鶏国

第1話 お国のために

この略奪は、ニワトリ国にとって大きな挑発行為になりました。それと同時に、大きなダメージにもなったのです。今まで国民全員が共同で積み上げた弱々しいけれど立派なものが、一瞬にして根本から崩壊したのです。家具の配置や片付けを終えたコリンはいくつかの銭貨を持って買い出しに出ました。道は街灯は倒れ、ゴミやガラスの破片、煉瓦が散らばっていました。そして行きつけの店につき、とうもろこしパンと水を買いました。帰りには、行きつけの食事処に。食事処では片付けを終えた年老いた真っ黒の主人と、とさかのかわいい若い鶏がいました。コリンは「ウジもちを3つ。いきなりイタチが略奪に来たわけだから、あまりウジは大きくなくていいさ」と言いました。主人は生きたウジ入りのもちを3つトレーに乗せてきて、カウンターに置きました。「こっちからも、ちょうどいい年頃の鶏が軍鶏として召集されるそうだよ。そうだな、お前は標準年齢より少し若いから、戦争に少し爪を深めた頃合いで招集されるだろう。うちの子は指定年齢よりずっと下だから、かなり深入りしないと召集されん。その前にわしは戦場で死んでいるだろう。」もちをつつきながら「いいえ、我が国の軍鶏はかなり強い。今度こそ、勝ちます」しかし，言い終えた直後に兵士が店に入ってきた。「コリンさん、招集命令です。関西地方が攻撃されました。こちらも、イタチ国に攻撃を開始します。お国のために。」コリンは，「鶏こく、万歳」と言いながら、立ち上がった。兵士について行き、列車に乗る。そしてついたのは王国の兵隊訓練場。教官が「これが今日からお前の相棒だ！使いこなせ！」と、コリンに鎧と脚につける棘を渡しました。棘の先端は鋭く尖っていて、イタチの分厚い皮膚を切り裂きます。そして、戦いに出されるまでに過ごす寮の鍵も渡されました。まずは訓練。訓練場ではイタチの写真が貼られた丸太が何十とあります。兵士たちは合図を出されると次々に走って丸太へ走ります。コリンはイタチの写真の腹を狙い、目を細めて舌なめずりをしました。そして一気に、嘴で写真を切り裂いてそのまま駆け抜けたのです。すぐにUターン。背中を取り、後頭部を狙ってキック。イタチの写真が剥がれ落ちましたが、コリンはやめません。がつがつがつと、丸太を嘴で削って行きます。戦場では、イタチは動いて攻撃してくる。だから、練習ではスピードとどれだけ強靭で早く仕留められる攻撃をするか、という訓練をします。数分後、丸太は無惨な形になり、周りには木の屑や割れた破片が散らばっています。さて、寮はというと2段ベッドが二つある寝るだけの寮。いよいよその翌日になると、コリンは戦場へ行くように、と指示されてヘリコプターに乗りました。まだ今は午前2時。奇襲を仕掛けるのです。バババババババ…ものすごい速さで鶏国を離れ、イタチ国の港にふんわりと着陸したヘリコプター。コリンはドアを開け、暗い草原を走ります。他の兵士も続く。目を細め、松明の光を頼りに相手の群を見つけます。しばらく走ると、静寂に包まれた場所でイタチの兵士たちが眠っていました。次に、別の兵士…パラが前に出て、眠っているイタチに近づきました。もうお互いの攻撃の射程範囲内です。パラが嘴を振り下ろすと、イタチはカッと目を開けて右によけ、パラの首に噛みつきます。キー、キーと金切声を上げながら。鎧で守られているとはいえ、体重ではむこうが上。一撃で仕留めなければいけなかったのです。その仲間たちも起き出します。その数は何百にも及びました。イタチはそのまま爪でパラを地面に押さえつけ、無防備な腹に噛みつきました。パラは一度足を蹴り上げましたが、空を蹴るだけでした。そしてその足は、ぐったりと地面に落ちたのです。イタチは次々に集まってきて、ガツガツとパラを食べ始めました。固唾を飲むコリン。そしてもう一人の兵士が飛び出したと同時に、それは反撃の狼煙になりました。わーっ、とイタチと鶏がぶつかります。コリンはひときわ大きなイタチに目をつけ、飛びかかりました。イタチは柔軟な体で反応し、いともかんたんにすぐに避けます。コリンは，「今のは完全に後ろをとっていたし、ジャンプの音さえしなかった。なぜ避けられたんだ！？」と考えましたが、イタチの冷酷な目に見つめられ、我に帰りました。暗闇の覇者はそっち。油断はできません。脚につけた鋭いナイフを一瞥し、回し飛び蹴り！イタチはジャンプで後ろによけ、余裕顔。しかし、今回はコリンが一枚上手でした。イタチが避けるのを予想して、外した後着地したのをバネにもう一度ジャンプしたのです。イタチの鼻から額にかけて、深い傷が入りました。もう一つ、イタチが攻撃を食らった理由としてはコリンはわざと、イタチが気を付けているナイフではなくて爪を使ったので、イタチの反応が遅かったのです。しかし、イタチはほくそ笑みました。爪を使ったのが仇となり、イタチの分厚い皮から血管まで完全に攻撃が通らなかったのです。コリンは、今背中を取られています。振り向きましたが、間に合いません。イタチの牙が、コリンを捕らえました。