1の5 お友達



 【ミッドベル村の北出口からほど近い、草原地帯】



 シュウジは狩りをしていた。レベルが上がりステータスが上昇している。敵を倒すことができるようになっていた。


 そして、スライムの体当たりを受けてもそれほどダメージは無い。よくよく注意すれば、攻撃を回避するのも難しくなかった。


 『シールドエンチャン』を使うと、体に盾のマークが四つ浮かび、くるくると周囲を回る。敵のダメージを軽減することができていた。


 『ウインドアサルト』で敵に突進し、攻撃した後で距離も取れる。突進距離は5メートルほどである。


 最初、シュウジがスキルを唱えても発動しなかった。疑問に思い、ステータスをいじってみると原因が判明した。アクティブスキルはスロットにセットすることで、使用が可能になるのだった。


 スロットの数は六つ。アクティブスキルをいくつ覚えても、戦闘で使用できるのは六つだけである。

 

 戦闘中にスキルを付け替えることができるのではないか? そう思い『ウインドアサルト』をセットして一度はずし、再度セットを試みた。すると『ウインドアサルト』の使用には一時間のクールタイムが発生してしまった。


 セットする六つのスキルは厳選しないといけないということである。とは言うものの、シュウジはまだ二つしかアクティブスキルを覚えていない。六つ以上ものスキルを覚えるのはまだまだ先の話であった。


 モンスターを倒すと銅貨を落とした。銅貨はすぐに地面から消失する。そして倒した者のステータス画面に銅貨が入手される仕組みだった。


 休憩を入れながら、三時間も狩りをしただろうか? レベルはまた二つ上がり、7になっていた。ステータスを開くと、時刻は午後の五時を回っている。


 彼は千以上の銅貨を入手しており、ステータスの中で大銅貨や銀貨に変換された。銅貨千枚につき、銀貨一枚の価値があるようだ。日本円にすると、銅貨は一円玉、銀貨は千円札といったところである。


 ステータスを閉じて、シュウジはまた狩りを再開する。


 マポリンという青いクラゲのようなモンスターが近くにいた。マポリンは時々ビリビリと電気を放ち、近寄る者に電気ショックを与えてくる。彼は電気ショックがやんだ時を見計らい、何度も蹴りを放った。


「キシュゥ」という不気味な鳴き声を上げてマポリンが地面に沈む。赤い光となって消え、銅貨を落とした。ふとシュウジは背後に視線を感じて振り返った。



「誰かいるのか?」



 長い金髪のミリアがすぐ近くにいて、しゃがんだまま股を開いている。太腿の隙間から、白いパンツが覗いて見えた。女性に免疫の無いシュウジはすぐに顔をそむける。


 そんなシュウジの様子を見て、ミリアはクスクスと笑った。どうやら彼をからかっているようである。すぐに彼女は股を閉じた。



「私は魔女っ子ミリアなのです」


「ミリア、そこで何をしているんだ?」辺りのモンスターを警戒しているシュウジ。


「モンスターを狩るシュウジさんに見とれております」


「暇なのか?」


「いいえ、シュウジさんの鮮やかな蹴りさばきに感動しています」


「そうか。だけど危ないからどこかへ行ってくれ」


「危険が危ないということでしょうか?」


「……すまん、何を言っているのか分からない」


「一つ質問があるです」


「何だ?」


「シュウジさんは、童貞ですか?」


「なっっ!? 何を言って!?」



 シュウジはとても慌てた。前世の死ぬ間際に、「まだ童貞なのに」と言葉を残したほどである。彼は女の子とエッチをしたことなんて無かった。



「な、なななな、何を言ってるんだお前は!」


「焦ってる焦ってる。シュウジさんは童貞っと」


「う、うううう、うるさいな! これだから人は嫌いだ!」


「人が嫌いですか?」


「ああ、大嫌いだ。ミリア、お前も狩りをしに来たのなら、せめて俺の邪魔をしないでくれ」


「かしこまりました」


「ああ、分かったのなら、もう少し俺から離れてくれ」


「かしこみりあした」


「……何語だそれは?」



 シュウジは一瞬だけ途方に暮れた。彼女は何をしに来たのだろうか?それを聞いてみる。



「ミリア、本当に何をしに来たんだ?」


「ちょっとお邪魔しにきたです」ほくそ笑むミリア。


「お前も俺と一緒に狩りをしたいということか?」眉をひそめるシュウジ。


「邪魔しに来たです」ミリアが口角を上げて笑う。


「お前は俺に何か恨みでもあるのか?」


「お邪魔虫です」


「頼むから普通に会話をしろ!」



 シュウジはため息をついた。これでは一向に狩りを再開できない。仕方無いので切り上げることにした。


 金も貯まったことだし、武器屋と道具屋へ行こう。剣を手に入れれば、狩りの効率が上がるはずだ。シュウジはミリアを無視して村の入り口の方へと歩いた。


 後方から足音が着いてくる。ちらっと振り返るとやはりミリアだった。



 ……まずいな。

 ……懐かれたのかもしれない。



 村に入ると、シュウジは立ち止まった。ミリアが近くに来て、隣に並ぶ。頬をほんのりと染めている彼女。


 シュウジはうんざりとして聞いた。



「ミリア、俺に何か用事があるんじゃないのか?」シュウジはまた冗談の返事がくると思って身構えた。


「お友達になりたいです」上目遣いのミリア。


「断る」シュウジは目を細めた。


「ど、どうしてですか?」焦ったようなミリアの顔を声。


「俺は人嫌いだからだ」


「魔女っ子ミリアの私がいれば、きっと役に立つはずですよ?」


「役に立つって、例えば何だ?」


「肩をもんで差し上げます」


「間に合っている」


「太腿をもんで差し上げます」


「特に凝ってないな」


「時々ちらりとショーツを見せます」


「ダメだ、こいつ早く何とかしないと」


「か、回復魔法を使えるです」


「ウェルカムだ!」



 シュウジがミリアの肩にぽんと手を置く。かすかな友情が芽生えた瞬間だった。


 二人は並んで歩き出す。向かっているのは武器屋である。


 その店で、シュウジはロングソードを買った。銀貨一枚と大銅貨二枚の値段がした。


 大銅貨は一枚で、銅貨百枚分の価値である。日本円で言うところの百円だ。


 盾も売っていたが、彼は買わなかった。余計な装備は回避の邪魔になると思ったからである。


 ミリアは先ほど手に入れたラピスの装備の仕方も教えてくれた。シュウジはステータス画面でロングソードにそれをはめ込む。スロット1のランクが上がった。


 その後、道具屋にも行った。店員のオッサンに情報を聞き出す予定だったのだが、その必要はもう無い。シュウジが分からないことのほとんどをミリアが教えてくれたからである。


 例えば『勇者』と『住人』の違いだ。この世界に来る前に、女神が選択の権利を与えた役割である。


 シュウジとミリアは『勇者』だった。道具屋のオッサンや民家に住んでいる人たちは『住人』のようだ。


 『勇者』はHPバーを無くして死ぬと、この世界から消失する。しかしモンスターから攻撃を受けても怪我をしないし痛みも感じない。何も食べなくとも、餓死することもない。空腹感はあるようで、それを満たすためには食べる必要があるようだった。睡眠欲や性欲もあるようだ。もちろん満たさなくとも死ぬことはない。


 代わって『住人』は、死んでもまた同じ村にリポップできるということだった。その代わり、攻撃されると傷が出来たり痛みがあったりする。三大欲求は満たさなければいけなく、トイレで排泄行為をする必要もあるようだ。


 道具屋で、シュウジは帰還の札とポーションと解毒剤を買った。帰還の札の効果は、使うと最寄りの村の広場にワープできるというものである。彼は品物をステータスにしまった。



 ◇◇◇


 名前  シュウジ


 レベル 7


 HP  700

 攻撃力 26

 防御力 21

 素早さ 21

 魔攻  7

 魔防  21

 運   0

 

 ステータスポイント 60


 アクティブスキル 『ウインドアサルト』『シールドエンチャント』

 パッシブスキル  無し。

 セットスキル   スロット1『ウインドアサルトLV2』

          スロット2『シールドエンチャント』


 ユニークスキル  『思考力』


 武器  『ロングソード(攻撃力+5)』


 スキン 平民服セット


 ◇◇◇





 ◆◆◆


 恐れ入ります。作者はこの小説で、本気でプロを目指しております。お手数ですが、以降読み進める際に以下の作業をお願いします。フォロー ☆☆☆ レビュー ♡応援 応援コメント をいただきたいのです。作者のモチベーションUPと維持のため。この小説を幅広い読者に読んでいただくため。プロになるため。よろしくお願いいたします。


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