第16話 利用


「1600人の脱落情報だとぉ!?どうしたらそうなるんだよ!要素寄こせや!要素!」

上司に殴られ、ヒリヒリしている頬を冷やしながら叫ぶ。

「さっきも聞いたんだけど…そもそも要素ってあるだろ…」

岡島にツッコミを入れられるがそれどころではない。で1600人が脱落したのだ。そう。で。

「とりあえず指名手配だな。うん。」

「急に冷静になるのやめてもらっていいですか?まあやりますよ…」


カタカタとパソコンに打ち込む岡島を見て、俺は考える。どうしたらこいつの無双を止められるんだ…?

あ。良いこと思いついた。警察の権力で一般市民を…

「辻本さん。絶対に悪いこと考えてるでしょ。一般市民とかは巻き込まないで下さいよ。後処理が面倒くさいんだから。」

「え。なんで分かったん?」

こいつ、人の心を見透かす能力でも持ってんのか?

少しゾッとしたが、岡島の次の言葉で気が楽になる。


「でもまぁ…良いかもしれないですね。一般市民を巻き込むぐらいなら。懸賞金をかけて、VEMに招待すればいいでしょう。お金はかかりません。とか言っといて。金の亡者か、命知らずか、はたまた別の人とかが来るでしょう。ここからは、


なんだ。同族じゃねぇか。フッと息を漏らす。

俺はあいつの肩に腕をかけ、

「相棒。頼むぜ。」

「誰が相棒ですか。まぁ…名前を検索して…」

動きが止まっていた。なんだ…?

「あー、面倒くさい!なんで名前変わってるんだよ!」

「はぁーっ!?」

騒がしい二人組が誕生したのだった。



「はぁ…疲れた…」

もう今日は寝よう。その前に温かいお風呂に入ってだけど…


俺の名前は、東雲 勇斗。高岡の同期だ。

あいつは今日も最後まで来なかった。


家に入った瞬間、目の前に大きなカラオケボックス…いや…

「VEM…?」

そう。玄関を塞ぐように置かれているVEMのせいで奥のリビングに行けないのだ。

どかそうとするが、重くて開けられない。頼んでないのに…

「とりあえず、上司に電話…」

電話をかけようとすると、目の前に紙が貼り付けてあるのが見えた。

『おめでとうございます!全国の人口の内の10万人に選ばれました!』

は、はぁ…。別に嬉しくないんだが…死亡リスクも高いって言ってたし…

だが、次の1行を見て、腹をくくるしかないと思った。

『参加しない場合は死ぬことになります。残り1時間以内に決めて下さい。』


俺は迷わずに上司に電話をかけた。

「なんだ?突然。」

不愉快そうに返される。うん。そこまで不愉快にされても困りますねぇ…

「ちょっと、死地に踏み込んできます。帰ってこなかったら俺が死んでるって考えてもらって。それじゃあ。」

上司が何か言いかけたが、遮るように電話を切る。


「よっしゃァァァァ!」

うっきうきの足取りでVEMに吸い込まれるようにして入る。これこれぇ!やりたかったんだよねぇ!


アバターの服装の選択などをし終わり、一段落ついた時に、アナウンスが流れた。

『貴方がこのVEMから出るためには、この人物を倒す必要があります。』

オッドアイで、青年のような顔出ちをした人だった。この人がなにかしたのかな?

『彼は凶悪犯です。この人を倒した時点で、ゲームから退出ができ、かつ、1億円の懸賞金を獲得することができます。』

ここで俺は察した。

されてるんだと…

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