第11話 天と地をつなぐもの
室賀と眞壁の二人は、休日ということもありリビングで思い思いに過ごしていた。特に会話もなく、室賀は本を読んでいるし、眞壁は携帯電話を操作している。
夏の暑さを忘れさせるクーラーの効いた部屋は、眞壁の基準で温度設定がされているため、室賀はいつもブランケットを被っている。本を読んでいた彼は、不意に窓の方を向いた。近くにいた眞壁はソレに気が付き、どうした、と声を掛ける。
「……いや、多分だけど、夕立が来そうだなって感じで……あ、洗濯物を一応しまっておこう」
そう言うとブランケットを脱ぎ捨て、洗濯物用カゴを引っ掴むとベランダに出る。二人分の洗濯物を手際よく取り込んだ。
「…まぁ、乾いてたからいずれ取り込む予定ではいたけど」
そう言うや否や、空では黒い雲がずんずんと迫り、低い音を響かせ始める。
「……当たりだな、雷を伴う強い雨が局所的に降るでしょう、ってやつだ」
カゴを床に置き、いそいそとソファに戻るとブランケットを身に纏う。そして洗濯物が台無しにならなくてよかった、と再びソファで寛いだ。畳むのはまだ後でいい。
「……いつも思うけど、何で察せられるんだ? 天気予報じゃ曇りのままで雨予報に更新されてないのに」
「……まぁ、なんとなくっていうか……元々、前世でも農業しながら寺子屋やってたし、天気に左右されまくるのが当たり前みたいなところはあったし、常々天気の様子を観察してたからかもな」
特に現代は変化が激しいからどうかな、と笑った。今の方がもしかしたら察知するの難しいかも、と付け加えながら。
「それに、雷が落ちると稲が豊作になるって話があるだろ? だからおれはもともと苦手じゃないっていうか、むしろ頼れる隣人みたいな感じだったな。ずっと昔から、敬遠するより感謝する存在だよ。
「雷」は“雨”の下に“田”って書くだろ。「稲妻」は“稲の妻”だし、なんか稲作農家には親近感あるっていうか」
「……なるほどな」
「……その感じだと、眞壁はあんまり歓迎できない感じか」
「別に、親近感もなければ苦手意識もないが……この現代で言えば、パソコンの最大の敵だろ」
「……うーん、それは確かにそうだった」
稲作してた頃は本当に大歓迎だったが、システムエンジニアをしている今では以前ほど歓迎していられないかもしれない。
「……確かに、データが飛んだらしねる」
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