第6話『本来の歴史とは』
「ってな感じだな」
明日からGWを控えた日の夜、ヒロシ家にて。
明日から学校が休みということで俺たち3人はヒロシの家へ泊まりに来ている。
ちょうど今はソーマがここまでの『原作を1ミリも知らない俺による炎珠、氷音を口説き堕とせ作戦(笑)』の進捗状況をヒロシへと報告している。
「氷音碧依が主人公へ名前呼びを願い出た描写は記憶にない。つまりウサは原作段階での彼よりリードしている」
「へぇ~」
「炎珠朱奈の件はマラソン途中で倒れるのが正史だな、主人公が保健室へ運び目覚めた彼女が主人公へ感謝の言葉を述べて好感度が上がるというイベントだった」
「あいつ『友達からドロケイに誘われてるから……』って逃げたけどな」
「ウサの介入で歴史が少しずつ変わっていってるのだろう」
「ふーん」
特別何かやってるつもりは微塵もないんだけどな。
碧依は偶然サボり場で会ってから喋るようになっただけだし、炎珠のことは友達なら当たり前のことだろ。
「無地来の妹とも仲良くなってっけどあの子もストーリーに関係あんのか?」
「無地来翠か、彼女は追加コンテンツから登場したキャラだな」
「追加コンテンツ?」
「妹の存在は設定ではあったが立ち絵もCGはなかったはず。あの後死んだから追加コンテンツはやってないしよく知らないが、あらすじを見た限り彼女も陽キャに寝取られて主人公が絶頂するはずだ。タイトルは確か『僕の妹がクラスメイトの陽キャに寝取られる~僕には見せない表情とセックスで乱れる妹を見て僕は勃起しイクッ』だ」
既視感のあるタイトルなんだが。
つーか無地来は妹相手にも勃起すんのかよ。
「てことは攻略必須だな、よかったなウサ、ハーレム要員が増えたぜ」
「彼女もちゃんと落とすんだよ」
「マジかよ……」
妹ちゃんも対象なのかよ、あの子を惚れさせろとか無理だろ、好感度最低じゃん。
『帝兎月!』っていつも指差して怒ってくるんだぜ?
「無地来が寝取られるのって夏休みだったっけ?」
「そうだ」
「じゃあそれまでにウサが口説き落として、夏休み中に彼女たちとセックスすれば晴れてハッピーエンドだね」
「晴れて卒業じゃねぇか、くぅー羨ましいぜウサちゃん、オレもお姉さんたちとセックスには至らねぇからなー」
ソーマはまずその特殊な性癖をなんとかしろ。
何が『ボロボロに使い倒されて死んだ顔してないと勃たない』だよ。
「じゃあ初セックス前に練習しとく? いいよ、同性ならノーカウントでしょ」
「おいバカ止めろ」
ユーリもふざけたこと言ってんじゃないよ。
頬を赤く染めるんじゃない。
「できれば主人公の前でセックスして脳破壊まで頼む」
「俺は人に見せつける趣味はない!」
ヒロシはつまらなさそうに『じゃあセックスビデオレターでいいよ』
ハメ撮りする趣味もねーよ。
「冗談は置いておいて」
本当だろうな? 顔が本気だったが。
「原作は主人公側に心が寄った所で寝取られるって設定だから、ウサがそれ以前に恋人となればセックスに至らなくても大丈夫なはずだ」
「んだよ、ウサは童貞のままかよ」
「なんだ、残念」
「お前ら今から〇マブラでボコボコにしてやるから用意しろ!」
なお3対1で逆にボコられた、ぐすん。
「とりあえずGW明けからも頑張っていかないとね」
「でもさ、陽キャってオレたちが成り変わってるんだろ、寝取られる心配ないならゆっくりやればいい気もするけどな」
「フッ、竿はいくらでも替えが効く」
何名言っぽくドヤ顔で言ってんだよ。
「ここはエロゲの世界だからな、竿役なんぞ汁男優のように溢れている」
「お前汁男優さんたちに謝れよ、アレ男の尻見ながら出番まで一生懸命勃ててんだぞ」
そんなこんなで、今日の話し合いの元『GW明けから気合れて頑張っていこー作戦(笑)』が決行されることなった。
やりたくねぇ……。
「ボクらってウサのサポートをするわけじゃない? やっぱり原作知識とやらを入れといたほうがいいと思うんだよね」
「たしかにな、ヒロシは家から出ねぇし、学校じゃ原作わかんねぇもんな」
「それもそうだな、じゃあどこから話すか」
「あ、ウサは聞いちゃダメだよ? 余計な情報頭に入れないほうがいいからね」
「オレらが聞いてる間〇マブラでCPUと残機99マッチでもしてろよ」
「ただの苦行じゃねーか」
そういうわけで3人は別部屋に移動していき俺だけが放置される。
……ちくしょー、やってやんよ!
――
「さて、どこから聞くか」
「まずは炎珠さんと無地来の関係からで良いんじゃない?」
「わかった」
――炎珠朱奈はお前たちも知っているだろうが無地来白へと好意がある。
二人は幼馴染という関係で幼い頃から幼稚園、小学校、中学、そして高校へと至るまで常に同クラスでもあり常に一緒に過ごしてきた。
キャラクター性は見ての通り無地来白は陰キャ気質で友達がそれほど多くはない。
対して炎珠朱奈は誰に対しても分け隔てなく接することができ、様々な人間から好かれている。
無地来白は彼女に対して好意はあるのだが、その人気ぶりに対して『自分は彼女に見合わない』と卑屈気味な感情を覚えやがて『どうして朱奈ばかり』といった妬みも持ち合わせている。
「んだよ、自業自得じゃねーか」
だが幼い頃炎珠と交わした『大きくなったら結婚しよう』の約束を今も覚えていて『朱奈は僕のことが好きだから……』と希望に縋っている部分もあり『好きだから尽くしてくれる』と甘えきっているというわけだ。
「普通女の子が結婚の約束を覚えていて――とかじゃないの」
「炎珠がちょっと不憫に思えてきたな」
だがもちろん炎珠朱奈も彼に対して好意を持っている。
そうでなければゲームは進まないからな。
彼女が今も彼に好意を持っているのは『私が支えてあげないと』からくる使命感のようなものだな。もちろん結婚の約束も覚えてはいるが、主人公程固執はしていない。
「ダメ男を支えてあげたい的な感じだね」
だが高校2年に上がると彼はひとりの少女と出会う。
それが氷音碧依だ。
彼女は知っての通り誰もが目を引く身体つきをしている特に胸、主人公は出会って早々に胸を凝視しながら挨拶するところから始まる。
「最悪だなあいつ、まぁお姉さん好きのオレでもあのおっぱいには初め釘付けになったな」
「ボクはあんまり興味なかったなぁ」
「お前はそりゃぁな……」
氷音碧依は学校であまりいい噂が流れていない、お前たちなら知っているだろう。
「あぁ、さすがに耳にするぜ」
「ウサから話を聞いてる感じだと喋らない以外は特に感じないんだけどね」
そういうわけだから彼女は今まで友達が作れずに過ごしていた。
そんな中で胸を凝視するとはいえ声を掛けてくれる人物が現れた。
彼女は無を装っているが根っこはとても淋しがりな一面がある。心では誰かと喋りたい、友達が欲しいと叫んでいた。
そこで現れた彼はまさにヒーローだったんだろうな。
「おっぱいガン見さえなければねぇ」
「うーん、無地来のどこに好意を寄せられる部分があるのかオレには全くわからねぇ」
それがエロゲのご都合主義という奴だ。
氷音碧依と微々たるものだが距離が近寄っていくのを見て良く思わない人物がいた。
それはもちろん炎珠朱奈だ。
炎珠朱奈は心では『白を好きになる女の子なんて現れるわけがない』とある高を括っていた部分があった。
故に唐突に表れたライバルに対して焦りの感情も芽生え主人公に対してアプローチを始めるというわけだな。
「なるほどねぇー」
「それで成り代わり前のボクらはどんな感じなの?」
あぁ、陽キャたちは前々から炎珠朱奈、氷音碧依に目を付けていて陰キャである無地来白がうっとおしいという設定だな。
――あいつ何であんなんでモテんだ?
――ムカつくな、奪うか。
――炎珠も氷音もヤッたら気持ちよさそうだもんね。
「最低だな」
「ボクは女なんかに興味ないからね!」
「おい本当にやめろ!」
奪う内容は単純だ。まずは人当たりの良い陽キャが炎珠朱奈に対しては恋愛相談に乗るという形でアプローチを仕掛ける。もともとこの陽キャはクラスの誰とも関係が良く彼女に近づくこと自体難しくはなかった。
そして氷音碧依には彼女が人前で話すのが苦手という部分に目を付け学校外で声を掛けることを重点に置いた。まぁ単に学内では炎珠に集中していた為そうせざるを得なかったという点もあったみたいだが。
事情を知らない氷音にとっては人前で話しかけないことが好感的だったんだろうな。
「これまさにウサにぴったりなキャラだな」
「だね、聞いててボクも思ったよ」
次に動いたのは口の悪い陽キャだ。
彼は実家がヤクザと繋がりがあるということもあり、セックス中に相手を狂わせる薬を入手することができた。
それを最初に話した陽キャへ渡し彼女らとセックス中に使用させ狂わした。
狂った彼女らに正常な思考を与えず輪姦し弱みを握ること。
それが彼の役割だった。
「ソーマさいてー」
「なんでこれがオレなんだよ!?」
そして最後に残った陽キャの役割は――無地来白をハニートラップにハメることだった。
「あっ……察したわ」
「どういう意味さ」
彼は女装が得意で完璧な女に成りきれる特技があった。
その特技を生かし無地来白を誘い込む。
彼はまたも唐突に表れた可愛い女の子(男)にデレデレになり簡単に誘いを受ける。
女装陽キャの目的はもちろん彼女たちにデートしてる姿を見せつけることだ。
「ほらな」
「ボクは無地来なんか興味ないよ! ウサかソーマならともかく」
「頼むから冗談だって言ってくれよ!」
女装陽キャが無地来とデートしている所を炎珠と氷音それぞれに見せつける。
人当たりの良い陽キャが彼女たちを慰める役割で心を掴む。
口の悪い陽キャは堕ちた彼女たちを狂わせ快楽漬けにする手段を行う。
結果夏休み中彼らに輪姦され続け完璧に堕ちる。
最後は以前に話した通りその場面を主人公に見せつけ脳を破壊するということだな。
話は以上だ。
「オレらクズじゃねーか」
「聞いてて不愉快だったね」
「それがこのゲームを気に入らなかった理由だ」
「まぁ、ヒロシの気持ちもわかるな、ウサやユーリが似てるだけとはいえこの設定を考えた奴に文句を言いたいくらいだな」
「これはウサにちゃんと歴史を変えてもらわないとね、こんな未来何よりも彼女たちが可哀そうだよ」
そうだ、だからこそウサには頑張ってもらわないといけないんだ。
頼んだぞ、ウサ。
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