第11話

 家に帰ると、母が、質問攻めをしてきた。


「どこに言ってたの?

 しっかりと説明するまで、部屋に入れないからね、こんな時間までも霜のことも考えて行動してよね。

 もし誘拐されたらどうするの?

 楓珠は周りを見ないことが多いから、周りに迷惑をかけたらどうするの?」


 とまぁ、こんな感じだ。

 僕は、彼女とのデートで疲れていたので、


「ちょっと友達と遊んで来ただけだよ。

 誰にも迷惑はかけていない」


 と言って誤魔化した。

 母は納得していない様子だったが、もう何もいう気にはなれなかったらしい。

 黙ってキッチンへと言ってしまった。


 僕は、部屋に戻ると、久雄さんからもらったサンストーンを眺めていた。

 しばらくその石を眺めていた後、他人事のように、


「この恋愛、うまくいくといいなぁ」


 と呟いた。

 おそらくキッチンにいる母も聞こえてなかっただろう。


 僕はしばらくその石の模様を見て、ここが綺麗だとか、この角度から見ると光り方が綺麗だとか、たくさんの特徴を見つけて暇を潰した。


 夕方五時になると、母が、


「五時ですよ。風呂へ行ってらっしゃい」


 と言ったので、僕は仕方なく石を机の上に置き、風呂へ入った。


 風呂から上がると、母は新聞を読んでいた。

 僕が、洗面所が空いたことを伝えると、少し顔をあげ、


「そう。」


 とだけ言ってまた新聞に目を落とした。機嫌が悪い時の癖の一つだ。


 特に話すべきことはなかったので、自分の部屋に戻り、また石を観察することにした。


 しばらく観察していると、母が、「ご飯にする」と行っているのが聞こえたので、また石を置いて、今度はリビングへ向かった。


 いつもならご飯を食べていると、新聞の話題や、僕地震の話題、そして、母の話題で話が盛り上がるのだが、今日は、母も僕も何も言わず、黙々と食べた。


 食べ終わると、僕は食器を運ぼうと席を立った。すると、


「本当は誰とどこへ行っていたの?」


 母は、ボソボソと僕に質問をした。

 あまりにも聞き取りずらかったので、僕は聞き直そうかと思ったが、あえて聞こえていなかったことにしようと思った。

 ここで聞き返してしまえば、また質問を浴びせられるのだろうと思ったからだ。


 そして冬が来て、春がきた。

 僕たちは、たまにデートをしたり、彼女の誕生日には、プレゼントをあげたりして楽しい時間を過ごした。

 そして、彼女と会うときは、必ず、久雄さんにもらったサンストーンを持って行った。


 そして卒業式、僕たちの関係は、自然消滅した。理由は二つある。

 一つは僕らの村では、中学になると三つのグループに分かれることだ。


 一つ目は僕のような学校に近い人たちで構成されたグループ。

 このグループは、小学校の隣にある中学校へ進学する。


 二つ目は、学校から遠いところに家があるグループ。

 この中には、日和ちゃんも含まれている。

 このグループは、僕たちがいく中学校とはまた別の学校に入学する。


 そして最後、三つ目は、受験をして、遠くへ行ってしまうグループだ。

 このグループは三人ほどしかいないが、その代わり、僕たちの学年の中で、トップクラスに頭がいい人たちで構成されている。


 そして、別れた二つ目の理由として、僕が久雄さんに度々相談に行っているのを日和ちゃんに見られてらしいのだ。

 日和ちゃんは、僕が彼女のことを全て久雄さんに話しているのかと疑ったのだ。

 実際は、大体は世間話で終わってしまうことが多いのだけれど、たまに、彼女とん関係性についてどこまで発展しているのか聞かれる時がある。

 それを、彼女に聞かれてしまったのだ。


 その翌日、日和ちゃんは、不機嫌だった。

 僕はまさか聞かれているとは思わず、なぜ不機嫌なのかわからなかったので、彼女に質問をした。


「なんで久雄さんに私のこと言っちゃうの?

 私だって勝手に私のこと話されると、はずかしいんだからね」


 と言って怒って見せた。

 その日はなんとか宥めたけど、その日以降、久雄さんにその話を振られても、またすぐ別の話題に変えて、話をするようにした。


 しかし、その一回は、彼女を怒らせたらしい。

 その日から、彼女と僕の関係性は、だんだん悪化していった。


 僕と日和ちゃんは、こうして、自然と彼氏彼女という関係は、消滅したのだった。

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