第5話 二番街

なんとか4つ腕を3体倒し、私達は武器と防具を一式揃え、二番街に行くための準備が整った。


「武器と防具を同時装備してるから、特殊効果が付いたね」

「え?でも、そんな実感は無いんだけど…」

「まあ、アンデッド系モンスターから気持ち狙われにくくなるだけだし」

「…意味ある?」

「ぶっちゃけない」


無いんかい!

なんの役に立つのこの防具?

正直、産廃でしかないんだけど…


とりあえず変化を確認すべくステータスを見てみる。


◆名前 神宮小春

種族 ヒト

職業 学生・拳闘士

レベル2

スキル《格闘術》

装備 防具『骨』

   武器『骨』

   セット効果 隠密小・アンデッド



◆名前 赤森莉音

種族 ヒト

職業 学生・戦巫女いくさみこ

レベル2

スキル《格闘術》

   《法術》

装備 防具『骨』

   武器『骨』

   セット効果 隠密小・アンデッド


中々にステータスの絵面が凄いことになってる。

武器と防具の両方が『骨』なんだもん。

ほんとに強いのコレ?


「一番街で手に入る2つの防具の内、強い方の防具。その性能は防御+10」

「…それって強いの?」

「もう1つの防具が+5だからね。十分だよ」

「……そこで聞いても分かんないよ」


ステータスとは、あくまでレベルとスキルと職業を表示するもの。

ゲームのようなわかりやすい数値でその強さは表せないらしい。

だからこそ、この10と言う数字が何処までなのか分からない。


「そうだなぁ…まあ、防弾チョッキくらいの防御力はあるよ」

「それだけ?」

「それだけ、って…これから行こうとしてる二番街は確かに一番街より危険。だけど、モンスターの戦闘力は一般人域を超えはしない。だから、ホントはこんな装備無くても良いんだけどね?」

「え?じゃあなんでこんな面倒な事を…」

「怪我したくないんだよ。一般人の域を出ないとは言ったけど、じゃあ一般人に思いっ切り殴られたらどうなる?」

「まあ…アザが出来るかな?」


殴られたらアザが出来るし、最悪骨折する。

でも、それが怖いの?


「二番街に出てくるモンスターは、その程度の力を持ってる。加えて噛みつき攻撃もしてくるし……一般人に本気で噛まれたらどうなる?」

「まあ…最悪出血程度じゃ済まないかも」


あんまり想像できないし、したくもないけど、肉がごっそり持っていかれる可能性だってある。

そう考えると…確かに防具は大事かも。

さっきだって何度も噛みつかれてたし…


そんなことを考えていると、莉音が私に近づいた来て、人差し指を立てながら話す。


「今説明した通り、ちょっとでも負傷の可能性を下げる為にも防具は必須。チュートリアルダンジョンだからって甘く見ちゃいけない。私達にとってモンスターはお小遣い稼ぎの道具でも、モンスターにとって私達は絶対に始末すべき侵入者。相手は本気で殺しに来てるんだからね!」

「はい…」

「分かったらいいよ。さあ、二番街に行こうか」


そう言って、莉音は目の前のデカイ門を指差す。

墓地から割と近い位置にあった大きな門。

このまちは街全体が高い壁に覆われていて、出入りに使えそうなのはこの門くらい。

そして、この門の向こう側が二番街何だとか?


「そこにある棒が2つ見えてる丸いやつ。それを回すと門が開く仕組みだから、一緒に回すよ」

「回るの?私達だけの力で」


見たところ、かなり重そうな門だ。

私達だけの力で開けられるのかな?


「大丈夫だよ。見た目以上に軽いから」

「ホントに?じゃあ行くよ。せーのっ!!」

「ふぅ〜〜ん!!!」

「んん〜〜!!」


かなり重い。

抱えられるくらいの大きさの石を持ち上げあるくらい重い。

…でも、2人で動かせないほど重くはない。

何なら棒を押して倒すだけでいいから楽だ。


「あと…少し………開いたっ!!!」


2人で力を合わせて回転…開閉機?を回して門を開けることに成功。

そして見えた二番街の景色は、一番街とそれ程変わらなかった。

違うところがあるとすれば…


「なにあれ…ゾンビ?」


見えたモンスターが、スケルトンではなくゾンビだった。

ゾンビって……一般人程度の力ってそういう事!?


「肉があるから一般人程度の力…ってこと?」

「そう。ゾンビは骨だけで軟弱なスケルトンと違って、しっかり肉を持ってる。だから一般人並の力が出せるんだよね」

「…なんかキモイ」

「まあ、アンデッド系モンスターだからね。見た目はキモイよ」


キモイ見た目のアンデッド。

…遠目から見ても分かる、アイツ腐ってる。


「ねぇ…あれ噛まれたらゾンビになるとか無いよね?」

「無いけど…大抵腐ってるから、放置したらゾンビの仲間入りだよ?」

「…その為の防具?」

「そう。ゾンビ程度なら正直脅威にはならないんだけど…問題はあいつらが病原菌の塊で、超不潔って事」


なるほど…感染症になるかもって事か。

噛まれたらゾンビになる…なんて、パニック映画みたいな展開は無いけれど、適切に処置しないと病気になって死ぬ。

そしてあいつらの仲間入りと…それはヤダなぁ…


「確かに無駄に分厚くて堅いこの防具なら噛みつかれても無事かも…」

「ね?だから取りたかったんだよね。この装備」


なんとなく装備を取りたかった理由を理解した私は、莉音の前に出て拳にはめた頭蓋骨を打ち鳴らす。


「この、正直ガントレットと呼んでいいのか怪しいガントレットで、ぶっ飛ばしますか!」

「傍からみたら全身に骨まとって拳に頭蓋骨つけてるヤバい人だよ。小春」

「それは莉音もでしょ?さあ行くよ!」


遊んでる暇はないんでね。

私は莉音を連れて走り出すと、視界に映る全てのゾンビを倒すべく拳を握りしめた。

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