第16話 都会のほうが断然! いいっしょ!! (2)

「かもしんない。いっぺんいったことあったけど、おばあちゃん、わらってただけだしね」


 フフ。おばあちゃんらしいですね。


「それにさ、ひと姿すがたになってれてもらえるかこわかったけど、おばあちゃんはさ、たぁぼう一緒いっしょで、わたしのこと、なんでもないふうに受け入れてくれて。うれしかったなあ」


 ものにこだわらない、面倒見めんどうみのいい人だったからね。お葬式そうしきではもと生徒せいとさんもたくさんいらっしゃったとか?


「うん。かるなあ。私も、勉強べんきょうだけじゃなしに、人として必要ひつようなこともいっぱいおしえてもらったもん。くなったのはきゅうだったけど、私が人の姿になってからのほうがたのしそうだったよ。きっと私にものを教えるので気持きもちにりがたんじゃないかなあ」


 ありますね、きっとそういうのは。……はなしてくれてありがとう。あまりにも急だったので、ぼくけられなかったから。


「いいって! いいって!! てか、それでいったらたぁ坊のほうが心残こころのこりあるんじゃないの? おばあちゃんはさ、元気げんきでやってればいいっていってたけど」


 そう、だったんだ。


「うん。たぁ坊ってさ、ご両親りょうしん亡くなってからいろいろあったじゃん? おばあちゃんもそこはにしてたんだよ?」


 そっか……。


「ま、仕方しかたないって」


 ミケコにとってもおばあちゃんのこと、かなしいはずなのに。


「てか、それ! マジいて!」


 なに? 今度こんどおこりだして?!


田舎いなかってさ、へん風習ふうしゅうのこってることあるじゃん?」


 ……まあ、あそこはね。


「それでさ、おばあちゃんが急に元気になったもんだから、なんかにとりかれてるとか、コソコソいっててさ! ねこうたがいのけるしぃ! それどころか、おばあちゃんに病院びょういんったほうがいいみたいな、ぼけたみたいなこといっちゃってさ!」


 人の姿はせてないんでしょ?


当然とうぜん! そんなの、あそこでやったらなにこるか! とにかく! おばあちゃんのお葬式のときだって、ねこ遺体いたいをまたぐと縁起えんぎわるいとか、そもそも私に生気せいきわれたんだとかっ、もう……っ! おもすだけではらつぅっ!! あったまきてっ!!」


 び出してきたと。


「そういうこと!」


 よくここまでられました。


「そこはね、手引てびきしてくれたのもあったし」


 え?!


「ねこまたの組織そしきってあんのよ。けっこう、いまなかでもねこまたになる猫はおおいんだってさ。私もらなかったけど。私が世話せわになったのは、ねこだけぐみ? とか、わらえる」


 今日きょうはじめてくことばかりだ。


「フフン。それだけいまはたぁ坊のことを信頼しんらいしてるってことですよ?」


 ちょっとくすぐったいけど。


「たぁ坊だって、そうでしょ? 私をさ。さっきも愚痴ぐちいってくれたし。ま、そればっかりはダメだけどね」


 なんかもうすっかりふかなかのようだね。


「そうじゃないわけ? すくなくとも私はそのつもりだけど?」


 いや、ま、それは……。


「ま、いいか。それはまたで。それよりさ、これがね……」


 物件ぶっけん


「もともとそのはなしがしたかったの! 二人ふたり新居しんきょ♥ あいのことなんだからん」


 あっちにかえるってせんはないんですね、田舎をきらってるなら。


「なに? たぁ坊、今の会社かいしゃ、もうヤんなっちゃった?」


 それよりなにより、ミケコがのぞむならと。


「ああ、いいって、いいって! そういうまわかたは!! さっきもいったけど、私、田舎嫌いだし? 都会まちのほうがいいわけですよ、私は。人間にんげんの多いこっちのほうが、なんかまぎれる気もするし、ねこまたも」


 そっか。


「だからね、これがね……」


 ▼▼▼


 で、せられた物件は……。


 部屋へやはいいんですけど、えきからとおいし、まわりにスーパーもコンビニさえない。くるまないんだから、こんなところめるわけないんですけどね。


 おばあちゃんからバトンタッチ。ぼく都会暮まちぐらしの常識じょうしきを教えないといけないようです。


 そう、一緒いっしょらすなら。


 ミケコをれて実際じっさいに見にくほうがよさそうですね。

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