第4話 助手の出番

「何で、断らなかったの?」あかねは強い口調でつむぎに言い放った。

「だって、とても言えるような状況じゃなかったもん」

 夕食になってから、ようやくつむぎはあかねに今日の占いでの出来事を話した。帰宅してすぐには話したくはなかった。何故なら、あかねは占いの話になると聞きたくもないような素振りを見せるからだ。

『占いなんて、ただのお遊びだよ。もし、それで嫌なこと言われたらどうするの?』

 二階は元々マンガ喫茶だった。店長は年配の人で、良くあかねが利用していた。つむぎも別にマンガが嫌いなわけではない。しかし、彼女はどちらかというと活字の方が好きだったので、あかねと一緒で尚且つ時間があれば訪れるほどだった。

 しかし、マンガ喫茶は店を閉めてしまった。元々あかねたちがここに事務所を開いた時にお世話になった人だったので、なおさらショックだった。店を閉めた原因は、パソコンもないマンガ本だけが置かれてある喫茶店は時代遅れなのだろう、利用客はここ数年でほとんど訪れることはなかった。

 その後に、“シックスセンス”という店が出来た。最近出来たチェーン店の占い屋だ。あかねからしてみたらマンガは好きだけど、占いは嫌いという、相当な恨みがあるらしい。

あかねはため息を漏らした。「とても言える状況じゃないって……。それに命の危機があるっていう言葉なんて、ただの脅しだと思うけどね」

「あたしもそう思ってるんだけど、どこかあの人が言ってることが本当じゃないかなって感じるんだよ」

「どうして?」

「何となく。嘘ついてるように見えなかったから……」

 あかねは茶碗に入ってある白米を全て平らげて、皿を片付けた。「あんたが言うならそうじゃない。でもね、命の危機があるなんて、モラルに反したこと言う奴は大した人間じゃないよ」

「それはそうだけど……。それで、もう一枚チケットがあるけど、どうしよう……」つむぎは困った様子であかねを見る。

「もう一人のミーハーな女の子は何て言ってんの?」

「内田さんのこと? 内田さんは無料で離れ小島に行くことに楽しんでる。だってこれ見たら」そう言って、つむぎはパンフレットをあかねに見せた。

 そこには“豪華客船! 色んな占い師たちが無料で占って差し上げます”そう書いてあって、その勉強会に行くであろう人物たちが勢揃いしていた。名前も書いてある。

 次のページは奇麗な洋館が写し出されていて、大きなベッドと豪勢な料理、笑顔のシェフの写真、広々としたラウンジ。まるで何百人もいても可笑しくはないほどの贅沢な旅行だった。

 あかねは思わず行ってみてもいいかもと、心が揺れた。何故なら豪勢な料理にはホールケーキの写真とアワビやサザエなどの貝類の料理の写真もある。思わず生唾を飲み込んだ。

「……まあ、とにかく、このパンフレットの写真を見て行きたくなったってことね」白々しくあかねは足を組んで、パンフレットを机の上に置いた。

「お姉ちゃんもこういうの好きじゃない?」上目遣いでつむぎはあかねに問う。

「あのね、あたしは食べ物は好きだけど、そこに占い師が絡んでくるのが好きじゃないんだよ。それにこれだったら菅さんにレストランで奢ってもらえば食べれるし……」

「また、強がりを言っちゃって」

 つむぎは肩をすくめて笑ったが、その後にため息をついた。「でも、どうしよう。もう一人誰か来てくれる人いないかな」

「仕方がないわね。あたしの助手に付き添ってもらうよ」あかねは腕を組んだ。

「助手ってもしかして……」

「そう、謙虚すぎてちょっと挙動不審だけどね」

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