第18話 仲間
「ごべんねぇ〜惨めな姿をみせじゃってぇ〜」
僕に縋りつきながら泣いている。僕より一人回り小さい体をしている彼は、20ぐらいのちゃんとした大人だが、なぜか嫌悪感を感じない。この人が弟みたいな身長してるから、親近感が湧いたのかな?
これが別の人だったら振りほどいてたな…。
そう思いつつ、「大丈夫ですよ。」と返す。
彼の胸の中に詰まっていた感情が爆発したのだろう。ただ僕に縋り付いて泣いている。
彼から話を聞いたところ、端的に言ってしまえば、スキルの影響によって、意図せずに不幸をばら撒いてしまっているらしい。
彼は責任を感じていた。罪悪感と共に。死んでしまった人に対し、悪口を言ってしまったことも激しく後悔していた。
殺人鬼。その名に相応しくない人柄だった。
なぜなら、そこにいるのは、人の事を考えられ、相手に危害を意図的に加える気はほぼない。ただの一人の人だったから。
「辛かったんですね…でも、僕は貴方を見捨てませんよ。他の人からの評価がどうであれ。貴方は一人の人間なんですから。ね?先輩」
僕は安心させるようにニコッと笑う。
先輩は涙を拭い、空に捨てる。
「ありがと。君の言葉に救われたよ。じゃあ…一緒に行こうか。後輩。」
無理やり笑顔を作っていた。だが、僕はそれに安心した。
「そうですね。必ず僕が冤罪を晴らします。」
はっきりと言った。すると、先輩が気まずそうな顔をする。
「一緒に行動しようって言った矢先にごめんね。ちょっといい?あっちに忘れ物しちゃってさ。取りに行ってくる。」
「あ、はい。気をつけてくださいね。」
何なんだよ感はあるけど…まぁいっか。
※
『もしもし…?何?急に呼び出して。』
電話越しのあいつがあからさまに不機嫌そうな声を出す。
「いや?しっかりやってんのかなって。」
『やってるわ!それがどうしたんだよ。まさか、これだけを言いに来たわけじゃねぇだろうなぁ?あ?』
そんなに興奮すんなって…一回見かけたときとは全く違うぞ…?
「まさか。お願いをしに電話をしただけだ。」
『んで…?そのお願いっていうのは何だ?早くしてくんね?ちょっと時間がないんだわ。50字以上50字以下で答えろ。』
「それは50字なんよ…まぁいい。これ以上のプレイヤーの脱落はできる限り抑えろ。日本警察が本格的に入る頃合いだ。」
『マジで50で収めやがった。…分かった。ちょっとやめとく。日本警察が介入するとヤバイからな。今は海外からかき集めた下っ端しかいないようだが…。上層部が来てもらっちゃあ、たまったもんじゃないからな。本当に
「よろしくね。じゃあ、私はここで…」
『なぁ…』
不安そうな声が電話口から漏れる。
『このゲームをぶっ壊すことに加担したんだから、妹を返してくれるよな?』
全く…いつまでも妹思いの奴だこと。
「えぇ。もちろんですよ。まぁ、VEMの内部システムを完全に破壊して、安全に帰れたらの話ですがね。」
無言で、乱暴に電話を切られる。さて…そろそろ私も動きますかね…
VEMをぶっ壊すために。
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