第21話 助け

歩いて歩いて歩き続ける。全く…そろそろ口をきいても良いかな。

「もう懲りましたか?もう…本当に迷惑を…」

後ろを振り向くと、僕が歩きだしてしまう前まで居たはずの先輩が居ない。


振り返ったり、周りを探してみたりしたが、やはりどこにもいない。

「なんで居なくなったんだ…?拗ねたか?」

本当に迷惑をかける人だな…


仕方ないため、行く宛もなくそこら辺をプラプラ歩く。

途中で何回か襲われたが、自分のスキルでなんとかした。やっぱりこのスキルって受け身だよなぁ…自分から攻撃しやすくなるスキルとかではないし…


そうだ。目を瞑って歩いてみよ。

「スキル発動【幽霊化】」

やってみると、物に当たらないため、らくらく進むことができる。

楽しぇー!どこに行っているのかわからないスリルがあってとっても良い!


そろそろと思い、目を開ける。

すると、そこには槍を持っている原住民のような人たちが居た。

え…?ここってどこの村…?

文明の発達が非常に遅れてるんだけど…


僕が理解に苦しんでいると、どこからか瓶に入った液体を投げつけられる。

パリン。空中で割れ、自分の体にかかる。

え…?幽霊化が継続してるから、自分には物理攻撃は当たらないはずなのに…


倦怠感と、目眩。それに熱や吐き気もしてきた。

足元が落ちているような感覚に襲われ、倒れ込んでしまう。

運が悪いことに、スキル持続時間も終わってしまった。


HPバーが一気に半分削れる。

「ヒッヒ。やはり、透明化している相手にも当てられるんだな。良い実験材料にしてもらおうじゃないかね。」

魔女が悪魔のような笑みを浮かべた後、原住民たちに連れて行かれる。その間にもHPが半分づつ削れていく。


助けて…先輩…


「さて。どんな実験をするかね。」

アイマスクらしきものを無理やり付けられた僕は、ベッドのようなものに寝かされていた。

「じゃあ…まずはHPが回復し続ける薬からかね。無限に毒状態にしてやるさ。」

飲みたくもない薬を飲まされる。

すると、一時的に体調が回復し、HPが100になり、MAX値が表示される。だが、次の瞬間には毒が回り、一気に体調が悪くなる。

それに呼応するようにHPが倍増し、100に戻る。


連鎖反応のように毒と回復が繰り返され、頭がおかしくなってくる。

「あっ…がぁ…」声にならない呻き声で助けを求める。


そんな僕の事を見て魔女がニヤッと笑う。

「ヒャヒャヒャ!滑稽滑稽!面白いのぉ!さて、どんどん実験をしていこうじゃないか!」

そう言いながらもう一つ薬を飲まそうとしてくる。


口に運ばれる寸前、天井が壊れる音がした。

「大丈夫か?」

優しい笑みを浮かべる先輩が居た。

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