第23話 Syachiku-san


「っはぁ…あっぶな…死ぬとこだったぞ…?」

二千万とかいう高額な懸賞金がかけられてから、俺を見たら一目散に自分のところに走ってくる人たちが大量に来たお陰で、結構な深手を負っている。


実際、脇腹が血でエグい事になっているからね…

体力ゲージがジリジリと減っていく中、既に誰かが入って荒らしたような村が見つかった。

周りに腐臭が漂っている。今倒れている人は全員死んでいると考えていいだろう。


不快感を感じながら一際目立つ家に入ると、魔女の格好をした人が床に突っ伏して倒れている。

俺の気配を感じ取ったのか、木の枝のような腕で足を掴んでくる。


「助けておくれ…襲撃者に入ってこられたせいでこの村全部が壊滅したんだ…あんたも使っていいから、あっちの倉に入っている回復薬を使って助けてくれないかい?」

「…」


黙って倉に行き、『回復薬』のラベルを貼っている瓶と、何も貼ってない瓶を取る。

そして、その瓶を魔女に渡そうと持った途端、魔女が薄い笑みを浮かべたと思うと、急に体が動かなくなる。


「ヒッヒ…賭けをしようじゃないか。ワシとお前さんのな。このラベルが貼っている方か、貼ってないほうかどちらかが毒入りだ。引いたほうが死ぬ。簡単な話だろう?」


明らかに向こう側有利な条件を提示されている。そりゃあ、調合したのそっちだからわからないわけがないじゃん。しかも自分、魔法かなんか知らないけどその場から一歩たりとも動けないし。


ラベルが貼ってある瓶を持っている左手の指を一本一本丁寧に解かれ、

「じゃあ、こっちを選ばせてもらおうかねぇ…ヒヒッ!」

と言われる。


はぁと溜息を吐く。大体そんなところだろうと思っていたが、露骨にそんな事をされちゃあ溜まったもんじゃない。

『絶対に勝てないじゃんけん』をしているような感覚だった。おまけに命を懸けた。


「さぁ。ワシは優しいからねぇ。一緒に飲んであげるさぁ…」

立っている状態すら怪しい魔女が、怪しい顔をして回復薬を飲み干す。


そして、腕を固められている俺は魔女に腕を押し上げられ、回復薬を無理やり飲まされる。


だが、その回復薬は俺の前で蜃気楼のようにふと消える。

「なっ…なんで消えたんだい…?もしかして…こっちは…」

みるみる魔女の顔が青くなってくる。


「相手の選択肢を限定すればじゃんけんは勝てる…さぁ…聞かせてくれないかな?その薬の効果を。」


そのあとは魔女が取り乱し、はなしもまともに聞けないまま、魔女は倒れ、のたうち回った挙げ句、血を吐いて死んだ。


その後、倉を漁って分かったのが、この回復薬は拷問用であり、最初は回復するが、十分でちょうど死ぬようにじわじわとダメージを与え続けるように作られたものだった。


「はぁ…危なかったな…でも…」

自分のスマホを見る。

「死神さんからねぇ…」


『Syachiku-san』この魔女を死なせる計画は、この一通の電話から始まった。

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