第15話
僕が家に帰ると、母が待っていたかのように出てきて、僕に飛び掛かってきた。
「ごめんなさい楓珠、アンモライトのことをまだ気にしてない?私、石の良さとわからないから、高そうな石を買ってきたんだけど、まさかあんなに怒るとは思わなくて。ごめんなさい。」
「かぁさん、やめてよ。
博物館の人もいるんだから。
それに、もう怒ってないよ。
あの時はジェードを失った悲しみでキツく当たっちゃったけど、僕は石をもらうだけで嬉しいから」
僕は恥ずかしくなって、母の手から逃れると、スタッフさんに、
「送ってくれてありがとうございました。
久雄さんに伝えてもらえるでしょうか。
永遠に絆は繋がっているよ……と」
「了解。そう伝えておくよ。
そして久雄さんからの伝言。
私はまた山にいるだろうから、いつでも寂しくなったらおいで、だそうだよ。
よかったね」
僕はその言葉を聞くと満足して笑顔で帰っていくスタッフさんに手を振った。
母は何が起こっているのかさっぱりわからないという感じで、黙ってその光景を見ていたが、スタッフさんがいなくなると、周りに置いてある本の量に驚き、そして、僕の手にあるダイヤモンドに驚いた。
「どうしたのこれは。一体どこにいっていたの?」
僕は、今まであったこと全てを話した。
母は、初めは変なものを見るように聞いていたけれど、だんだん話の内容がわかってくると、段々頷きながら話を聞くようになった。
僕が話し終えると、母は、
「そんなことがあったんだね。
じゃあその久雄さんっていう人が風樹を色々な面で何度も支えてくれたんだね」
と言って、涙ぐんでいた。
そして、大量の本と僕を見ると、家の中へせっせと運び始めた。
僕も加わって二人で中に入れ、十五分ほどで全ての本を家の中へしまい込んだ。
ひと段落すると、母が、
「これは、私たち家族からの誕生日プレゼントだよ。お誕生日おめでとう、楓珠」
と言って、小さな箱を僕に渡してきた。
僕がその箱を開けると、中には小さなサファイアがあった。
確か、サファイアの石言葉は誠実という意味だったはずだ。
母は満足そうな顔で僕を見つめていた。
「綺麗でしょう。楓珠ってば、さっき何を聞いても何も言ってくれなかったでしょう。
だから、楓珠は石が好きだから、昼間に宝石店に行ってきて、一番綺麗だったものを買ってきたの」
そう言って僕に、その石の反応を求めてきた。僕は素直に、
「めっちゃ嬉しいよ。
今日は久雄さんからも母さんからも、一生記憶に残るような誕生日になったよ。
本当にありがとう」
その言葉に母は笑みを浮かべ、
「満足してもらえたようで何より。
ただし、これからは、自分の部屋は自分で綺麗にしてよね。
また間違って捨てちゃわないように」
そう言って、台所を片付けるために、キッチンへと向かっていった。
僕は、自分の部屋に戻り、この二つの思い出の石を、粗末に扱うのは申し訳ないからだ。
十五分ほどで片付けが終わり、二つの石を置くスペースが確保できた。
そのスペースに二つの石を置くと、なんだかさっぱりしすぎていて、落ち着かなかったので、他の持っている石も並べ、ちょうどいい感覚をとった。
僕は十分にそのスペースを見て満足すると、風呂に入るために、部屋を出たのだった。
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