第4話 最初の武器と防具

「よし、じゃあ取りに行くよ!」

「もう休まなくていいの?」

「うん。十分休んだからね」


元気になった莉音は、起き上がって私の手を引く。

結構じっくり休んだから、私も元気100倍。

再度墓地へ乗り込みいざ決戦。


「目標は4つ腕の撃破。1体でも倒せたらすぐに退くよ」

「オーケー」


墓地の入口で軽く準備運動をしてから4つ腕の位置を確認。

一番近いのはアイツか…


「じゃあ…行くよ!」


莉音の掛け声と共に走り出し、4つ腕目掛けて群れに突っ込む。

さっきとそんなに変わらない動きだけど…さっきとは違う。


「ははっ!これは凄いね!!」

「この疾走感…これが冒険者!」


スケルトンをワンパンできる事に違いはない。

でも、動きが格段に良くなった!

スピードが違うんだよね。

さっきは1秒か2秒倒すのに掛かってたけど、今は1秒も掛からずにスケルトンを倒せる。

なんだったら、1秒で3体くらい倒せてるかも。


「あとちょっとで4つ腕のところに行けるよ!踏ん張って!」

「踏ん張るのは莉音だよ!私は全然余裕」


ノンストップでスケルトンを粉砕しながら前に進み続けた。

そんな事をすれば、私達はスケルトンの群れに囲まれる訳で…

後ろから襲われたので、前を莉音に任せて私が後ろの敵を掃討していると、莉音が叫ぶ。


「倒した!小春!切り開いて!!」

「了解!!」


4つ腕を倒したらしく、莉音は私に逃げ道を作るよう頼んできた。

迫りくる骸骨共を蹴散らし、飛び散った骨で道を作る。

あっという間に突破に成功し、また墓地を出て同じ家屋へ逃げ込んだ。


「…で?なんで持ってきたの?」

「抽出するからだよ。知ってるでしょ?4種類の抽出」


抽出ちゅうしゅつ


ボスモンスターやレアモンスターと呼ばれる特別なモンスターには、抽出と言う作業が行える。

その抽出は4種類あって、そのモンスターにちなんだ効果を持つ武器を手に入れられる『武器抽出』、そのモンスターにちなんだ効果を持つ防具を手に入れられる『防具抽出』、そのモンスター武器防具を強化するのに必要な素材を手に入れられる『素材抽出』、魔石を確定で手に入れられる『魔石抽出』の4つ。


モンスター1体から1つの抽出しかできず、私達が武器防具を揃えようと思うとあと3回は4つ腕を倒さないといけない。

…あと3回は同じ作業をするのか。

面倒くさいな。


「どうする?どれから取る?」

「まあ、防具じゃない?今武器を取っても意味無いし」

「そうだよね〜。じゃあ、防具取るよ」


どうせ武器が無くてもワンパンなんだ。

なら、先に防具を取ったほうがいい。


私はステータスと似たようなウィンドウに表示された4つの選択肢のうちの『防具抽出』を選択する。

すると、4つ腕の体が光に変わり、その光が私の体を包み込む。

防具に変わっているんだろうけど、果たして…


「……は?」

「ぷぷっ…」


光が消え、完成した防具を見て私は思わず声を漏らした。

出来上がった防具は骨の鎧。

比喩でも何でも無く、本当に骨の鎧。

もっと詳しく言うと、大小様々な骨を糸で結んで繋ぎ合わせ、隙間をできる限り埋めて作った、“骨だけ”で出来た鎧。


「…ダサくない?」

「いや〜…ダサイとは知ってたけど、実物はまさかこれ程とは…ふふふっ」

「知っててこれ取ろうって言ったの!?正気!?」

「いやぁ…だって一番街で手に入る2種類の装備のうち、優秀なのがこっちなんだもん」


世の中には、亀みたいに骨が進化の過程で変形して甲羅のようになり、それが鎧みたいな生物はいるけれど…これはそんなものじゃない。

犬に取ってこ〜いって投げるようなあのザ・骨を沢山繋いで、すだれみたいにして作った鎧――と呼べるかももはや怪しい鎧。

しかも凹凸があるせいで地味に当たって着心地悪いし、しっかり脚や腕まで覆われてるから動きにくいし…何なのこのゴミ。


「これが一番街で取れる装備。シリーズ名は『骨』だよ!」

「…だけ?」

「うん。それだけ。ちなみに抽出元のモンスターの名前はレアスケルトン。レアモンスターだね」

「何もかもがダサくない?」

「ハッキリ言ってゴミ。産廃。骨粉にしたほうがマシなレベル」


めちゃくちゃ言うじゃん。

じゃあ何でもこんなに頑張って取ろうとしてるわけ?


「なんでコレを取らなきゃいけないの?」

「予算が足りないんだよぉ…どっかのバカが私がバイトしてお金貯めてって言ったのに、無駄な運動ばっかりして貯金しなかったせいでぇ…」

「…莉音だってバイトしてないじゃん」

「最近はね?事前講習と登録料に必要なお金だけ貯めて辞めたの。頑張って半年で40万貯めたんだからね?」

「それはありがとう。冒険者として大金を稼いだら、将来は一緒に一戸建てに住もうね」


どうせ私は莉音と結婚する。

だから、今からお金をためて一等地に3階建てくらいのマイホームを建てるんだ。


「将来の話はまた今度ね。それよりこの装備を取ろうとしてる理由がわかったでしょ?本来ならせめて二番街には行ける装備を買ってから行くのが定石なんだけど…そんなお金ないんだよ。私達」

「私は片親だし、莉音は兄弟多いもんね」

「そう。小春が一生懸命バイトしてくれたらいい装備が買えたのに…」

「ごめんって」


莉音に触れて謝ろうとするけれど、骨が邪魔で動きにくい。

…マジでゴミだなこの装備。


…てか、全身骨で覆われてるわけだけど、これどうやって脱ぐの?


「ねえ…これどうやって脱ぐの?」

「ストレージに入れるんだよ。着る時はストレージの中にある『骨』をタップして、着るってボタンを押せばいい」

「あ、脱げた」

「ね?」


ふぅ…これでだいぶ身軽になった。

動きにくくて仕方なかったんだよね、あの装備。

なんとかして二番街に行って、まともな装備を手に入れないと…


…と言うか、この装備を着てあと3回やらなきゃいけないの?

むしろこれ要らなくない?


「…今から装備取りに行くのにこれ使う?」

「いや、使わない」

「脱いだままでいい?」

「うん。正直機動力が落ちて話にならないから、脱いでて」


悲報、頑張って取った装備要らなかった。

なんとも言えないがっかり感を感じながら、私達は同じ作業を3回繰り返す。

ちなみにレアスケルトンのドロップアイテムは、普通のスケルトンを倒した時に手に入る骨よりもちょっと大きい骨。それだけ。

たまに魔石がドロップするらしいけど…3回とも全部骨だった。

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