第15話 メンタリスト
※
草木を掻き分け、全力疾走をする。
走力が24倍だからといって、舐めてかかったら死ぬ!
位置情報が常に共有されているため、ちょっとした慢心や、油断でも、いつの間にか前に来ているということがある。
本当にやめてほしい。心臓に悪い。
そんな願いも通じず、目の前を銃弾が通る。危ねっ!
紺藍の仲間が援護に入ってきているが、それでも人の波のうねりは収まらない。
あー…囲まれた…
軍隊のように綺麗に円になって僕を包囲している。
チラッと残り時間を見る。あと1分か…頑張ればなんとかなるか…?
「ねぇ」青年がこちらに歩いてくる。なんだ…?
というか、今回の脱落は事故だからね?事故!冤罪だし。
「もうやめようよ。紺藍のリーダーだろうけどさ。無意味な逃走とか、殺生とかやめようよ。大人しく僕たちに殺されて?」
頭がふわふわする。なんだぁ…?理性が持ってかれるような…
彼の言葉に惹かれるような…思わず従ってしまうような…
【メンタリスト】その言葉が頭によぎる。
だが、タイミングが遅かった。その時には理性は全て彼に持ってかれた。
「安心して。少しでも痛くないようにするから。」
そう言って、どこから仕入れてきたのか分からない刀で僕の心臓を一突き。
そして抜く。意識が遠のく。あ、これ死ぬんだ。
彼が立ち去っていく。他の人も立ち去ろうとした時、アナウンスが表示される。
『異常事態発生。よって、不幸になる確率を100%にします。かつ、不幸ステージⅤに設定。発動半径を1000mに変更。』
脱落のアナウンスかと思ったら、ぜんぜん違うアナウンスが流れる。
なんだぁ…心臓を突かれたはずなのに全然体が動く。あ、思い出した!これ、サブスキルの【起死回生】だ!いやぁ…助かった助かった!
ん?発動半径1km…?不幸ステージⅤ…?
ちょっと待て!それだと僕がまた指名手配され…
突如、どこからともなく雨雲が出てくる。不穏な空気を纏っていた。
すると、滝とも形容しがたいほどの雨が降ってきた。
暴風も吹いてきて、森の木が倒れる。僕のところだけは台風の目のようになっており、晴天が見えた。
木が作為したように自分の周りを囲む。そして、僕を襲った連中も木の檻に閉じ込められた。
何故かその木たちは隙間なくびっちりと埋まっており、水なんか漏れるはずがないようだった。
そう。どこからも出れないのだ。
必然的に雨が溜まってゆく。まるで拷問のように。
全員が上に逃げようとしているが、その脱出も、木々によって完全に封鎖される。
5分ぐらいだろうか。通知が続々来る。
『【思色】【本紫】【針摺】【不言】の精鋭が脱落したため、そのチームに所属している1600人は脱落です。』
あぁ…終わった…
指名手配され直すのを確信した瞬間だった。
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