第8話 攻めはすれど攻められると弱い(内弁慶編)


 ミケコ……。


「なぁに?」


 ミケコは意外いがい無駄遣むだづかいしませんね。


「なに? いきなり」


 いえ、クレジットカードの明細めいさいとどいたんですけど、覚悟かくごしてたほどじゃなかったので。


「ああ! ヘンケン偏見! 自由じゆう使つかっていいとかいわれてるほどバカじゃないし。そこらへん、おばあちゃんのおしえもあるし!」


 そういえば、おばあちゃんも昔気質むかしかたぎでもったいない、もったいないのひとでしたね。


「そうよ。たぁぼうすくないかせぎをけずないもん。せっかくいいとこんでるのに、二人ふたりでここをされるわけにはいかないっしょ?」


 ミケコに心配しんぱいしてもらうほどかせぎがすくないわけではないですが……。


しいものもないしなあ。ものはほら、たぁ坊が用意してくれるのが一番おいしいし。たまにスイーツもってきてくれるし。買うとすれば、ひまつぶしのゲームとか? あと、ふくいえんなかだけなんでどうでもいいけど、下着したぎ?」


 なるほど、これはそれですか。


「うわ! なるほどだって」


 な、なんですか? なんでくんですか!


「だって、女の子の買いものまじまじて、なるほどなんて……。スケベ。あ、ラッキースケベか、それも」


 からかうなら、パソコンもカードもげますよ。


「ゴメンて。じゃあぁ、きにやらせてもらってるかわりに……」


 なんですか? って、ちょっ!


「スキンシップしたげる! これこそほんとのラッキースケベ!」


 わざとはラッキーじゃありません! いてこない! あぶない!


「またまたぁ。うれしいくせに」


 そ、……、まあ、ぼく健全けんぜんおとこですから……。その、ね……。


「おっきした?」


 ナニがですか! ……て、またブラしてない! 下着、買ってるんじゃないんですか!


「ふふん♪ なんでかった? やぁらかい? うれしい?」


 からかわない!


「だって、窮屈きゅうくつだしぃ」


 サイズってないんじゃないですか? よく分かりませんけど。


「ミケコちゃんのおっぱいたわわだし! メロンカップ! でも、こしほそくてスタイルし!」


 ねこっぽいですよね、そこはやっぱり。


「やっばぁ、すけべぇ❤ 凝視ぎょうしして」


 そういうことではありません。


「でもさ、ヒップは自分じぶんはかれるけど、バストはちょっと無理むりじゃん? たぁ坊、測ってぇん❤」


 ……僕の理性りせいためさないでください。


「ア、ハハハ……。さすがにそれはやりすぎか」


 買いにきます? おみせで測ってもらえないかなあ。


「しらなぁい。めんどくさぁい」


 うちのなかにずっといるわけにもいかないでしょ、どのみち。僕もちょっとサイズが合わなくなってきたので。


 「しあわぶとり?」


 そうかもしれませんね。ミケコがいるから一緒いっしょ食事しょくじしっかりとっていますし。会社かいしゃでも顔色かおいろくなったといわれます。でも、そのぶんね。


「も、もう! きゅう素直すなおになってぇ❤ これぞ、あいのちから!」


 そうしておいてください。だから、一緒に出掛でかけましょう。


「ううん……。興味きょうみなし。私はべつに、家のなかだけでいいし」


 そういうわけにはいかないでしょう。人間にんげんとしてらすなら。そもそもミケコ、僕がいない昼間ひるまなにしてるんです?


「猫の姿すがたままに? あとはパソコンりてネットとか?」


 ……へんなものてないでしょうね。


「マルフォルダとか?」


 そっ!


あわてちゃって、かわいい❤ 安心あんしんして、見てないから。おたがいプライバシーはそんちょーしてこそ良好りょうこう関係かんけいきずけます。大切たいせつです」


 ……ほんとに見てませんか?


「み、見てない! 見てない! ひとって、あ、あ、あんなずかしいことするなんて、し、らなかったし! 見てないっ!! 見てないから知らないもん!! たぁ坊の趣味しゅみなんて見たくないもん!! こわいもん!!」


 まんまとネットにどくされましたね。フィルタリング、しておかないと。……でも、ミケコ、17才ですよね?


「16かも? まあ、もと野良のらだし、誕生日たんじょうびもおばあちゃんが出会であったそのをそれとしてくれただけだから」


 あ、ゴメン。


「なんであやまるの?」


 いや、なんか……。


にしぎだって! おばあちゃんに保護ほごされて、たぁ坊にも出会って、わたししあわせだから。いまがそれならいいじゃん。それよりさ、なんでそんなこと今さらいうわけ?」


 いや、まだ高校生こうこうせいとしでしょ? 学校がっこうにでもかよえれば、人間にんげん常識じょうしきもきちんとにつくかなあと。


「ねこまたに学校はいらないのです! テストもないのです!」


 僕からテストしますよ? 人間社会しゃかいについて。とくにネットのただしい使つかかた


「もう! それはいいから!!」


 案外あんがい純情じゅんじょうですよね、せまってくるわりには。


「う、うるさし!」


 まあ、いいですけど。でも、人としてきていくつもりならまなぶべきことはおおいと思うんですけど。


「だからぁ、しっかりお世話せわしてよね、ぬしさま」


 そのかたはなんか卑猥ひわいです。


「意識しすぎじゃん! エッチ」


 今のミケコは人間ですから。


「じゃ、猫で。……はい、猫です! お世話して❤ でてぇ」


 調子ちょうしいいんだから、まったく。


 ▼▼▼


 なんか、ごまかされた気もしますね。


 そういえば、ミケコって内弁慶うちべんけいでした。田舎いなかのおばあちゃんちなんて戸締とじまりなんてまるでしてないのに、にわくらいまでしかてなかった気がします。人見知ひとみしりもはげしくて、僕にも最初さいしょ全然ぜんぜんなつきませんでした。


 なつかしいですね、ミケコとあそぼうと意地いじになっていたどものころが。で、かれて猫が苦手にがてになったんです。


 今はぎゃくに、僕がまわされていますが。


 しょうがない。そとにもれてもらわないとこまりますから、やっぱりしましょう。

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