第1話(下)超訳☆牡丹灯籠(改稿作業中)
「三元、
各駅停車に乗る三元とお決まりのあいさつを交わして一同は特急電車に乗り込む。
シャモは両手で
「シャモさんってばかなりの重症ですね。このまま行けば『
「なあ、
餌と仏像の問いに、シャモは無言でうなずくのみ。
「やはり明らかに様子がおかしいですね」
松尾が小声で仏像にささやくと、仏像は
「あー、エロカナから呼び出しかかった。シャモさんがこんなにおかしくなっているのに」
スマホをちらりと見た餌が、げっそりした顔でスマホをもてあそぶ。
「また横浜で待ち合わせか。いっそエロカナと付き合えば。変態道への一本道を突き進む同士なんだろ。だったら互いを実験台にすれば済むじゃねえか」
「鬼だ。鬼がいる」
仏像が時おり無自覚にぶちかます合理的発言に、隣で黙って会話を聞いていた松尾が思わず後ずさる。
「絶対断る。
「なあ、それって最近の話じゃねえよな」
「さすがに小学校時代の話。はあ、冗談じゃない会いたくない」
ため息をつきながら、仏像と松尾に続いて
その後ろを、
「あれシャモさんも横浜で降りるんですか。何で」
餌の問いに、シャモは無言でうなずいた。
「お前本当におかしいよ」
仏像の発言に、シャモは無言でうなずいた。
「お疲れさまでした」
松尾のあいさつに、シャモは無言でうなずいた。
「シャモの野郎、『無言でうなずく』以外のコマンドが利かなくなったぞ」
「本当に付き合う事になったんですよね」
「本人曰くそうらしいが、あの様子はマインドコントロールでも受けているレベルだ。いよいよ本格的に『
「昨日一緒にいたぐらいで日をまたいでマインドコントロールが掛けられるとしたら、相手はプロ中のプロですって。あり得ない」
餌の後ろをとぼとぼと歩くシャモの後ろ姿が、人波に消えていく。
二人の後ろ姿を見送った松尾と仏像は、松尾の下宿方面の出口へと歩き出した。
「それはそうと、『
物の怪やオカルトの類を認めない(認めたくない)松尾は、仏像に向かって無茶ぶりをした。
怪談物の代表格と言うべき『牡丹灯籠』から怖さを抜けとはこれいかに。
だがなぜか松尾には甘い仏像。
しばらく立ち止まると、やおら口を開いた。
【超訳☆牡丹灯籠 『超イケメソニート侍のワイ、美人令嬢と一目ぼれメイクラブしたんやが(自分から彼女にぐいぐい行くのが怖い草食系男子)』】
他人の別荘で出会って五秒で美人令嬢・お
『また会いに来てくれないと死ぬ』とまで相手に言わせた鉄板案件だったにも関わらず、元来の陰キャが邪魔をする。
お露に会いに行く勇気も出ず、震えながら子供部屋侍として自宅警備をする事
「ちょっと待って。今の時点ですでに突っ込みどころしかないのですが」
「何がだよ」
「他人の別荘で出会って五秒で合体。女はヤンデレ美人令嬢。陰キャのくせに五秒で合体。それで美人令嬢に都合よく一目惚れされる。それなんてラノベ展開??」
おい俺の事でも俺の願望でもねえぞ。
白い目で仏像を見る松尾から目を背けると、仏像はなぜか慌てながら話を続けた。
「ちょ、ちょっと待て。まだ話の続きはある。それで、一向に会いに来ない新三郎に捨てられたと思い込んだお露は自ら命を絶って」
「そんなヤンデレ捨てて正解ですよ」
松尾は『牡丹灯籠』の名シーンをばっさり切り捨てた。
「おおおおーい! 松尾、お前度胸ありすぎだろ呪われるぞ。これはめちゃくちゃ長い話。まだ続きがあるんだってば」
「手短にお願いします。タイパ重視で」
もちろん冗談で言っているのだが、仏像は妙な所で生真面目で負けず嫌いだ。
【超訳☆牡丹灯籠 タイパ版】
命を絶ったはずのお露が新三郎の家に現れて毎晩毎晩いちゃラブ
「全く話が見えません。男がニート侍(浪人)って事だけは分かりました」
「お前が説明を
苦笑いする仏像に向かって、松尾は棒読みで『怖ーい』と返した。
※本作はいかなる実在の団体個人とも一切関係の無いフィクションです。
※牡丹灯籠の説明部分は、怪談牡丹灯籠 三遊亭円朝著(青空文庫版)を参考にいたしました。https://www.aozora.gr.jp/cards/000989/card2577.html
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