第26話 横薙ぎ一閃
※
客…と言うてええのかは分かれへんが、とりあえず二人を客室に押し込む。
やれやれ…なんか騒がしいからやって来たら、この国の中でも上位の実力を持つ、トルが殺されかけとるっては夢にも思わんかったわ。
奴は有望やったから番人にしたのじゃが…
まだ修行が足りんかもしれんかなぁ…
そう、苦言を心の中にグチグチと溢しながら、トルが居る病室に行く。
「おい、怪我の方はどうや?」
奥からパタパタと医者がやってくる。おや…?ここまで焦っとるんは見たことがあれへん。
「リリエルさん!トルが……上位の治癒魔法でも一切効き目がありません…!」
「なんやて…?いや、そんなことないんはずや!あの、どんな病でも直せるポーションをつこてもなのか?」
どうにも出来ないと言いたげなようで項垂れる。それを見て、妾は一目散にトルが寝込んでいる病室に向かった。そこには、穏やかに眠っているトルが居た。
なんや…良かったわ。まだ死んでないやん。男のくせに端正に揃いすぎた顔を触ろうとした瞬間、HPバーにダメージが入る音が聞こえる。
だが、トルの顔は眠ったままピクリとも動かない。ダメージが入ったのならば、痛みで起きても良いのだが、どうやらこれは一般的な毒のようなものとは違うようだった。
「あのガキ……うちのトルにどんなことを仕込みやがったんやぁ…?絶対…絶対許さへんからなぁ!」
怒りで肩をわなわなと震わせていると、憎い声が聞こえる。
「何って…ただただ攻撃をしただけだが…まぁ、ちょっと特性が相まってしまってこうなっているってのもあるが…」
その言葉を聞いた瞬間、無意識に細剣を握っていた。
「殺す…絶対お前は刺しちごてでも殺す…!」
サブスキルを発動し、全体のステータスに10%の補正をかける。
確かな怒りとは対極に、今までにないほど冷静だった。
どれだけ簡単に相手をいてまうことができるか。
あの感じを見とると足が速いから一撃で決めきらんと厳しい。やけど、相手は妾よりは早ない。よって、短期戦に持ち込むのが最適解や!
床がえぐれるほどの踏み込みで接近し、横薙ぎ一閃で首を狩る。
が、胴体が意思を持ったように動き出し、首を掴む。そして、あり得ないのだが、首を再びはめ直す。呆気にとられていると、こちらに舌を出す。
「まだ、死んでないぞ?」
医務室を出て、廊下に逃げていく。少し立ち尽くしてしまったが、すぐに笑みを浮かべて追いかける。
これは…楽しいことになりそうやなぁ!
「ほんまにしぶといやつやなぁ!小僧!」
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