第14話 最大限の作り笑顔
※
「なぁ。お前は僕の手下になる気はあるか…?」
突然声をかけられる。まぁ…ね?僕は知っていたんだけど、1%だったもんだから、ただの探知機と化していた。
できるだけ…できるだけ刺激を与えないように…
最新の注意を払って、笑顔を全力で作る。口角とか全力で上げたけど大丈夫かな…?
すると、相手は少しだけ不愉快そうな顔をしてから、
「そんなに余裕綽々な感じを出しているんだがなぁ…強制的に僕の手下にしてあげて可愛がってあげるからなぁ!」
と言ってくる。
え!?なんでぇ?
僕は全力で作り笑顔をしたよ!?
そんなに僕の作り笑顔は相手の戦意を駆り立てるの?!
「スキル発動…【勇者】!」
なんか勝手にスキルを発動されたんですけどぉ!?
いや、皆勝手にやるんだろうけども!おかしいて!なにか前置きが欲しい!
瞬きをした瞬間にその出来事は起こった。
彼から、大量の血がとめどなく出てくる。え…?なにが起こった…?
咄嗟に自分の体を確認するが、血はどこからも出ていないし、ましては傷なんかも付いていない。
「アンデッド…けぇい…?」
え?大丈夫か?この人。こんな大量な血、どこから出てきてんの?
落ち着かせるようにやんわりと笑顔を浮かべる。この笑顔だったら間違えられないだろう。うーん。返答どうしよう…あっちから仕掛けてきて自爆してるわけだし…まぁ、質問ぐらいは答えてやりますか。
「わりぃな…生憎、僕のスキルが【死神】なんだよ。」
あ、ちょっと口悪かったかな…?
訂正し直そうとしたときにはもう遅く、倒れてしまった。
ん…?
僕はここで重大なことに気づく。
「勇者って…スキル一覧に記載されていない気が…」
刹那、アナウンスが流れる。
『shachiku-sanが【白銅】チームの【精鋭】を倒しました。よって、ただいま生き残っている白銅チームは脱落です。それと同時に、10分間、shachiku-sanの位置情報を共有します。もし、倒せた場合は賞金100万円。』
今はもう消えてしまった彼に捕らえられた人は、消えてしまった以外の人を除き、全員が僕に向かって襲ってきた。
「あかんてぇ!」
青空に向かって叫ぶ。
※
上司が机を爪でトントンしながら、歯ぎしりする。あぁ…やばい…
高岡が無断欠勤したのだ。無断欠勤なんて、あいつは一回もしたことがないのに、突然どうしたのだろうか…
今更考えても遅いので、自分のパソコンに目を落とす。あぁ…今日も残業地獄が…
ふと、目に映ったニュースを反射的に開いてしまう。
『最近のゲームVEM。死亡リスクが高いことが判明。』
VEM…俺が買おうとして、ちょうど売り切れちゃったやつか…
ちょうど上司が通りかかる。
「おい…関係ないサイトを開いてんじゃ…」
説教の口を止める。流石に察したようだ。
「もしかしたら…死んでんじゃないんですかね…?」
上司が黙りこくる。それはそうだろう。あいつが一番成績を残していたからな…
「ちょっと…警察にでも相談するか…?」
画面をスクロールする。うん…
「無駄ですよ…緊急電話をする人がいるらしんですけど、まともに取り合わないって…。しかも、ある人物のせいで、退出ができなくなっているらしいです。VEMにいる全員が。」
警察官に死亡している人物がいるらしい。VEMが社会現象となっている今、ゲームには約6万人が参加している。そこで起きた実質的なデスゲームは、現実にいる人にとっては関与することができない。
「……そうか。では、高岡の無断欠勤は、戻ってくるまで目を瞑ろう。早く業務へ戻れ。」
再びパソコンとにらめっこする。
俺達は、ある人物が高岡とは思いもしないのであった。
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