第10話 返り討ち

地面を蹴って走り出す。急激に速度を出した体は、目の前の木にぶつかりそうになりながら、銃声がした方に向かう。ヤッベ…はえぇ…通常の走る速度の8×1.5倍になってるから、速いのなんの。


そして、視認できた襲撃者の人数はざっと10人。死神は…どこ行った?

そのうちの一人が僕に気づく。

「居たぞ!指名手配されてたやつだ!服装を変えている!」


えぇ…見られてたの…?面倒だなぁ…

全員がこちらに真っ直ぐ突き進んでくる。あれ…。なんか一人足りないような…

銃の射線が指に当たる。痛みとともに、エラーが画面に吐き出される。

『右手親指、人差し指、中指損傷。HP25消費。毒効果が発動。2時間継続します。また、これの影響で、攻撃力が100減少。回復力が90減少。走力が100減少。』

血を吐く。HPバーに赤いダメージ演出が光る。え…?15も削られんの?


「当たったな。殺人鬼。分かっていると思うが、これにはいろいろな効果があってな。さっきはバカみたいな速度を出していたが、それはサブスキルの問題だろ。だから、大人しく俺達に捕まっとけ。」


ヘラヘラしながらこちらに来る。ちょっと面白そうだし、動けないふりだけしとくか。死神も来るし。

動けないように紐でぐるぐる巻きにされる。はぁ。これ、攻撃でなんとかならないんかな?

紐を本当にかるーく押してみる。あ。ほつれた。これ、しっかり押したら千切れるやつじゃない?やめとくけど。


「だ、誰だお前!やめろ!やめろーっ!」

急に前から悲鳴が聞こえる。ちょうど森の曲がり角で見えないが、とにかく大変なことが起こっているのが分かった。死神かな?

曲がり角から姿を現す。やっぱり。

「主!なんで捕まってるんですか?」

心配そうな声で聞いてきている。死神って怖いイメージがあったんだけど、優しいんだな。


フッと笑う。

「大丈夫だよ。だって…ゴホッゴホッ!」

「本当に大丈夫ですか?」

こんな時に毒回るな!いやらしい毒やなぁ!

「大丈夫大丈夫…ちょっと毒のダメージが入っているだけ。」

今話している間に、ボコボコと殴られたり、刺されたりしているが、サブスキル【鉄壁】のお陰で痛くも痒くもない。さっきのことで、ちょっと舐めちゃいけないと思って、発動させておいたんだよね。使えるスキルだ。


僕は強く紐を押す。ブチブチッ!という音がし、体が解放される。

「なに!もう最後の手を使うぞ!おい!あの手だ!」

慌てながら準備をする。逃げも隠れもしないけどね。


連れて行かれたのは、ただただ面白そうというだけじゃなく、クールを貯めるためでもあった。

ちょうど、例のアナウンスが表示される。そして、ニヤリと僕が笑う。

「逃げなかったのが運の尽きだ!死ねぇ!」

襲撃者が全身に爆弾を付けて登場してくる。はぁ…

「お前の寿命は残り三秒だ!後悔して死…」

手榴弾をこちらに向けて投げようとしてきたが、ピンを抜く前に爆発する。そして、体につけていた爆弾が、連鎖反応で大爆発する。


自分もまぁまぁ火傷したが、大したことはない。

「運が悪かったな。3分の1が当たるなんてよ。」

僕はその場から立ち去った。

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