第8話 指名手配
※
「はぁ…」
僕は溜息を吐く。何回目だろうか。しかし…本当に面倒だな。
「一旦、早いけどゲーム抜けるか…」
画面を操作し、扉マークを押す。あれ…押しても押しても退出判定されない…
「なんで?」
連打すると、目の前に大きく表示が出てくる。
『貴方はゲームを退出することができません』
あ…
「終わったァァァァァァ!」
森の中で一人叫ぶ。これ、凶悪犯扱いされて、確保されるまで退出できないやつだよね?しかも僕の会社無断欠勤したら精神的にボッコボコにされるから、ヤバイんだけど。
ドドドと上からヘリコプターの音がする。上を見上げると、何かで視界が埋まる。
「何だぁ?絶望してる時に…」
warningという文字が見える。これもしかして…
嫌な予感が的中した。自分の顔写真が載っている指名手配の紙だった。
「終わったァァァァァァ!」
僕は再度叫ぶ。こんなふうに配られたら確実に自分のこと狙ってくるじゃん。もし、もしだよ?もしこのゲームでお金が稼ぐとかいう機能が無かったら、真面目にプレイヤーは探さなかったかもしれない。だけど、今のゲームはVMEだ。
思いっきりゲームタイトルにmoneyが入ってるんよ。だから、確実に探しに来るよね?
自分の懸賞額を焦りすぎて焦点が合わない目で見る。
生きて警察に届けた場合、懸賞金1000万円。
「あっひゃぁ〜」
あの時と同じような声を出して地面に体を沈める。終わった…絶対に痛い目に遭う…
「楽しんでゲームをしようとしたのにぃ!」
大声に驚いたのか、死神が出てくる。
「
「いや…ちょっと指名手配されちゃった…冤罪なのに…」
突然、死神がキラキラした目で見てくる。なんで?!
「流石です!
うん。論点が違うね。論外だね。
「いや、あの、えと。」
「安心して下さい!
シュッシュッと骨しかない腕でボクシングの真似をする。はぁ…
「ま、まぁ…任せるよ…」
お任せを!と言いながらアイテム欄に戻る。なんなんだ?こいつは…
行く宛が無くなった僕は、ただひたすらに街とは逆の方に歩き出す。茂みが多くなってきたから流石にこっちまでくるプレイヤーは居ないだろう。
「念には念をってな。」
このままだと本当に街に行けなくて、いろいろな理由で死んじゃいそうだから、メニューを開いて、更衣室をタップする。ここでいろいろ着替えておかないと…
サングラスと、帽子を取り、服を、黒いフードが付いているパーカーにする。
一応、目の色も変えておこ。そういうのが楽だよね。ゲームって。
赤色にしようとした途端、急にアナウンスが出てくる。なんだぁ?
『目の色を【鮮血】にしますか?した場合、体力と力が増加しますが、走力が大幅に下がります。』
え?なんだなんだ?目の色変えて遊んでたけど、そんなの最初には出てこなかったぞ?
僕は実績を確認する。何か見落としてたか…?
『実績獲得【指名手配】【多重スキル】能力を与えます。能力授与成功。目の色を変えることでステータスを強化できます。』
ちょっと待て。僕、運営からめちゃめちゃ強化されてないか?能力のインフレが激しいんだけど…
あと、多重スキルって何?!おかしくないか?
スキルの欄をパソコンのマルチタスク画面のようにして見る。
スキル【死神】【格闘家Lv2】【狙撃手】【メンタリスト】
死神くん…?
頭の中のどこかがプツッと切れた気がした。僕、これのせいで死ににくくなってんじゃん。痛いの嫌だよ?
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