1の10 ハルオ



 【ミッドベル村宿屋】



 あれから二日が経った。シュウジとミリアは宿屋の食堂で朝食を一緒に摂るのが日課だった。手早く食べ終えると、彼は食堂を出ていつもの草原へ行ってしまう。


 狩りをしてレベルを上げるためなのはもちろん分かっている。しかしミリアはため息をついた。



 ……食事の時間ぐらい、もう少し会話をしてくれてもいいのに。

 ……シュウジさんは自由気ままですね。



 ミリアはテーブルの席で、ゆっくりと食事を摂っていた。今日は何をしようか? 草原に行ってシュウジと合流することもできる。


 いま彼女はギルドについて気にかけていた。ステータス画面で手に入るギルドの情報はすでに目を通した。


 例えば一週間に一度、光曜日にギルドイベントがある。ギルドに所属している者たちはギルド対ギルドのPVPに参加できる。そのイベントでは『勇者』が死んでもバトルフィールドから弾かれるだけで死ぬことはないようだ。


 ギルドイベントに参加することにより、ギルドポイントがもらえる。それを使うことにより、乗り物を強化できるらしい。勝てば、賞金と賞品も出るようだ。

 

 乗り物はどこで手に入るのだろうか? ミリアはまだ持っていなかった。


 当面のミリアの目標は、とにかくギルドメンバーを集めることである。メンバーが多くないと、PVPに参加しても勝つことはできない。



 ……よし!

 ……今日は勧誘をしよう。

 ……それが上手く行ったら、シュウジさんと合流しよう。



 最初のメンバーは男が良いだろうか? 女が良いだろうか?


 男だったら、イケメンが良い。そう思ってしまうのは女性として当然である。


 ちなみにシュウジの顔は清潔感のあるハンサムである。背がすらっと高く、体格は細めだ。ミリアとしては、大当たりの部類の男性であり、好みでもある。


 女だったら、話しやすい人が良い。マウントをとって会話を独占するようなオラオラ系の女はごめんだった。


 パンとおかずを食べ終えたミリアはコーヒーを飲みきる。食器をテーブルにそのままにして宿屋を出た。勧誘をするために、広場へと足を向ける。



【ミッドベル村、ペットモンスター小屋前】



 道を歩いていると、前方から女性の悲鳴が聞こえてきた。なんだろうと思い、ミリアはそちらへと足を向ける。


 茶髪の『勇者』の男性が女性に土下座をしていた。男性の手元には弓がある。弓使いだろうか?


 うら若い『住人』の女性はひどく困った顔をしている。



「お願いだー! 裸を見せてくれ! 一度で良いから、裸を見せておくれ! 前世で俺は、女の裸を生で見たことが無いんだー!」


「困ります! 帰ってください!」


「この通りだ! 拝む拝む拝む! ちょっと裸を見せてくれるだけでいいんだー。この場で脱いでくれー!」


「何を言っているんですか貴方! 変態ですか!?」


「俺はもう死ぬんだ! 闇落ちに殺されるんだ! その前に頼む! 一回だけ、君の裸を見せてくれ! そしたら死んでも、安心して成仏ができるよー!」


「帰ってください!」


「頼むよー! 頼むよー!」



 ミリアは二人の前で立ち止まった。そして苦虫を噛みつぶした気分になった。男の言い分はめちゃくちゃである。


 めんどいが、横から口を挟むことにする。



「貴方、わいせつ罪で捕まるですよ?」


「誰だお前!? お、お前! 何だその服は!?」と茶髪の男。



 ミリアのスキンはピンクのお姫様ドレスである。金髪ロングであり、お人形のような可愛らしい姿だった。見る者にとっては、威圧感を与えるだろう。


 ミリアは男のHPバーを見た。名前、ハルオ。レベル、6。



 ……こんな男だったら、ギルドに勧誘したくないですね。

 ……さっさとどこかへ行ってもらおう。



 ミリアは『住人』の女性に声をかけた。



「どうしましたですか?」


「それが、いきなりこの男が来て、私に裸になれって」


「変態ですね」


「助けてくれませんか?」女性は涙目である。


「この村にも警察がいれば良いんですが」


「残念ながら警察はいません」


「うーん……」ミリアは両手を腰に当ててうなった。


「お、おいミリア。その格好からしてお前、もしかして、超強いんじゃないのか?」とハルオ。


「いきなり呼び捨てにしないでくださいです!」とミリア。


「ミリア、さん。超強いのか?」ハルオが弓を持って地面に立つ。


「私は強くありません。でも、超強い友達ならいるです」


「本当かい? それって、『闇落ちフェス』の団長よりも強いのかい?」


「それは分からないです。戦ったことが無いんで。それより貴方、超キッモいんで、どこかへ行った方が良いんじゃないですか?」


「キモい? それって気持ち良いの略かい?」


「何を言ってるですか?」


「わ、分かった。君のそのドレス、信じるよ。どうか俺を仲間にしてくれ!」


「お断りします」


「え、なんで!?」


「貴方みたいな変態男はごめんなさいです」


「何でも言うこと聞くよ。それこそ犬のように聞くよ。豚のように引っぱたいても、文句を言わないよ」


「帰れ!」とミリア。


「ターゲットロックオン! ミリアさんの仲間になるぞー!」


「友達を呼んで殺してもらうですよ?」


「それは勘弁してください!」腰を深く折るハルオ。



 ミリアはため息をついた。ハルオのことはもう無視することにする。『住人』の女性の方を向いて声をかけた。



「貴方。ここは何屋さんですか?」


「はい。ここはペットのモンスター小屋になります」



 ドンッ、と効果音がして、ミリアの目の前に文字が浮かび上がる。



 ――乗り物のペットを入手せよ――



 ミリアはびっくりした。クエストの表示が出ていた。自然と両目が大きくなる。


 女性の後ろにはロープで囲まれた柵があり、たくさんの大きな動物がいた。犬や猫もいるのだが、それらの体格が人間よりも大きい。乗り物として利用するには丁度良い大きさだった。



「ペットを売っているですか?」


「はい。ペットは種類によって値段が違いますが、一番安い猫で金貨一枚となっています」


「お金で買うんですか?」


「はい。お金で買えますが、手懐けるにはテイムの実が必要になります」


「テイムの実はどこで採れるですか?」


「テイムの木は、暗くてじめじめしたところに生えています」


「暗くてじめじめ?」


「はい!」


「もっと詳しく情報を聞きたいです」


「聞きたいですか? では、一分間情報を話すのに、大銅貨一枚になります」


「……それもお金ですか」


「はい」


「俺が払うよ。はいこれ! 大銅貨二枚で二人分! 払ったからね!」ハルオが女性の手に大銅貨を二枚握らせた。


「あ、あー……」女性がげんなりと顔をしぶらせる。


「あー……」ミリアは疲れたため息を吐いた。


「ほら! 払ったんだから、情報を教えてくれよ! テイムの木は、どこにあるんだい?」


 女性がしぶしぶと言った。「テイムの木は、ミモネ山の中腹にある洞窟の中に生えています」


「ミモネ山ってどこだい?」とハルオ。


「……この村の北にある山です」と女性。


「分かった! ありがとう! さあミリアさん、テイムの実を一緒に採りに行こうじゃないか!」


「えー……」とミリア。


「何だよ!? えーって?」


「とりあえず、シュウジさんにもこのクエスト情報を教えないと」


「シュウジって誰だい? あ、分かった。さっき言ってた、超強い友達かい?」


「……はい」


「よし! そしたら、俺とミリアさんと、そのシュウジくんとの、三人で採りに行こう!」



 ハルオはやる気満々である。ミリアは困ったことになったと思い、ここに来たことを少し後悔した。



 ……だけど、クエスト情報を手に入れたです。

 ……シュウジさんに伝えたら、喜んでくれるかも。



 ペット小屋の女性に挨拶をして、ミリアは歩き出した。向かっているのはシュウジのいる草原である。後ろからはハルオが着いてきていた。



「貴方、ついてこないでくださいです」ミリアは前を向いたまま言った。


「どこまでも着いて行くぞ! わんわんわん! わおーん!」


「はー……」ミリアは切ない気分になった。



 ◇◇◇


 名前  ハルオ


 レベル 6


 HP  600

 攻撃力 71

 防御力 18

 素早さ 18

 魔攻  6

 魔防  18

 運   0


 ステータスポイント 0


 アクティブスキル 『バーニングアロー』『ブリリアントレイン』

 パッシブスキル  無し

 セットスキル   スロット1『バーニングアロー』

          スロット2『ブリリアントレイン』


 ユニークスキル  『絶対障壁』


 武器  初心者の弓(攻撃力+3)


 スキン 平民服セット



 ◇◇◇





 ◆◆◆


 恐れ入ります。作者はこの小説で、本気でプロを目指しております。お手数ですが、以降読み進める際に以下の作業をお願いします。フォロー ☆☆☆ レビュー ♡応援 応援コメント をいただきたいのです。作者のモチベーションUPと維持のため。この小説を幅広い読者に読んでいただくため。プロになるため。よろしくお願いいたします。


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