第26話 横薙ぎ一閃

客…と言うてええのかは分かれへんが、とりあえず二人を客室に押し込む。


やれやれ…なんか騒がしいからやって来たら、この国の中でも上位の実力を持つ、トルが殺されかけとるっては夢にも思わんかったわ。


奴は有望やったから番人にしたのじゃが…

まだ修行が足りんかもしれんかなぁ…


そう、苦言を心の中にグチグチと溢しながら、トルが居る病室に行く。


「おい、怪我の方はどうや?」

奥からパタパタと医者がやってくる。おや…?ここまで焦っとるんは見たことがあれへん。


「リリエルさん!トルが……上位の治癒魔法でも一切効き目がありません…!」

「なんやて…?いや、そんなことないんはずや!あの、どんな病でも直せるポーションをつこてもなのか?」


どうにも出来ないと言いたげなようで項垂れる。それを見て、妾は一目散にトルが寝込んでいる病室に向かった。そこには、穏やかに眠っているトルが居た。

なんや…良かったわ。まだ死んでないやん。男のくせに端正に揃いすぎた顔を触ろうとした瞬間、HPバーにダメージが入る音が聞こえる。


だが、トルの顔は眠ったままピクリとも動かない。ダメージが入ったのならば、痛みで起きても良いのだが、どうやらこれは一般的な毒のようなものとは違うようだった。


「あのガキ……うちのトルにどんなことを仕込みやがったんやぁ…?絶対…絶対許さへんからなぁ!」

怒りで肩をわなわなと震わせていると、憎い声が聞こえる。


「何って…ただただ攻撃をしただけだが…まぁ、ちょっと特性が相まってしまってこうなっているってのもあるが…」

その言葉を聞いた瞬間、無意識に細剣を握っていた。

「殺す…絶対お前は刺しちごてでも殺す…!」


サブスキルを発動し、全体のステータスに10%の補正をかける。

確かな怒りとは対極に、今までにないほど冷静だった。

どれだけ簡単に相手をいてまうことができるか。


あの感じを見とると足が速いから一撃で決めきらんと厳しい。やけど、相手は妾よりは早ない。よって、短期戦に持ち込むのが最適解や!

床がえぐれるほどの踏み込みで接近し、横薙ぎ一閃で首を狩る。


が、胴体が意思を持ったように動き出し、首を掴む。そして、あり得ないのだが、首を再びはめ直す。呆気にとられていると、こちらに舌を出す。


「まだ、死んでないぞ?」

医務室を出て、廊下に逃げていく。少し立ち尽くしてしまったが、すぐに笑みを浮かべて追いかける。

これは…楽しいことになりそうやなぁ!

「ほんまにしぶといやつやなぁ!小僧!」

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