第10話 気味の悪い占い師
「仕事は、今は順調だが、これからは低迷していく。恋愛に限っては遠距離恋愛の方が向いていると出てるな」
能美は自分の人差し指で真の掌に触れて皺を確認している。だが、今までたくさん見てきた経験なのか、わずか五秒ほどで、この発言をした。
「へえ、遠距離恋愛なんて、ドラマチックよね」
と言ったのは小春だ。彼女は両手を組んで目を閉じてときめいていた。
「遠距離か……。僕は近くでいいんだけどな……」
と、真は苦笑いを見せた。
「まあ、占いではそう出てる。他に聞きたいことは?」
「後はないですね」
真はこれ以上この能美に占ってもらおうとは思わなかった。何故なら完全に自分に対して興味が無さそうに無表情なのだ。これほど顔に出る人物も珍しい。
「じゃあ、今度はつむぎちゃんを見よう。ほら、手を出してごらん?」
再び能美は鼻の下を伸ばすようにニヤニヤと笑った。
つむぎは身体を後ろにそらして言った。
「私はいいです。見てもらわなくても……」
「でも、手相も覚えた方が占いのレパートリーが増えるよ。僕が教えてあげるよ」
「いえ、まずは全員の占い師の人たちに会ってみたいですし、話をしてみたいし……」
つむぎはわざと能美の顔見ない。
「そう言わないで、ほら手を出す」
そう言って、能美はつむぎの両腕を掴んだ。
「能美さん。ここにいたのね」
現れたのは響花という、黒髪の目つきが怖い女性だ。
「葉子先生が厨房の方を手伝って欲しいって言ってたわよ」響花は右の親指を立てて、後ろの厨房の方に差した。
「何だよ、あのオバハン。面倒くせえな。今いいとこなのに……」
そう暴言を吐きながら、能美は立ち上がった。
「つむぎちゃん、向こうに着いたら、後でじっくりマンツーマンで教えてあげるからね」
そう笑いながらウインクを見せて、彼は厨房の方に向かった。
響花は能美が座っていたソファに腰かけた。
「ありがとうございます」
つむぎは響花に向かって頭を下げた。
「いいのよ、別に。それよりもあなたたちご飯は食べたの?」
そう言われて、真は思わずお腹が鳴りだし、かすかに聞こえてたつむぎは笑いを堪えていた。
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