第11話 ミケコの戸惑い

(カラン、カラン♪ ありがとうございました)


 ミケコは……。かった。となりのお花屋はなやさんか。さきかえっちゃったかと。


「ん?」


 なに、てるの?


「これって、バラ? って、やつだよね」


 そうだね。


ねこんときはさ、なんかはななんかも興味きょうみないってか、よくかんなかったけど、こういうのもいいよね」


 つぼみが? まだいてないけど?


「うーん……。なんつーの? それがいいっていうか、これから咲いてくるんだろうなあ、どんなはなになるのかなあ、とか? がんばれ、なんて」


 そっか。ミケコにもそんな感性かんせい芽生めばええてきているんだね。


「なあによ? わたしをどういうで見てるわけ?」


 ミケコは、ミケコじゃないの?


「なにそれ。つまんないこたえ。……ねえ、私、猫なのかな? ひとなのかな?」


 え?!


時々ときどきさ、分かんなくなるんだよね。自分自身じぶんじしんが。それでさ、たぁぼうまわしてるじゃん? さっきだって、いつもならわらって『スケベ!』っていえるのに」


 ずかしくなった?


「ん……」


 フッ。


「なぁによ、人が真剣しんけんになってるときに笑わないでよね!」


(くしゃくしゃ)


「うにゃ! あたま乱暴らんぼうに! せっかくかわいくしたかみくずれるぅ!!」


 それが普通ふつうですよ。


「ふえ?」


 人前ひとまえですることじゃないです、ラッキースケベなんて。いえのなかとはちがって人目ひとめもあるんですから。じらいは当然とうぜんです。


おこって、ない?」


 むしろぼくがミケコを怒らせたとおもってました。あせかきましたよ。ミケコにきらわれたって。あやまらなきゃって。


「私がたぁ坊を嫌うわけないじゃん! 謝る必要もないし」


 ありがと。それにね、やっぱりミケコはミケコですよ。猫とか人とかではなく。


「どういう意味いみ?」


 そのままです。猫でも、人でも、ミケコはミケコであればいいんです。すくなくとも、ぼくはそれでかまいません。


 「ううぅ。そうやってすぐ私をあまやかすぅ。そんなだから、私、調子ちょうしっちゃうんだからね」


 節度せつどたもってほしいですけどね。やりぎはやっぱりいけないことです。


「なぁんか、いってることがちぐはぐ」


 そうですか?


「ま、たぁ坊も、たぁ坊だしね!」


 そういうことです。(頭なでなで)


「ふにゃあ! もう! むかしからずっとやさしいんだからぁ。……これからも振り回しちゃうけど? いいの?」


 ミケコがおとなしいと調子がくるいます。いつもどおり、僕を翻弄ほんろうしていてください。僕はもう、それが心地ここちいいです。


「へんたい?」


 だれが!


「キャハハハ!」


 まったく。でも、もう大丈夫だいじょうぶそうですね。


「え? あ、う、うん……。ありがと」


 どういたしまして。


「さっきもね」


 ナンパからたすけたこと?


「そ。たのもしいなって。これからもまもってね。まちにはいっぱい、こわいのいるし」


 もしかして、それがそとたがらなかった理由りゆうですか?


「そうよ、悪い?!」


 正直しょうじきにいってくれればいいのに。


「だってぇ、よわみ、見せたくないもん」


 つよがりの猫さんですね。


「う、うるさい! たぁ坊みたいに、猫でも人でも、めてくれる人間にんげんなんていないの! おばあちゃんはもういないだから! 私を絶対ぜったい一人ひとりにしないでよね!」


 はいはい。ツンデレさん。

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