第13話 うそ…だぁ…
※
僕の名前は犬神 遊。WW3のチーム、【白銅】の【精鋭】だ。
スキルは【勇者】指定した相手のことを強制的に仲間にできるというものだ。
それは、例えどんなに強大な相手でも、大勢でもだ。
だが、アンデット系のスキルを持っている相手には通用しないどころか、相手の強大さによっては、死んでしまうこともあるらしい。
まぁ…そんな珍しいことは起こらないと願いたいが。
そんなスキルを持っているわけで、僕は今、無双しているんだよね。
僕の後ろで跪いている人達を見て、ニヤリと笑う。
「滑稽やなぁ…あははっ!」
今ここにいるコイツラは、僕に逆らおうとして、あっけなく捕らえられた愚民達だ。
理性も感情もない。ただの人形。すぐに命令して殺すこともできるのだが…
僕は優しいから、こうやって生かしてあげているわけだ。
「にしても…増えたなぁ…」
思わず呟いてしまうぐらい増えた。最初は10人ほどだったが、今は500人ぐらいになっている。
WW3は、僕の独壇場だ。
他の奴らは絶対に邪魔することができない。なんて最高なイベントなんだろうか。
でも、おかしいなぁ…
「なんで僕が2番なんだろう…」
リストバンドを幾度となく見返しているが、そこに書いてあるのは変わらず#2という数字。
他の精鋭も取り込んでいるけど、そいつは#15って書いてあったから、雑魚なのだろう。だから、いとも簡単に取り込むことができた。
1度、メンバー表を見てみたところ、【紺藍】に#1の人がいる。まぁ…ちょっとまったり探しましょうかね。そんなすぐに見つかるわけないし。
「……ご主人。あそこに【紺藍】の#1が居ます…。私のスキルで見ました…」
探索班が告げてくる。ふぅーん…たまには使えるじゃん。じゃあ、所在も明らかになったところで、
「突撃しにいきましょうかね。僕のために働いてもらおうか。あははっ!」
不敵な笑みを零す。ランク1位のやつはぜひともお目にかかりたいぐらいだ。筋肉質なのかな?相当強い人だから。血気盛んな人なのかな?
早く仲間にしてあげたいなぁ…。
期待を背負って崖っぷちにいる人を見る。
だが、期待外れと言ってもいいぐらいに、自分の想像していた人とはかけ離れていた。
別に戦いたくもなさそうだし、崖に座って、
「ふつくしい…」などと言葉を漏らしているだけの、華奢な弱冠ぐらいの人だった。だが、紺藍のリストバンドを付けていたので、この人が#1なのだろう。
期待外れ。
そう言わざるを得なかった。何故かここまで近づいているのに気づいている気配がない。もう言っちゃうか…
「なぁ。お前は僕の手下になる気はあるか…?」
ゆっくりと顔を向けられる。そこには、余裕そうな顔をしているのか、軽蔑しているような顔をしているのかが分からなかった。だが、その表情からは、恐怖は感じられなかった。
「そんなに余裕綽々な感じを出しているんだがなぁ…強制的に僕の手下にしてあげて可愛がってあげるからなぁ!」
僕はスキルを発動する。『成功しました。』そういうアナウンスが表示された時、僕を勝ちを確信した。だが、
「なん…でぇ…?」
エラーが大量に吐き出されたのも事実だった。痛みはさほど感じなかった。だが、口から血が馬鹿みたいに出てくる。もしかしてこいつ…
「アンデッド…けぇい…?」
おぞましい笑顔を向けられる。なんだぁ…こいつ…
出血が多くて、意識が朦朧としてくる。意識を失う前に聞こえた。
「わりぃな…生憎、僕のスキルが【死神】なんだよ。」
うそ…だぁ…
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