1の7 お姫様気分



 【ミッドベル村広場】



 村に戻ると、時刻はお昼過ぎだった。二人で食事をしようということになる。広場にある大衆食堂へと歩いて向かった。


 それにしても、ミリアは人目を引いていた。可愛らしいお姫様ドレスを着ているからである。その色はピンクということで、よりいっそう目立つことに拍車をかけていた。


 まるで異世界恋愛もののアニメから出てきた貴族令嬢のような姿である。そしてミリアの顔は化粧もしていないのに綺麗だ。花の咲いたような美人である。


 彼女は機嫌良くふんふんと鼻歌を歌っていた。シュウジとしても鼻が高い思いだった。


 大衆食堂に入る。すでに昼を過ぎているからだろうか、他に客はいなかった。

 

 テーブルの席に対面で腰を下ろし、ミリアがメニューをめくる。イノシシ肉と野菜の炒め物、それにパンとスープを注文することにしたようだ。シュウジも同じ料理を選んだ。


 ミリアがカウンターに声をかけてくれた。青いエプロンを着た女将さんがやってくる。シュウジが二人分の注文を済ませた。


 その後、シュウジはステータスを呼び出して、お姫様ドレスのスキンカードを他人に売る方法を探した。ミリアが声をかけてくる。



「シュウジさん、このドレス、本当に売っちゃうですか?」不安そうな顔である。


「当然だろ。売って強い装備を手に入れた方が良いからな」


「売らない訳にはいかないでしょうか?」


「じゃあ、お前が買うか?」シュウジはぶっきらぼうな口調である。


「い、いくらですか?」頬をひきつらせるミリア。


「金貨50枚で手を打とう」


「……高すぎ!」



 ミリアが泣きそうな顔をしていた。着ている間に、服をとても気に入ってしまったようだ。シュウジは彼女にドレスを着せたことを少し後悔した。



 ……この辺のところは、やっぱり女の子なんだな。



 ミリアは両手を膝につき、顔を俯かせて何か考えているようであった。ふと思いついたのか、強気の笑みを浮かべて提案をする。



「シュウジさん、いつかお金を払うってことで、私に売ってくれませんかね?」


「本気で買うのか!?」シュウジはびっくりとした。


「はい。買います」


「お前、俺に50金貨の半分を支払うのか?」


「半分で良いですか?」


「二人で取ったからな。報酬は半分ずつだ」


「あー……ええっと、もう少しまけてくれませんかね?」


「んー……」シュウジは両腕を胸にくんだ。


「ダ、ダメですか?」


「今、ステータス画面に取引所とオークションを見つけた。どちらにもスキンカードを出品できるみたいだ」


「ひ、ひいっ!」


「どうした?」


「このドレスは、他人には売りません!」ミリアは両手でテーブルを叩いた。ドンッ、と音が鳴る。



 食堂のカウンターの方から、店の女将さんがオボンに皿を運んできた。テーブルの上に料理の載った皿を並べる。



「痴話喧嘩かい? 二人とも」と女将さん。


「シュウジさんが私の服を売ろうとしているんですぅ」ミリアは泣きそうな顔である。


「おい! 俺を悪者にするな」焦ったような声のシュウジ。


「あらあら、それはいけないねえ。シュウジさん、女の子にとって服は命なんだから。売っちゃダメだよ」と女将さん。


「そうそう」コクコクとミリアが頷く。


「おい、何か話が変な方向に行ってないか?」シュウジは顔をひきつらせた。


「二人とも、今日はデートかい?」気を遣ったのか、女将さんが話題を変えてくれた。


「はい! そうなんです!」満面の笑みのミリア。


「違うからな、そこ」シュウジはそう言ったが、まんざらでも無かった。


「そうかいそうかい。それじゃあ楽しんでいってね。追加注文があったら、また呼んでおくれよ」女将さんはそう言って下がっていく。


「はい!」ミリアがはきはきと返事をした。



 シュウジはため息をつきつつ「いただきます」を言って食事にとりかかる。イノシシ肉は弾力があり、甘みがあって、ソースによく絡んだ。料理は熱々であり、久しぶりにシュウジはすごく美味しい食事を摂った。


 ミリアが両手で腕を抱きしめている。服を守ろうとしているような様子だ。そんなことよりも熱いうちに料理を食べれば良いのにとシュウジは思った。



 ……まあ、確かにドレスはミリアに良く似合っている。

 ……俺としても、平民服よりはドレスを着ていて欲しい。



 それから黙々と食器を動かす二人。会話は弾んでいないのにシュウジはどこか良い気分だった。その理由はやはり、華やかなドレスをミリアが着ているからであろう。


 二人が食事を食べ終えた頃である。広場いる人間たちが緊張したような顔で動き始めた。何かを怖がっているように慌てている。



 ……何が起きたんだ?



 シュウジは窓から人々を眺めていた。広場に黒のローブを着た集団がやってきた。そして、人々に問答無用で襲いかかり始めた。






 ◆◆◆


 恐れ入ります。作者はこの小説で、本気でプロを目指しております。お手数ですが、以降読み進める際に以下の作業をお願いします。フォロー ☆☆☆ レビュー ♡応援 応援コメント をいただきたいのです。作者のモチベーションUPと維持のため。この小説を幅広い読者に読んでいただくため。プロになるため。よろしくお願いいたします。


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