第15話 都会のほうが断然! いいっしょ!! (1)

 ただいま。


「おかえり! マイダーリン!」


 ……。


「なに? じっとて。わたしへんなこといった? あ! 世界一せかいいちかわいい、あなたのねこちゃんに見とれちゃったとか?!」


 そうですね。


「え? な、なに、いきなり素直すなおに」


 おかえりってむかえてもらえることはあったかいんだなっておもっただけです。ミケコがいること、たりまえとなっていたけど、あらためてかんがえるとすごいことだなあって。


「な、なに? ほんと、らしくないってか……。あ! 仕事しごとでなんか、ヤなことでもあった?」


 あ、いや……。


「そういうことですか! 愚痴ぐちぐらいきますよぉ。かわいいおよめさんが」


 それははやいです。


「ウフフ。早い、だけなんだぁ」


 うっ……。


「ハグしたげる!」


 あ、いや、それは、そ……っ、まっ……!


「フフン。ラッキースケベじゃないよ。私がしたいからしてるんだから。毎日まいにちお仕事おつかれさまです。ね? かわいいお嫁さんでしょ?」


 ……ミケコもれてますね。


「タハハハ。ま、まあ、れないことはするもんじゃないよね、おたがいにさ」


 それでも、ありがとう。


「ちょっとは元気げんきた?」


 はい。じゃあ、夕飯ゆうはんにしましょうか。


手伝てつだおっか?」


 めずらしい。


「たまにはね♪」


(いただきます)


(ごちそうさまでした)


「ま、からずってか、理不尽りふじんなことはなかおおいよね。我慢がまんしなくちゃいけないこともおおいのはしんどいけどさ」


 まさか、ミケコなぐさめられるとは思いませんでした。


わらうにゃ! ゆーて、ちょっとはすっきりしたでしょ?」


 はなしを聞いてもらうだけでもちがうって、よくかりました。


「私にはなんでもはなしてくれていいんだからね。たぁぼうってさ、一人ひとりでためむんだから、もう」


 ありがとう。


「フフン♪ 今日きょう感謝かんしゃされてばかりだ。わるくないですなあ、こういうのも」


 ミケコにはいつもはげまされてるよ。


「どういたしまして。……と、いうところで、この話は、おしまい! えてこ♪ それでさ! いい物件ぶっけんございましたよ、旦那だんな♪」


 かえってときなんか機嫌きげんいいと思ったら、また物件サイトをてたってこと? 結局けっきょく、ミケコのほうがだよね、し。


「うーん……。引っ越し自体じたい鬱陶うっとうしいしめんどくさいし、このままでいいならそのほうがいいけど。それとはべつにさ、物件サイトって、見てるだけでもおもしろいってかったわけ。ひまつぶし?」


 ミケコって、わりとそういうのにれてるよね?


「ん? パソコンとか、ネットとか?」


 猫なのに。


「ヘンケン! てか、おばあちゃんにおしえてもらってたし♪ 私が見ちゃいけないってところもふくめて。ネットリテラシー? 見るなといっても見るなら、きちんと教えてあげましょ、だったかな?」


 そのわりには、こっちにてから? へんなところも見てたよね?


「ま、まあ、くちうるさいひともいなくなって、そこはまあ、ね。ア、ハハハ」


 ぼくだって、べつなんでも自由じゆうにしていいとはいいませんよ。……でも、そうか、おばあちゃんにね。きも計算けいさんも、義務教育ぎむきょういくレベルなら問題もんだいないと思ったら。


「あれ? いってなかったっけ?」


 初耳はつみみです。


「そっか……。なつかしいな、おばあちゃん。まだ半年はんとしくらいなのに」


 僕にとってもね。


「おばあちゃんってさ、小学校しょうがっこう校長先生こうちょうせんせいもしてたくらいじゃん? だから、私がひとの姿になったとき必要ひつようだからって教えてもらってたんだ」


 おばあちゃん、っから先生でしたからね。僕もいっぱい教えてもらいました。


「うん。でも、おばあちゃん、一人暮ひとりぐらしであぶなっかしくてさ、それを何とかたすけたいって、とっさにね、ひと姿すがたになれたんだけど」


 そうだったんだ。ミケコには感謝しないと。


「うーん……。でもやっぱ、感謝は私のほうこそ、かな? おばあちゃんにはひろわれたおんもあるし」


 そんなこと、おばあちゃんはにしてなかったと思うけど?

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