1の9 ギルド



 【ミッドベル村の通り道】



 閑散となった村道を、シュウジはミリアと並んで歩いていた。向かっているのは北出口である。これからまた草原で狩りをするつもりだった。


 ふとミリアが声をかけて立ち止まった。



「シュウジさん、ちょっと待ってください」


「どうした?」シュウジも立ち止まった。ミリアに顔を向ける。


「お話があるです」


「話?」


「はい、あの」下を向いて両手を合わせるミリア。


「ああ」


「あの、あのー」顔をほんのりと赤くしている。


「おう」シュウジは少し緊張した。


「ギルド……」


「ギルドがどうかしたか?」


「ギルドを作りませんか? 私たち」ミリアは顔を上げた。


「それはいきなりだな」


「私はいつもいきなりなんです」ミリアははにかんだ笑顔を浮かべる。



 シュウジは顎に右手を当てた。そして考える。


 すぐに答えが出た。ユニークスキル『思考力』のおかげかもしれなかった。彼は人嫌いである。



「別に作っても良いんじゃないか?」


「本当ですか? じゃあ、シュウジさんも……」


「ただ、俺は入らないけどな」


「ど、どうしてですか?」


「俺は人嫌いだ。ソロの方が性に合っている」


「人嫌い? 前も言っていましたよね?」


「ああ」


「どうしたら入ってくれるんですか?」


「入らないと言っているが?」


「今ならシュウジさんを副団長にして差し上げますが?」


「団長はお前がやるのか?」


「はい。やります」


「……聞いて良いか?」


「はい!」


「ミリアはどうしてギルドを作ろうと思ったんだ?」



 ミリアが不安を顔に滲ませる。顔を俯かせて、唇を引き結んでいる。そんな彼女を見て、シュウジは思った。



 ……ミリアは『闇落ちフェス』が怖いんだろうな。

 ……だから仲間同士のコミュニティが欲しいと言ったところか。



 ミリアが顔を勢いよく上げる。一生懸命、熱弁をくれた。



「三人寄れば文殊の知恵って言いますよね。みんなで情報交換をし合えば、ゲームをスムーズに進めることができるはずです! それに『闇落ちフェス』が襲ってきても、助け合うことができると思います! それにそれに、ギルドに入れば、ギルドコンテンツを遊べると思うです! ギルドでしか遊ぶことのできないキャラクターの強化要素もあると思うんです! それに、ギルドバトルもあるかもしれないです!」


「……それは、確かにな」



 ギルド所属者のみの強化要素があるとすれば、シュウジにとって魅力的だ。ギルドバトルについても、勝てば賞金や賞品があるかもしれない。強くなるためには、入った方が良いのだろうか?


 シュウジはまた考えた。ハズレスキルが光った。すぐに答えが出る。



「入っても良い。だが条件がある」


「条件って、何ですか?」ミリアは嬉しそうに口角を上げた。


「まず、俺は言った通り人嫌いだ。だから、メンバーとコミュニケーションを積極的に取ったりはしない」


「はい」


「それと、俺は基本、ソロか少人数でしか行動しない」


「はい」


「それでも良いなら、ギルドに入るが?」


「かまいません」


「分かったよ、ミリア」


「やった!」ミリアはその場で小さく飛び跳ねた。



 彼女がステータスを呼び出して操作した。ギルドの設立を今するようだ。



「シュウジさん、ギルドの名前は何にしましょうか?」


「それはお前が決めてくれ。お前が団長なんだから」苦笑するシュウジ。


「『無敵のシュウジ様』にしましょう」


「おいやめろ」


「もう入力したです」


「マジか?」


「確定を押したです」


「やっぱり入るのをやめようかな」


「……嘘ですよ?」



 ミリアが自分のステータス画面を見せてくる。画面にはギルドが設立されていた。


 

 ――ギルド名、『あるりなみーみ』



 シュウジは聞いた。



「『あるりなみーみ』ってどういう意味なんだ?」


「意味なんてありません」大きめの胸をでんと張るミリア。


「意味の無い名前なのか?」


「意味のある名前なんて、めんこいじゃないですか」


「めんこい? 言葉の使い方が間違っている気がするが?」


「めんどいじゃないですか?」


「まあ、分からなくはない」


「名前に意味なんて、無いぐらいが丁度良いんですよ」


「ふーん」眉をぴくぴくとさせるシュウジ。


「どうしましたか?」


「いや、少し見直した」


「そこは惚れ直したと言いましょうよ」


「そもそも惚れてないからな」


「惚れて良いですよ?」


「一生惚れないことにする」


「ガーン」


「惚れて欲しいのか?」


「もちろんです」


「無理だな」


「私を捕まえてごらんなさい」


「逆方向に歩いて行くわ」


「私に惚れてごらんなさい」


「謹んでお断りします」


「……惚れなさい」


「それは団長命令か?」


「いえ、個人的なお願いです」


「無理だ」


「ガーン」


「逆にお前が俺に惚れれば良いんじゃないか?」


「惚れて良いですか?」


「いや、ちょっと困るかも……」


「困るんかい!」



 二人はステータスのフレンド項目を操作して、フレンド登録をした。ミリアからギルド招待の申し込みが送られてくる。シュウジは加入した。



 ****この世界に名を馳せることになるギルド、『あるりなみーみ』の誕生だった****







 ◆◆◆


 恐れ入ります。作者はこの小説で、本気でプロを目指しております。お手数ですが、以降読み進める際に以下の作業をお願いします。フォロー ☆☆☆ レビュー ♡応援 応援コメント をいただきたいのです。作者のモチベーションUPと維持のため。この小説を幅広い読者に読んでいただくため。プロになるため。よろしくお願いいたします。


 ◆◆◆


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