第―—話
EX 四月に溶けたアイス
――
これはあくまで相須恵が与えてきたアイスに対してのイメージからの飛躍であり、噂であり、退屈な日常に異変を欲した若者たちの手で作り上げられた虚像のようなものだ。
――相須恵は罰っする
多くの生徒が結論を求めた故に生まれたこの説話は、その実ただの体調不良であったり、振られたショックであったり、頭を打ったことへの安全処置であったりと偶然の産物だ。
――相須恵は愛されている
流れる噂ごと人を魅了してきた相須恵はいつしかそう呼ばれる存在へと
新たな季節が始まって一月と立たずそんな噂を、虚名を、彼女自身を、誰もが認め、知り、信じていた。
男女問わず好かれる愛嬌のある立ち振る舞いも、呑み込まれるような美しい蒼の瞳も、無意識に意識してしまう印象的な声音も、アイスを渡すところも。すべてが相須恵の個性で相須恵の魅力だと評される。
浮かぶ青空が変わったとしても世界の相須恵への認識が変わることはないだろう。
――私は呪われている
私が相須恵を受け入れてしまえば私は世界から忘れられるだろう。誰かの理想を纏う私は呪われている。
――私は罰する
最初は何の意味を持たなかったその行為は時間をかけ意味を成した。だから私は私を罰するんだ。
――私は愛されている
違う。そう叫んだとしてもそれはきっと相須恵によって否定されてしまう。愛されているのは他でもない相須恵なのだから。
私が認めず、知らず、信じてこなかったそれは誰かの私になっていく。
私のすべてが相須恵であると日々記されていく。
別れの季節が終わるころ、私はそこにいるのでしょうか?
地面に落ちたアイスの一部を眺めて私はそんなことを考えていた。
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