第4話 冴木リンの過去と今
冴木リンは、誰からも好かれるムードメーカー。
茶髪ロングに、ちょっぴり崩した制服姿がトレードマーク。
明るくノリが良い彼女は、中学校でも人気者だった。
リンはいつものように明るい笑顔でクラスに現れた。
今日はいつもより賑やかで、友だちとの会話も弾んでいた。
そんな時、いつものように陽キャグループの男子、大輝がリンに話しかけてきた。
「リン、今日なんかいつもより可愛いね。」
大輝はクラスで人気者の男子で、いつも誰かと噂になっているような人物だった。
リンはいつものように明るく笑って答えたが、内心は少しだけ警戒していた。
「ありがとう!嬉しいな。」
放課後、リンはいつものように図書館で勉強していた。
すると、クラスメイトの美咲が慌てた様子でリンのところへやってきた。
「リン、すごいことになってるよ!」
美咲はそう言うと、スマホの画面をリンに見せた。
そこには、リンと大輝が仲睦まじく話している写真が投稿されていて、二人の関係について様々なコメントが書き込まれていた。
「え、なんで…?」
リンは信じられない気持ちでスマホを見つめた。
大輝に確認しようと試みたが、大輝は「ただの冗談だよ」と笑ってごまかしてきた。
。大輝の無邪気な悪戯は、瞬く間に学校中に広がり、リンは標的となった。
最初は「付き合ってるの?」と軽いノリで尋ねられる程度だったが、次第に悪意のある言葉や陰口に変わっていく。
「リンって、大輝のことめっちゃ気に入ってるんでしょ?」
「ほら、いつも大輝のこと見てるもんね。」
友だちは、最初は庇ってくれたものの、次第にリンを疑いの目で見るようになった。
誰かの悪口を言いたがるのは人間の本能なのか、それとも単に流行に乗っているだけなのか、リンには分からなかった。
リンは誰とも心から話すことができなくなり、いつも一人ぼっちだった。
以前は賑やかだった休み時間も、今はただ窓の外を眺めているだけ。
友達の笑い声が聞こえてくる度に、胸が締め付けられる。
「リン、一緒に帰ろうよ。」
そんな時、いつも通りの笑顔で声をかけてくるのは、大輝だけだった。
リンは彼の顔を見るたびに、怒りと悲しみが入り混じった複雑な感情を抱いた。
「なんで…?」
リンは何度も自問自答を繰り返したが、答えは見つからない。
大輝は本当に悪気があったのだろうか?それとも、ただリンを陥れたいだけだったのだろうか?
ある日、リンはいつものように図書館で勉強していた。
すると、後ろから誰かに肩を叩かれた。振り向くと、そこにはいつも仲が良かったはずの美咲が立っていた。
「リン、大輝のこと好きなんでしょ?なんで正直に言えないの?」
美咲の言葉に、リンはショックを受けた。
美咲は、リンが大輝のことを好きだと勘違いしていたのだ。
「そんなことないよ!大輝のことなんて…」
リンは必死に否定したが、美咲は聞く耳を持たなかった。
「嘘でしょ?だって、いつも一緒にいるもん。」
美咲は、他の友達を連れてきて、リンを取り囲んだ。
「リンって陰険だよね。」
「大輝くんのこと、独占したいんでしょ?」
リンは、友だちからの言葉の暴力を浴びせられ、心が打ち砕かれる思いだった。
リンは学校に行くのが怖くなり、不登校気味になった。
家にいても、過去の楽しい思い出がよみがえり、涙が止まらなかった。
「どうして私だけこんな目に合わなきゃいけないの?」
リンは何度もそう思った。しかし、誰もリンの気持ちに寄り添ってくれる人はいなかった。
ある日、リンはお父さんに呼ばれた。
リンは、そうは言っても反抗期。
ただ、黙って座っていた。
お父さんが口を開く。
「リン。永野のおじいちゃんとおばあちゃんの家の近くにある桜花高校を受験しないか?受かれば、おじいちゃん、おばあちゃんの家から通えば良い。」
リンは思う。
お父さんは、今の私の事を本当に分かってるの?
友達だって分かってくれれば、また元に戻れるかもしれない。
逃げるのは良くないよ。
と。
リンは口を開いた。
「お父さん!何も分かってないのに余計な事言わないで!友達の誤解が解ければ、元通りになるし、逃げたくない!おじいちゃん、おばあちゃんの家にも行かない!」
お父さんは、険しい顔をしながら、少し強めにリンに言う。
「リン。壊れた関係は元には戻らない。しかも、今回、リンは全く悪くない。リンが言う友達は、もう友達じゃない。絶対に分かり合えない。そんな人間は友達じゃない。リンの人生には必要ない。」
リンの目から涙が溢れる。
「・・・だって・・・逃げたくない・・・」
お父さんは、優しい声で言う。
「リン。逃げて良いんだよ。リンは優しいから、相手を許そうとしてるだけだ。人の心はね。変わらないんだよ。このままじゃ、リンがどうにかなってしまうよ。大丈夫。お父さんが何とかするから。心配しないで桜花高校を受けなさい。そこで、本当の友達を見つけなさい。」
リンは黙って頷いた。
次の日、お父さんは、中学に行って話を決めてきたようで、高校受験はスムーズだった。
そこからは、トントン拍子で進み、リンの桜花高校の入学が決まった。
入学式の朝。
リンは、真新しい制服は着て鏡の前に立つ。
リンは自分に言う。
「良い友達ができるよ!きっと!」
町には桜が咲き誇り、花びらが風に舞って、春が喜んでいるようだった。
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