第18話 仲間

「ごべんねぇ〜惨めな姿をみせじゃってぇ〜」

僕に縋りつきながら泣いている。僕より一人回り小さい体をしている彼は、20ぐらいのちゃんとした大人だが、なぜか嫌悪感を感じない。この人が弟みたいな身長してるから、親近感が湧いたのかな?

これが別の人だったら振りほどいてたな…。

そう思いつつ、「大丈夫ですよ。」と返す。


彼の胸の中に詰まっていた感情が爆発したのだろう。ただ僕に縋り付いて泣いている。


彼から話を聞いたところ、端的に言ってしまえば、スキルの影響によって、意図せずに不幸をばら撒いてしまっているらしい。

彼は責任を感じていた。罪悪感と共に。死んでしまった人に対し、悪口を言ってしまったことも激しく後悔していた。


殺人鬼。その名に相応しくない人柄だった。

なぜなら、そこにいるのは、人の事を考えられ、相手に危害を意図的に加える気はほぼない。ただの一人の人だったから。


「辛かったんですね…でも、僕は貴方を見捨てませんよ。他の人からの評価がどうであれ。貴方は一人の人間なんですから。ね?

僕は安心させるようにニコッと笑う。


先輩は涙を拭い、空に捨てる。

「ありがと。君の言葉に救われたよ。じゃあ…一緒に行こうか。。」

無理やり笑顔を作っていた。だが、僕はそれに安心した。

「そうですね。必ず僕が冤罪を晴らします。」

はっきりと言った。すると、先輩が気まずそうな顔をする。


「一緒に行動しようって言った矢先にごめんね。ちょっといい?あっちに忘れ物しちゃってさ。取りに行ってくる。」

「あ、はい。気をつけてくださいね。」

何なんだよ感はあるけど…まぁいっか。



『もしもし…?何?急に呼び出して。』

電話越しのあいつがあからさまに不機嫌そうな声を出す。

「いや?しっかりやってんのかなって。」

『やってるわ!それがどうしたんだよ。まさか、これだけを言いに来たわけじゃねぇだろうなぁ?あ?』

そんなに興奮すんなって…一回見かけたときとは全く違うぞ…?


「まさか。お願いをしに電話をしただけだ。」

『んで…?そのお願いっていうのは何だ?早くしてくんね?ちょっと時間がないんだわ。50字以上50字以下で答えろ。』

「それは50字なんよ…まぁいい。これ以上のプレイヤーの脱落はできる限り抑えろ。日本警察が本格的に入る頃合いだ。」

『マジで50で収めやがった。…分かった。ちょっとやめとく。日本警察が介入するとヤバイからな。今は海外からかき集めた下っ端しかいないようだが…。上層部が来てもらっちゃあ、たまったもんじゃないからな。本当に永久追放リスキルされかねない。できる限り抑えるわ。』

「よろしくね。じゃあ、私はここで…」

『なぁ…』


不安そうな声が電話口から漏れる。

全く…いつまでも妹思いの奴だこと。

「えぇ。もちろんですよ。まぁ、VEMの内部システムを完全に破壊して、安全に帰れたらの話ですがね。」


無言で、乱暴に電話を切られる。さて…そろそろ私も動きますかね…

VEMをぶっ壊すために。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る