それが、見れないなんて、何という場所なんですか!」

 今更になって小春はこの勉強会に参加したことを後悔していた。

「多分、あなたたちに色々と話してくれてた占い師さんたちが言ったかと思うから、ご存じでしょうけど、この勉強会は本当に霊感を鍛えるために葉子先生がプロデュースをした場所なのよ。だから、あなたたちにとっては楽しくないかもしれない」

「そんな……」

 小春は学校の授業中でもスマートフォンを手に持っては隠れてマンガを見ている。それくらい彼女にとってはスマートフォンを手放せないでいる。それが約一日も見れないなんて発狂しそうだった。

「ところで、笹井つむぎさんは、先生からの推薦で今日勉強会に参加するってことで、将来は占い師になるの?」

 くるみは穏やかな表情で言った。この中で自分が一番年上だろうと思って接していた。

「あたしはその、正直そこまで占い師になるなんてまだ考えてないですし、何といってもお姉ちゃんがそういったものがあまり好まなくて……」

「へえ、しっかりしたお姉さんね」

「姉は私立探偵をやってまして、物事の好き嫌いがはっきりしてるんです。それでいてワガママで正義感も強いから、目上の人に対してケンカしてしまう性格なんです」

「へえ、頼もしいじゃない。そんなお姉さんがいたら、占いなんてやらなくて済むわね」

「くるみ先生は、どうして占い師をやり始めたんですか?」

「私は、元々精神的にそれほど強い性格じゃないのよ。今でも葉子先生がいないと何もできないし……。それで、占いを通じて自分を強くなりたいと思ってね」

「へえ、ということはスピリチュアルとか良く知ってるんですか?」

「ま、まあね。それに、あたしは石にこだわってるの。そこら辺の石も何かしら力が宿ってるけど、何億年前から培ってきた石というものは力があるし、それに奇麗だしね」

「へえ、それで、ピアスもされてるんですね」

 つむぎがくるみの耳を指摘すると、真もその方向を見た。くるみの両耳には小さな赤色の天然石のピアスが輝いていた。

「ああ、これはインカローズっていって、情熱の石なのよ。特に恋愛に対して突き進みたいという時に、この石を身に付けると、情熱的になるのよ」

「へえ、くるみ先生は、好きな人がいるんですか?」

 小春は身を乗り出して聞くと、くるみは顔を赤くした。

「いや、何言ってんの。私は好きな人はいないわ」

「とか、何とかいって、本当は伊知郎さんが好きなんじゃないですか?」

「伊知郎さんとは関係ありません。それよりもあなたもさっきの龍馬さんじゃなくて、別の男性が現れるってカードに出たから、その方向に向かって、このインカローズという石をお勧めするわ」

「どこに売ってるんですか?」

「葉子先生の洋館にたくさんあるわよ。いろんなアクセサリーがあるから。もちろんお金はかかるけど……」

 ……何だか、三人で石など女性が好みそうな話で盛り上がっているなと真は半ば退屈だった。これなら先程の神門についていって、仲良くなるべきだった。

 真は立ち上がると、つむぎは聞いた。

「飯野さん、どこか行くんですか?」

「ああ、ちょっとトイレに。その後、用意してもらった自室で執筆するよ」

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