1の17 村長
【ミッドベル村、村長の家】
天気は曇りだった。どうやらこの世界でも空が曇ることがあるようだ。ミリアはまだ遭ったことが無いが、雨も降るのかもしれない。
翌日、蛇神様のクエストを発生させるために三人で村長の家に行った。クエストを最初に見つけたシュウジだけは発生済みである。
玄関でミリアが「ごめんください」を言った。家の中から「入って良い」と返事が来る。三人で上がらせてもらう。
村長は初老であり白髪である。オデコは広く、髪がはげ上がってきている。銀のフレームのメガネをかけており、いま紙タバコを吸っているところだった。
ミリアが先頭に立って話しかけた。
「おはようございます、貴方はこの村の村長さんですか?」
「おお、『勇者』じゃないか。それも、これはこれはべっぴんさんだのう」
「ありがとうございます」ミリアはにんまりと笑みを浮かべてシュウジを振り返った。
「村長さんのメガネが曇っているんじゃないか?」とシュウジ。
「ひどっ」とミリア。
村長が三人の頭上にある名前を見た。「わしはゲンユウと言う。ミリア、シュウジ、ハルオ。お前さんたち『勇者』に頼みたいことがあるんじゃが、聞いてくれんかのう?」
「良いですよ!」
ミリアははきはきと返事をした。ドンッと効果音が鳴り、目の前に文字が表示される。
――人食い大蛇を討伐せよ――
……クエストが出たわね。
……今日は頑張らないと。
村長は紙タバコを灰皿でもみ消すと「どっこいしょ」と言って立ち上がった。こちらを向く。
「この村の山にはな、蛇神様と呼ばれる人食い大蛇が住んでいる。山の主だ。頼む、討伐してきて欲しい」
「マジかよ! 大蛇なんて、俺たち勝てるかなあ」ハルオが弱音をもらしている。
「その大蛇は魔性の生き物でな。月が好きで、月の夜に山に現れる。カサドの木の燃えた匂いも好物だ。月夜の晩に、ミモネ山の山頂で木の枝を焚けば現れるだろう。お主たち、カサドの木は知っているか?」
「いえ、知りませんが」とミリア。
「ではカサドの木のところまで案内しよう。今から着いて来れるか?」
「どこにあるんですか?」
「なに、すぐそこじゃい。着いてこい」
「分かりました」
「では行こうかの」
ゲンユウが歩き出して、家の玄関を出て行く。三人はその背中に続いた。
空がゴロゴロと鳴ってきていた。これは一雨来るかもしれないとミリアは心配になった。傘は持っていない。
降らないことを願いつつ、ゲンユウが歩く方向へとついて行く。村の東出口を出て、それからずいぶん歩いた。モンスターが出たらゲンユウは立ち止まり、ミリアたちが前に出て倒した。
彼女は不安だった。
……すぐそこって言ってたのに。
……このおじいさん、ボケてきているんだわ。
隣を歩くシュウジが警鐘を鳴らすように言った。
「おいミリア、この辺って、闇落ちのアジトが近いんじゃなかったか?」
「そうですよね、どうしましょう」食堂の女将さんが言っていた情報をミリアも覚えている。
「闇落ち! マジかよ! そんな奴らが出てきたら、殺されちまうぜ」とハルオ。
「大丈夫大丈夫、村長のわしがいるからの。闇落ちの連中はびびって出てきたりせんわい」ゲンユウがぬはははと陽気に笑った。
「なら良いですが……」とミリア。
「……」シュウジが黙り込む。その顔つきは険しい。
「ゲンユウさん、闇落ちの連中が来たら叱り飛ばしてくれよな!」とハルオ。
「おーう! 任せろい」とゲンユウ。
【ミッドベル村の東、ギルド『闇落ちフェス』のアジト】
やがて、赤茶色い屋根をした大きな建物が見えてきた。ゲンユウは「こっちじゃ」と言ってその建物の玄関に歩き、扉を開く。しゃがれた声を張った。
「おーい! カサドの木の枝を、取りに来たぞーい!」
三人が首を傾げて待っていると、中から黒いローブの人間たちが現れる。先頭にいるのはなんとヨウイチだった。ミリアも見たことがあった。
腹がでっぷりとした巨躯の図体。大きな鼻に、肉質のある唇。両手には金貨袋を持っている。
「おう、ゲンユウ。これは報酬だ」
「おーう、言われたとおり、シュウジとかいう『勇者』とその仲間を連れてきたが、あの若造で合っているかな?」ゲンユウがこちらを振り向いた。
「どんぴしゃだぜ! 全員! シュウジの仲間を捕まえろ!」
「「へい!」」
黒いローブの人間たちが大勢出てきて、三人を包囲しようとする。
「罠だ!」シュウジが顔面蒼白だ。ロングソードを抜いて前に出る。
「帰還の札を!」ミリアはそう言って、ステータスを呼び出す。
「な、何々、何なの一体? 何何何?」ハルオは状況が分からずに戸惑っている。
「おらあっ!」黒いローブの一人がミリアの背中を蹴っ飛ばした。
「アウッ!」前のめりに倒れるミリア。
「「捕まえろ捕まえろ!」」敵たちが勢いづいて叫んだ。
あれよあれよと言う間にミリアとハルオが羽交い締めにされた。シュウジは助けてくれようとしたのだが、ヨウイチのダガーに阻まれた。
ヨウイチは両手を大きく広げた。
「ハアッハアー! 弟よ! お前の大切な物、また奪ってやるぜー! 今夜は宴だあ!」
「くそっ。兄さん、どうして俺を狙う!?」
「当たり前だろうが! シュウジ、お前は俺の弟だからだ。弟の物は俺の物だ! 捕まえた女と男はぁ、『闇落ちフェス』に加入させる。悔しいのう、悔しいのう、シュウジ悔しいのう。お前だけ逃がしてやってもいいぜ、へっへっへっへ」
「殺す」シュウジが歯をガチリと噛み合わせる。
「殺す!? お前周りをよく見ろよ。囲まれてっぞう?」
「くそっっ」シュウジが眉をひそめた。
「シュウジさん、逃げてくださいです!」ミリアは泣き顔で言った。
「お、おお、俺は? 俺は一体どうなるの?」ハルオの顔がぶるぶると震えている。
「ミリア、ハルオ、いま助けるぞ!」シュウジが叫ぶ。
「シュウジさん!」一際大きなミリアの声。
彼女が続けて言う。「もっと強くなって、助けに来てくださいです。いつまでも、いつまでも、私たちは待っていますです!」
「ミリア……」シュウジの瞳が潤んだ。
ヨウイチが口を開く。「さあ、どうするぅ~? 可愛いシュウジよ」
「ヨウイチ、俺はお前を許さない!」
シュウジがステータスを呼び出した。中から帰還の札を取り出す。
「おーい!? 許さないとか言って、帰っちゃうのー? これからミリアちゃんは、大変な目に遭っちゃうぜー? 裸にひんむかれて、男たちにちょめちょめされちゃうぞー? シュウジ、良かったな! 最高だな! 人生の春だな!?」
「……使用」
シュウジが青白い光に包まれてワープした。
その場に残されるミリアとハルオ。黒いローブたちに連れられて、建物の中に入っていく。
地面にシトシトと音が鳴っていた。ついに雨が降ってきたのだ。雨は勢いを増して大雨となる。
……まるで今の私たちの心模様のようです。
◇◇◇
名前 シュウジ
レベル 11
HP 1100
攻撃力 38
防御力 38
素早さ 33
魔攻 11
魔防 38
運 0
ステータスポイント 100
アクティブスキル 『ウインドアサルト』『シールドエンチャント』『ダークネスブロー』
パッシブスキル 無し。
セットスキル スロット1『ウインドアサルトLV2』
スロット2『シールドエンチャント』
スロット3『ダークネスブロー』
ユニークスキル 『思考力』
武器 『ロングソード(攻撃力+5)』
防具 『皮の帽子』『皮の鎧』『皮のグローブ』『皮のベルト』『皮の靴』(合計 防御力+5 魔防+5)
スキン 平民服セット
ペット 月夜のニャン太郎
選択中の変身モンスター メリーグーテル
◇◇◇
◆◆◆
恐れ入ります。作者はこの小説で、本気でプロを目指しております。お手数ですが、以降読み進める際に以下の作業をお願いします。フォロー ☆☆☆ レビュー ♡応援 応援コメント をいただきたいのです。作者のモチベーションUPと維持のため。この小説を幅広い読者に読んでいただくため。プロになるため。よろしくお願いいたします。
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