アンダルサイトとサンストーン
第6話
久雄さんとの再会から、二ヶ月あまりが経過していた。
僕は、ある一つの壁に直面していた。
それは、愛の壁だった。
僕に、好きな人ができたのだ。母には恥ずかしくて、まだ言えていないけれど、僕は、彼女に何かプレゼントを渡そうと考えた。しかし、なかなかいい物が見つからず、僕は、途方に暮れていた。
その彼女の名は、
僕は、彼女に一目惚れをしていたのだった。
そんな時、ふとアイデアが浮かんだ。
ちょっと恥ずかしいけれど、久雄さんに話を聞いてもらおう、という案だった。
母に相談するよりは久雄さんの方が話しやすいからだ。
母は多分、僕に好きな人ができたと言ったら、興奮して、質問攻めに合うだろうという未来が、読めていたのだ。
逆に、久雄さんなら、質問攻めに合うことがなく、かつ良いプレゼントを考えてくれるだろうと思った。
僕は早速、食べ物を持って、山へ出かけた。なぜ食べ物を持って行ったかというと、毎日、山の植物を食べて生活をしていると、たまには、加工品などの食材が恋しくなるのではないかと思ったのだ。
僕は、山に入ってから、三十分ほどで、久雄さんの家を見つけた。
しかし、中に入ってみると、そこには誰もいなかった。
仕方なく、僕は二ヶ月前に博物館へ行った道を通って博物館へ向かった。
なぜ同じ道を通って言ったかというと、向かってる最中ですれ違いになり、会えなくなることを避けたかったからだ。
僕は、博物館に着いた。
この場所にもいなかったらどうしようと思っていると、スタッフ用の部屋から久雄さんが出てきた。
「あれ、どうしたの?
またお母さんと揉め事かい?」
久雄さんは、二ヶ月前と同じような格好をしていて、同じような口調で言った。
けれど、今回は家出をして来たわけではなかったので、事情を簡単に説明して、アドバイスを求めた。
すると、久雄さんは、意外にも簡単な問題だとでもいうように答えた。
「アンダルサイトかアレクサンドライトを渡せばいいんじゃないかな。
女の子は、結構石言葉を気にする人が多いから、無難なものを渡すよりも、喜ばれると思うよ。
それに、楓珠くんの気持ちをうまく言い表せられるからね」
僕はそこまで聞いて、やはり、この人に聞いて正解だと思った。
なぜそんなことも思いつかなかったのだろう。
石を渡すのであれば僕も、たくさん候補を考えられたのに。
「よし、楓珠くんのために、私のアンダルサイトのかけらをあげよう。
その彼女を大切にするんだよ」
久雄さんはそう言って、僕にアンダルサイトをくれた。
翌日、僕は、日和ちゃんを学校の校舎裏に呼び出し、想いを伝えた。
「これが僕の思いです。受け取ってください」
といって、僕はアンダルサイトを渡した。
彼女は、戸惑いながらも受け取ってくれた。そして、
「ありがとう」
と、可愛らしい声で言った。
僕はその言葉で、恥ずかしさで顔を赤らめてしまっただろう。
もしかしたら、体から湯気が出てしまっていたかもしれない。
僕はそのまま、恥ずかしさで黙って帰ってしまった。
その時の彼女の顔を僕は知らない。
もしかしたら彼女も、僕と一緒で、顔を赤らめていたのかもしれない、そう思いたかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます