第14話 お引越し?

あきふかき……って、なんだっけ?」


 秋のものさびしさに、ふと人恋ひとこいしくなる、というでしょうか?


「ふーん……」


 なんです? いきなり。


「べぇつにぃ?」


 ……。


「ん? なぁに、真剣しんけんかおして? ここんとこやっと秋めいてきたからミケコちゃんだって感傷的かんしょうてきになるって、そんなところじゃん?」


 ミケコ。


「な、なに? せまってきて」


 かんがえてはいたんですけどね。


「は、はい!」


 し、しましょうか。


「はあ?! そ、そんなこと?!」


 なにか勘違かんちがいしてません?


「してません! それより、なんで秋のことから引っ越しになるわけ? まさか、ついにたぁぼう、クビになっちゃった!!」


 なんですか、ついにって。


都合つごうのいい社畜しゃちく簡単かんたんられる」


 おそろしいこといわないでください。だいたい、最近さいきんは社畜といわれるほどでもないです。ミケコたせておそくまで仕事しごとしているわけにもいきませんから。


「いやん♥ たぁ坊ってば、そんなにわたしこいしいんだ? 私てきにもぅ、たぁ坊と二人ふたりっきりはうれしいしぃ」


 そこです。


「なに? そこ? どこ?」


 ぼくとばかりいるのもってはなしです。


ともだちつくれって、やつ?」


 そう。


「それがなんで、引っ越しにまでなるわけ?」


 いろいろ都合つごうがいいわけです。


「ここでいいじゃん! ねこ環境かんきょう変化へんかよわいのです! ここの生活せいかつにもやっとれてきたのにぃ」


 そこはまた慣れてもらうしかないわけですが。部屋へやだって、ミケコ、自分じぶんしくありません?


べつにぃ。一人ひとりになりたきゃ、猫の姿すがたすみっこくし」


 そこが一番いちばん問題もんだいなんです。これからミケコ、人間にんげんとしてきていくなら、寝姿ねすがたもですけどおぼえないといけないこともおおいでしょう? そのためにもプライベートな自分の部屋はいります。いつまでもにゃんこベッドってわけにもね。


「なんかむずかしく考えすぎてない?」


 ミケコのためですよ。


「へえ……」


 なんです、そのわらい。


「なんでもないでぇす。……エヘヘ」


 なんか、気持きもちわるい。


「気持ち悪いゆうな! 私のことを考えてくれてるってのがうれしいの! いわせんな、鈍感どんかん!」


 よくかりませんけど。なんにしても、いまは猫を内緒ないしょっているようなものでもありますし、ペットいえなら猫のミケコを見られたとしても問題ないでしょ。


「いいの? そういうとこって、家賃やちんたかいんじゃない? あ、四畳半よじょうはん一間ひとま風呂ふろなしトイレ共同きょうどうとかでもいいよ! そのほうがラッキースケベだってきやすい!」


 昭和しょうわですか。まあ、今よりもすこ贅沢ぜいたく出来できなくなるでしょうが、そんな窮屈きゅうくつな部屋じゃなく、もっとひろいとこにしましょう。ミケコがるまでは仕事しごとと家の往復おうふくだけでしたからたくわえはあるので。


「じゃあさ! いっそのこと賃貸ちんたいじゃなくゆめのマイホームとか!」


 そこまではまだ無理むりです。


「まだ、なんだ。……考えてはくれてるんだ」


 またニヤニヤと。


無自覚むじかく男前おとこまえさんなんてりませぇん。それよりさ、ダブルベッドとかでよくない? 部屋別よりもそのほうがいい!」


 ダメです!


理性りせいたないかぁ」


 いや、まあ……。


「おっきした? 本気ほんきにしちゃった?」


 してません!


「あ、分かった! 部屋別々、たぁ坊のほうが都合いいんだ。処理しょり、出来ないもんね」


 だぁ! もう!! いい加減かげんにしなさい!


「キャハハハ! 図星ずぼしおこったぁ!」


 どっちにしても、ミケコがてるとき猫にもどるなら関係かんけいないことです!!


「あぁ!! そっか、それがあったか!! そうね、えっち、したいもんね! 一人で処理するより、そのほうがいいよね!」


 そうじゃなく!


になって、かぁわいい!」


 ミケコだって、かおあかいですよ。無理しなくてもいいです。


「うっさし!」


 ともかく、引っ越しのこと、考えておいてください。真剣しんけんに。


「めんどくさぁい」


 今のうちにすすめておけば、はるには新居しんきょうつれるでしょう。としは越してしまうでしょうが。


「はぁい」


 ▼▼▼


 やれやれ、納得なっとくしてもらったようでよかった。


 ミケコには人間の社会生活しゃかいせいかつも覚えてもらわないといけません。ファミリーけとかもいいかもしれませんね、その意味いみでは。手広てびろさがしてみましょうか。

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